コスト管理では、プロジェクトのコストを効果的に見積もり、予算を立て、管理します。この記事では、コスト管理の 6 つのステップと、このプロセスのメリットやデメリットをご紹介します。次回のプロジェクトでは、コスト管理を活用して、常にプロジェクト予算内に収めるようにしましょう。
プロジェクトの予算を正確に見積もり、モニタリングすると、非常に効果的にプロジェクトを最初から成功に導くことができます。このプロセスはコスト管理と呼ばれ、プロジェクト期間中の予算を定義し、予算内に収めるための 6 つのステップで構成されています。このガイドでは、コスト管理のプロセスと、このプロセスを次回のプロジェクトに導入する方法についてご説明します。
コスト管理とは、プロジェクトのコストを見積もり、予算化し、コントロールするプロセスです。通常、コスト管理のプロセスは、プロジェクトの立ち上げと計画フェーズから始まります。プロジェクトのライフサイクルの中で、プロジェクトマネージャーはプロジェクトのコストを見直し、承認された予算を超えないようにモニタリングします。
プロジェクトが終了すると、プロジェクトマネージャーは実際のコストと見積もりのコストを評価し、そのプロジェクトから学んだ教訓を記録します。これは、将来のプロジェクトの予測やベンチマークに役立ちます。
コスト管理は、プロジェクト計画やプロジェクト管理のプロセスにおいて重要な役割を果たします。効果的なコスト管理を行うことで、より正確なプロジェクト計画を作成し、プロジェクトの制約条件をより深く理解し、将来的なスコープクリープを防ぐことができます。
コスト管理は、プロジェクト計画プロセスの 2 つの重要な要素、すなわち、コストの見積もりとコスト管理に役立ちます。プロジェクトの予算を正確に見積もる方法を知っていることは、プロジェクト管理の重要なスキルです。
一般的に、プロジェクトの予算は最初に定義されます。組織によっては、プロジェクトを提案するために、プロジェクト憲章の中で定義することもあります。なぜなら、プロジェクト予算がなければ、プロジェクトの目標を達成するためのリソースを正確に割り当てることができないからです。
コストは、プロジェクト管理のトライアングル (または「3 つの制約」や「鉄の三角形」とも) を構成する 3 つの要素 (コスト、スコープ、時間) のうちの 1 つです。コストがプロジェクトの 3 つの制約条件の 1 つであるからといって、コストを上げることができないわけではありませんが、コストを上げることがスコープや時間に影響を与えること、またその逆も然りであることを認識することが重要です。
予算内に収めることは、プロジェクトが順調に進んでいるかどうかを左右する重要な要素です。これにより、プロジェクトが台無しになったり、スコープクリープが発生する原因となるコスト超過を防ぐことができます。プロジェクトが始まってからも、コスト管理プロセスによって、プロジェクトの予算を把握し、予算オーバーにならないように、あるいは予算オーバーになった場合には迅速に軌道修正することができます。
プロジェクトのリスク管理の多くの要素と同様に、コスト管理も事後ではなく事前に行うプロセスです。目標は、プロジェクトのパフォーマンスを事後に評価することではなく、プロジェクトが進行中にコストパフォーマンスを判断することです。
コスト管理計画の作成は 6 つのステップから成ります。
プロジェクトのコストを特定する前に、まずプロジェクトに必要なリソースを把握する必要があります。そうすることで、プロジェクトに費やす時間、労力、費用を見積もることができます。
リソースとは、ツール、費用、時間、設備、チームメンバーなど、プロジェクトを完成させるために必要なものを指します。この最初の段階では、細部まで正確に把握できなくても構いません。コスト管理におけるリソースのステップの目的は、プロジェクトに必要なリソースと、その結果として発生するコストの大まかな見積もりを得ることです。その後、明確なリソース管理計画を立てることで、実際にプロジェクトが始まってからのリソース配分に役立てることができます。
必要となるもの
明確に定義されたプロジェクト目標
プロジェクトの複雑さに応じて、俯瞰的なプロジェクトロードマップまたは作業分解構成図 (WBS) の作成
仮のリソース管理計画
コスト見積もりの段階では、最終的なプロジェクト予算を算出するために、各リソースに関連するコストを見積もります。過去のプロジェクトがあればそれを基準にしてもいいですし、リソース管理計画に基づいてコストを見積もることもできます。
基本的に、見積もりの段階では、「プロジェクトの目標を達成するためにどれだけのコストがかかるか」という重要な問いに答えることになります。想定外のコストが発生する可能性があることを念頭に置き、5〜10% のバッファーを見込んで見積もりを行います。
前のステップで必要だったものに加えて、以下のものが必要です。
プロジェクトのスケジュール (複雑なプロジェクトの場合は PERT チャート)
プロジェクトの成果物の一覧
明確に定義された成功指標
コスト管理の第一段階と同様に、プロジェクトの承認を得る前にコストを見積もる必要があります。プロジェクトの複雑さに応じて、プロジェクトスポンサーや経営陣の関係者が承認すると思われる内容を考慮して、リソースコストや最終的な成果物を変えた複数のプロジェクト予算見積もりを作成するとよいでしょう。また、「見積もり」は変わる可能性があることも念頭に置いておきましょう。
コストの見積もりが完了したら、プロジェクトを売り込むためのプロジェクト憲章やビジネスケースを作成し、プロジェクトを開始します。なお、コスト管理のプロセスはまだ終わっていませんが、ここまでの作業を無駄にしないようにしましょう。
記事: 終わりを意識して始める: プロジェクトのプレモーテムを行う方法プロジェクトのニーズとリソースの必要性について大まかな見積もりができたところで、プロジェクト予算の作成に取り掛かりましょう。プロジェクト予算とは、プロジェクト期間中に、何のために、いつまでに、どれだけの費用をかけるかを詳細に計画したものです。
プロジェクトの複雑さにもよりますが、「いつ」という点がコスト管理戦略に大きく影響します。複数年にわたるプロジェクトの場合は、初年度に予算の 30% 以上を使ってはいけない、などと明確にしておくとよいでしょう。これにより、後々のコスト超過を防ぐことができます。
これまでのステップで揃えたものに加え、以下のものが必要となります。
直接的にはコスト管理のプロセスには含まれませんが、プロジェクトの立ち上げを行う段階です。プロジェクトの予算が確定していることを確認し、プロジェクトを成功させるために必要なだけ詳細情報を集めます。プロジェクトのキックオフミーティングで、これらの情報をプロジェクトの関係者と共有しましょう。
これまでのステップで揃えたものに加え、以下のものが必要となります。
コスト管理のプロセスの大部分は、ステップ 5 「コストのコントロール」フェーズで行われます。プロジェクトが開始されたら、予算の超過を防ぐために、コスト計算が重要になります。プロジェクトの予算がどのように使われているかを把握し、是正措置を取らなくても済むようにしましょう。プロジェクトを途中で調整する必要があれば、この段階でコストをコントロールします。
これを見直す頻度は、プロジェクトによって異なります。リアルタイムでコストを確認したいこともあれば、月 1 回、あるいは四半期ごとに確認する場合もあります。必要に応じてプロジェクトステータスレポートでコストの最新情報を共有することで、プロジェクトチーム全体が共通認識を持つことができます。
プロジェクトスコープを変更すると、プロジェクトの予算やコストに影響を与えるので、スコープクリープには注意が必要です。また、プロジェクトのコストが予算から大きく逸脱した場合は、関係者に知らせ、アクションプランを積極的に立てるようにしましょう。
これまでのステップで揃えたものに加え、以下のものが必要となります。
Asana でチームやプロジェクトを横断するレポートを作成するプロジェクトが終了したら、成果を評価しましょう。プロジェクトの総コストは?見積りと実際のコストの差はどうだったのでしょうか?
ここで大切なのは、どちらかの方向に大きくかけ離れてはいけないということです。好結果を生むプロジェクトは、予測されたプロジェクト予算に近い (しかし下回る) 形で完了します。お金を使いすぎてしまった場合は、プロジェクト予算を過小評価していたか、予想外の出費が多かったかのどちらかです。このような場合は、プロジェクトのポストモーテム会議を開催し、なぜそのようなことが起こったのかを評価し、今後起こらないように対策しましょう。
逆に、予算をあまり使わないというのも理想的ではありません。これらのコストを見積もったのには理由があり、もし予算を大幅に下回った場合は、コストの予算組みプロセスが不正確だったと考えられます。このような情報を過去のデータとして記録し、将来のプロジェクトのために覚えておくことで、コスト見積もりの段階での正確性を高めることができます。
コスト管理が正しく行われていれば、プロジェクトの計画プロセスを改善し、プロジェクトのリスクを未然に防ぐことができます。効果的なコスト管理には、いくつかの重要なメリットと、注意すべき主要なデメリットがあります。
コスト管理のメリットには以下のような点が含まれます。
コスト超過の防止: コスト管理の最もわかりやすいメリットは、プロジェクトのコストを管理できることです。このプロセスを利用して、予算を使いすぎていないかどうかを確認します。このように徹底した準備と見える化を行うことで、利用できる予算とその使い道を明確に把握することができます。
関係者の期待値を設定する: 全員が予算を理解していれば、スコープクリープを防ぐことができます。関係者が、プロジェクトの変更が予算にどのような影響を与えるかを明確に理解していれば、プロジェクトの変更を要求する可能性が低くなります。大幅な変更が必要になった場合は、コスト管理計画を変更管理プロセスに組み込むことで、プロジェクトの全体的なタイムラインへの悪影響を軽減することができます。
将来の計画を簡単にする: いくつかの異なるプロジェクトでコスト管理のプロセスを何度か経験すれば、将来的にリソース計画がうまくできるようになるでしょう。コスト管理のプロセスを経験することで、予算編成とリソースの最適化が互いにどのように影響し合うかを理解することができ、時間が経つにつれ、プロセスがより簡単に (より正確に) なります。
コスト管理にはデメリットがつきものです。ここでは、コスト管理の 2 つの大きなデメリットと、それを防ぐための方法をご紹介します。
プロジェクトの予算が十分でないと、正確にプロジェクトのために人員配置を行い、成果物を完成させることが難しくなります。
解決策: 予算が現実的であることを確認しましょう。必要であれば、プロジェクト憲章やビジネスケースの中にプロジェクト予算案を組み込み、必要な予算を提案しましょう。なぜその予算が重要なのか、プロジェクトの成功にはどのようなリソースが必要なのかを明確に説明しましょう。
コストの見積もりを間違えると、プロジェクトが始まる前から問題が発生してしまいます。
解決策: コストの見積もりを始める前に、プロジェクトの範囲を把握しましょう。「時間」「スコープ」「コスト」というプロジェクトの 3 つの制約条件はつながっています。コストを下げたいのであれば、期間を伸ばすか、スコープを縮小する必要があります。そうしたくない場合は、自信を持ってプロジェクトの全範囲を達成するために、コストを増やす必要があります。
コスト管理には多くの要素が関わっています。そのため、コスト超過を防ぎ、常に予算内でプロジェクトを完了させるために、チームは可視性を必要としています。プロジェクトのすべての情報を把握するには、Asana のようなワークマネジメントプラットフォームを使用しましょう。プロジェクトのコスト計算、始動からポストモーテムまで、Asana を使用することで、プロジェクトの全プロセスにおいてプロジェクトのチームメンバーや関係者と足並みを揃えることができます。
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