コスト管理とは、出費を特定し、それを減らす方法を見つけることにより、会社の収益を増やすことです。この記事では、コスト管理 (コストコントロール) の概要と、コストマネジメントシステムにおける位置づけについて説明します。
コスト管理は、あらゆる財務戦略における必須要素です。会社の財務状況をモニタリングし、プロジェクトを予算内に収めるにはどうすればよいのでしょうか。
個人の予算編成を行うときと同じように、支出をカテゴリ分けしたり、チームの支出が一番高い領域を判断したり、各領域における支出を抑える方法を見つけたりするなど、できることは多岐に渡ります。これらすべてを適切に行ってこそ、コストを管理できるようになり、収益を高められるようになります。
コスト管理の基本的な原則は、企業の予算編成でも、個人の予算編成でも、あまり変わりません。この記事では、コスト管理の概要とコストマネジメントシステムにおける位置づけについて説明します。
コスト管理とは、出費を特定し、減らすことにより、会社の収益を増やすことです。コスト管理は、プロジェクトレベルまたは会社全体で行われます。ここでは、コスト管理プロセスを 1 つまたは複数のプロジェクトに適用する方法にフォーカスを当てます。
プロジェクトマネージャーは、コスト管理を用いてリソース管理計画をモニタリングし、過剰な支出に気が付いたら対処します。
レポートツールも、プロジェクト予算オーバーを発見するのに便利です。たとえば、新しいプロジェクトに採用したフリーランスのデザイナーが画像を編集するまでに、予想を大幅に超える時間がかかったとしましょう。そのコストを確認したら、次のプロジェクトには社内のデザイナーを採用し、コストを削減して効率を上げようという決断に至るかもしれません。
Asana のプロジェクトマネジメント機能を試すチームはスコープや予算を守ることに苦労していませんか?その場合に活躍するのがコスト管理です。たとえチームが予算を守れていたとしても、コスト管理を行えば、予算をさらに削って収益アップにつなげることができます。
コスト管理では、事業内でコストが最も高くつく領域と、それらの領域で発生する諸費用を洗い出すことにより、会社の全体的な支出へのインサイトが得られます。コスト管理は、最終的に会社の全体的な収益を増やすことを目指しますが、まず個々のプロジェクトのコストを下げることを目的とする場合があります。
コスト管理は、最初は会社の経営レベルで行われるかもしれませんが、多くの場合プロジェクトレベルで進められます。プロジェクトレベルとは、プロジェクトごとに実際にかかったコストを評価し、そうしたコストを効果的に管理できるレベルのことです。
社内のコスト管理を上手に行うには、以下 5 つのステップをお試しください。
最初のステップでは、コストを細かく見積り、効果的にリソースを割り振ることができるように、予算計画を立てます。詳細なプロジェクト計画を作成すれば、コストの変動や、当初の予算と実際の出費との差を抑えることができます。
予算計画を立てるときは、以下を含めます。
プロジェクトに必要なチームメンバーの人数
プロジェクトを完了させるのに必要と思われる時間
プロジェクトに必要な資料
プロジェクトに必要な時間と素材を計算するときは、必要に応じて予算を拡大できるだけの余裕を確保しておきましょう。想定外のプロジェクトリスクが発生し、プロジェクトタイムラインを延長したり、リソースを追加で依頼したりすることが必要になる可能性は常に存在します。
記事: プロジェクトの予算を作成する (固守する) 方法コスト管理の次のステップでは、プロジェクトで発生する出費を同じタイミングでモニタリングします。リアルタイムでコストの変動に気付くことができれば、簡単に是正措置を実施できます。プロジェクトが完了するまで予算オーバーしたことに気付かないのでは、その資金はすでに無くなっています。その時点では、もう将来のプロジェクトで活かす教訓にしかなりません。
プロジェクトの進行中に出費をモニタリングするには、プロジェクトマイルストーンを設定するとよいでしょう。各マイルストーンに到達したら、支出状況を評価し、プロジェクトがスコープ内で進行していることを確認します。どこかのマイルストーンでコストを超過していることに気付けば、それ以降にコストを削減していく方法を決定できます。
プロジェクトの計画段階で明確な目標を立てることは重要ですが、そうした目標を確実に達成するには、変更管理プロセスが必要かもしれません。
変更管理とは、プロジェクトの進行中に関係者によって依頼される変更を管理するための一連のステップです。変更の依頼が入ってもすぐに対応できるように備え、プロジェクトを適切に調整できるため、スコープクリープの発生を防ぐのに役立ちます。
変更管理システムは、以下のステップでセットアップします。
開始: 変更管理プロセスは、関係者によってプロジェクトへの変更がリクエストされるときに始まります。実際のリクエストは、タイムラインを延長することであったり、プロジェクト成果物を新たに追加することであったりと、多岐に渡ります。
評価: プロジェクトマネージャーや部門リーダーが、必要なリソースや、リクエストが及ぼす影響、リクエストを伝えるべきメンバーなど、基本的な情報を確認します。変更リクエストが初期評価に合格したら、分析段階へと進みます。
分析: 分析段階では、担当のプロジェクトリーダーがリクエストを承認または却下します。状況によっては、変更リクエストの承認全般を管理する変更管理委員会が設置される場合もあります。プロジェクトリーダーがリクエストを承認または却下し、その内容をチームに知らせます。プロジェクトの規模によっては、すべての関係者が変更内容を把握できるように、プロジェクトリーダーが変更ログに変更内容を記録する場合もあります。
実践: 変更の反映方法はプロジェクトのステージに応じて異なりますが、通常はプロジェクトタイムラインと成果物の更新と、プロジェクトチームへの通知が中心になります。プロジェクトスコープを評価して、タイムラインの変更によって予定している目標への影響が大きくならないようにすることが大切です。
終了: リクエストの記録、周知、反映が終わったら、プロセスを終了できます。すべてのチームメンバーが情報の保管場所を知り、今後参照できるようにするためにも、正式な終了手順を用意しておくと便利です。
プロジェクトの変更を適切に管理すると、コストを適切に管理できる可能性も高まります。プロジェクトの予算と成功を正確に予測するには、最初から最後まで慎重な管理が必要です。ちょっとしたトラブルは避けられないものですが、そのような想定外の事態に対応するためのシステムを用意しておくことは非常に大切です。
タイムマネジメントは、コスト管理の重要なメソッドです。それは、プロジェクトの合計所要時間が増えると、プロジェクトの合計コストも増えるからです。プロジェクトをスケジュールの見積もりの中で進めることは、プロジェクト予算を守る最適な方法の 1 つです。
タイムマネジメント戦略を実践すると、生産性が高まり、チームメンバーは作業を予定どおりに、予算内で完了させることができます。
タイムマネジメントのヒントをいくつか紹介します。
時間区切り: 時間区切りは、「タイムボックス」(区切られた時間) 内に作業を完了させる目標指向のタイムマネジメント戦略です。たとえばブログ記事を書く場合は、2 時間の時間区切りを設定して概要を書きます。その後休憩を取って、今度は 3 時間の時間区切りを設定して初稿を書き始めます。
タイムブロッキング: タイムブロッキングも時間区切りと似ていますが、こちらはタスクごとに時間を設定するのではなく、特定の種類の仕事のためにカレンダーの一定期間をブロック (確保) するという方法です。
ポモドーロ法: 時間区切りとタイムブロッキングによく似たポモドーロ法では、短い時間だけ作業に取り組み、各作業セッションの間に休憩を入れるというものです。25 分作業して 5 分の休憩を取ることを 4 回繰り返します。4 回目の作業セッションが終わったら、20 ~ 30 分の長めの休憩を取ります。
かえるを食べてしまえ: マーク・トウェインの名言に、「カエルを食べることがあなたの仕事なら、朝一でやってしまうのがベストだ」というものがあります。この「カエルを食べてしまえ」タイムマネジメント術はこの言葉からヒントを得た、重要度の低い仕事や緊急性の低い仕事に取り組む前に、大きな仕事や複雑な仕事に取り組もうという手法です。
パレートの法則: 「2:8 の法則」とも呼ばれるパレートの法則には、「20% の時間で 80% の仕事をする」というルールがあります。80% の仕事を比較的短時間で終わらせることができれば、80% の時間を要するであろう残り 20% の仕事に取り組むための時間を確保できます。
Getting things done (GTD) 手法: Getting Things Done 手法は、2000年代初頭にデビッド・アレン氏によって考案された手法で、物事を成し遂げるにはまずやるべきことをすべて書き出すというものです。紙とペンの代わりにタスク管理ツールを使って脳の力を解放することで、やるべきことを思い出すことにではなく、行動することに集中できます。
コスト管理について考えるというときに、生産性に重点を置くというのは直感に反するように思えるかもしれません。しかし、プロジェクトのパフォーマンスがよくないと、キャッシュフローは得られません。チームが生産的でないと、プロジェクトは期限を守れません。プロジェクトが期限を守れないと、さらなるコストがかかります。プロジェクトのコストが高くつくと、会社のキャッシュフローは減ってしまいます。
出来高 (アーンドバリュー) を追跡することは、プロジェクトの財務的な結果を予測するのに役立ちます。このコスト管理手法にも、コスト計算に関するある程度の知識が必要ですが、変動コストがいつ発生するのかを把握し、最終的には将来のプロジェクトで変動が発生するのを防ぐことに役立ちます。
出来高とは、プロジェクトの実際に完了した作業量のことです。出来高を追跡し、作業が順調に進んでいるかどうかを確認するには、完了した作業の割合にプロジェクト予算を掛ける必要があります。出来高は、次のステップを踏んで追跡します。
ステップ 1: 各タスクが完了している割合を特定します。
ステップ 2: 計画値 (PV)、つまり予定されている作業の予算上のコストを特定する。これは、予定されている作業を完了させるために割り当てられた承認済みの予算です。
ステップ 3: 出来高 (EV)、つまり実行された作業の予算上のコストを特定します。これは、実際に完了しているタスクの量です。
ステップ 4: 実際のコスト (AC)、つまり実行済みの作業にかかった実際のコストを取得します。これは、すでに完了している作業に費やされた費用です。
ステップ 5: 出来高から実際のコストを差し引いて、コスト変動 (CV) を計算します (CV = EV – AC)。
ステップ 6: 結果をまとめます。
最初の 3 つのステップでは、プロジェクトからコストに関する情報を収集し、残りの 3 つのステップでは、計算と分析が必要になります。コスト変動は、プロジェクトのコスト状態を表します。
コスト管理を行うとき、プロジェクトが予算に合ったペースで進行していることを知らせる目安が CV となります。負の CV はプロジェクトが予算オーバーであることを意味します。
コスト管理とコストマネジメントは混同してしまいがちですが、これらは別の用語ですので、適切に定義し、理解しておく必要があります。コスト管理は、より大きなコストマネジメントシステムに含まれる小さなプロセスのことです。
コスト管理では、支出を特定し、減らすことにより利益を高めるということが行われる一方で、コストマネジメントは、プロジェクトコストの推定、予算、管理を行うす全体的なプロセスのことをいいます。
会社のコスト管理作業には多くの社員が参加していることでしょう。チームの規模によっては、リソース計画や予算編成に別のメンバーを割り当てる場合があるかもしれません。
コストを適切に管理するには、チームは社内のさまざまなレベルで支出をモニタリングする必要があります。そうすれば、会社の予算の各部分にしっかりと注目し、それぞれを綿密に分析できます。
コストのデータをモニタリングしてプロジェクトの出費を減らすという作業は面倒なプロセスですが、生産性を高めたいのであれば、コストマネジメントは欠かせません。
コスト管理は、すべての必要な情報をカスタマイズ可能なダッシュボードに表示して行うのが一番やりやすいでしょう。そうすれば、オートメーションを使ってプロジェクトマネジメントとコスト管理の両方を 1 か所で管理できます。
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