プロジェクトを遂行する際の管理手法として便利な「WBS」の使い方をご存知でしょうか。WBS は、ビジネスにおけるプロジェクトのスケジュール管理として有効と言われています。この記事では、WBS の意味や特徴、ガントチャートとの違いや作り方についてわかりやすくご紹介します。WBSについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
更新: この記事は、WBS の作り方や目的について、さらに詳しい記述を含めて 2024年 1月に改訂されました。
プロジェクトマネージャーにとって、担当プロジェクトの目標を定め、メンバーに作業を割り振ることは非常に重要な仕事のひとつです。そのために有効なのが「WBS (作業分解構成図)」と呼ばれるツールで、大きな作業 (プロジェクト) を小さな作業に分解し、プロジェクトの見える化を促します。WBS は進捗管理にも非常に役立ちます。
この記事では、WBS の作り方、含める内容、そして仕事にどう応用できるかについて、例をご紹介します。WBS はガントチャートやかんばんボード、カレンダーなどのフレームワークを使って視覚的に図示できるので、ワークフロー管理ソフトウェアと組み合わせて、効率的なプロジェクトマネジメントを行いましょう。
Asana でワークフローを管理するWBS (work breakdown structure) は、プロジェクトを階層的に整理する手法です。日本語では作業分解構成図や作業分解図とも呼ばれ、その言葉通り、作業 (Work) を分解 (Breakdown) して構造化 (Structure) していきます。作業を分解、構造化しキーとなる従属関係のアウトラインを作ることで、プロジェクト全体を視覚化することができます。WBS は、関連する作業を意識しながら管理できる点が特長と言えるでしょう。
WBS は、ビジネスにおけるプロジェクト管理やスケジュール管理、システム開発などの現場において活用されています。「WBS」では、大きな作業単位を、個人が担当できるレベルの小さな作業単位に分割したあと、進行順序を考慮したツリー構造を作成します。例えば、引っ越しを大きな作業単位として考えた場合、引越し先の決定や物件探しなどが小さな作業単位に該当します。必要ならさらに単位を細かくして、「電話をする」「管理する不動産会社の連絡先を調べる」といった具体的なレベルまで刻む場合もあるでしょう。
もう少し詳しく WBS とは何かを見ていきましょう。WBS は、次のパートで構成されています。
プロジェクト計画、説明、プロジェクト名などを含む、プロジェクトベースラインあるいはスコープステートメント
整理されたプロジェクトのスケジュール
プロジェクトの成果物およびそれにつながるサブタスク
プロジェクトマネージャーは、WBS を使用して複雑なプロジェクトスコープを分解し、プロジェクトと従属関係にある成果物を可視化します。WBS を使ってプロジェクトを見える化することで、チームメンバーは単なる To-Do リストをこなすのではなく、視覚的にプロジェクトを捉え作業に取り組むことができるわけです。
プロジェクトの中には必要な業務や全体のプロジェクトタイムラインに基づいた段階を複数含んでいるものもあるでしょう。成果物を細分化していく WBS は、そういったプロジェクト作業の階層構造を効果的に整理することができるのです。
記事: より効果的なプロジェクト計画をわずか 7 つのステップで作成タイムラインとは一体何のことでしょう?生産性を高めることにどう役立つのでしょうか?電子書籍をダウンロードしてお読みください。
成果物ベースの WBS: 成果物指向型の階層的な作業分解方法です。簡単に言うと、プロジェクト全体の範囲を確認して、プロジェクト達成のために必要な成果物まで作業を分解していくことを意味します。このアプローチは、求められる成果が明確な短期プロジェクト、たとえば、年間収益レポートの作成などに最適です。
段階ベースの WBS: プロジェクトの段階を使用して、複数のタスクグループを収容するワークパッケージを作成し、作業を分解していく方法です。タスクグループはそれぞれ、ステージごとに完了されていきます。段階ベースの WBS は、求められる成果があまり明確でない長期的なプロジェクトに使用するとよいでしょう。たとえば、今後 3 年間で社員の定着率を 20% 向上させる、といった例が考えられます。
WBS を活用する目的は、主に 3 つあります。
スケジュールの作成: 仕事を細かく分解して仕分けることで、やるべきことが明確になるため、必要なものや日数などを見積もりやすく、より正確な予定が立てられます。
工数の見積もり: やるべきことが不明瞭では、工数の予測もしようがありません。WBS で作業を具体的にすることで、正確な工数を割り出せるようになります。
担当者の仕事の効率化: 必要な作業をあらかじめリストアップしておくことで、担当者全員が仕事の全体像を理解し、タスク同士の関係性も把握できるようになります。その結果、今どの作業を優先すべきかがはっきりするため、チームで連携を取って仕事しやすくなるのです。また、作業をリストアップすることで、担当者自身がどこまで作業をすればよいのか、すぐに確認できるのも便利です。
プロジェクトの見える化が促進される WBS では、プロジェクトメンバーや利害関係者が同じ認識でプロジェクトを進めていけるという大きなメリットがあります。一方で、過去の WBS は次へのノウハウとしても役立ちます。
では他に、WBS を作成すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
作業の明確化ができる
作業の抜け漏れを防止できる
作業の依存関係を把握しやすくなる
各作業の所要時間などを把握しやすい
作業を分担しやすい
スケジュール作成がしやすい
進捗が可視化されていて管理しやすい
適切な全体工数を見積もりやすくなる
以下、それぞれについて詳しく解説します。
WBS を利用することで、プロジェクトに必要な作業を明確化できます。
WBS は作業分解からはじまります。つまり、作業の洗い出しです。どのようなプロジェクトでもはじめに取り掛かるべき作業であり、作業が明確化できていなければプロジェクトは進みません。
作業を分解して細分化していくことで、作業の抜け漏れを防止できます。まずは大枠となる作業をカテゴリに分け、さらに各カテゴリに必要な作業を明確にしていけば、途中で「重大な作業の抜けがあった」などという失敗がなくなります。
プロジェクトを遂行に入る前の計画段階で必要な作業の抜け漏れや作業の重複が発見できれば、プロジェクトの進行を妨げるような手戻りやトラブルの発生防止につながるでしょう。
洗い出した作業を一覧にすると、「作業 A が終わらなければ、作業 B に着手できない」といった依存関係も明確になります。依存関係が明確になると、おのずと作業の優先順位も把握しやすくなるでしょう。
また、「C と D は似たような作業だから並行して進められる」など、業務をより効率的に進めるうえでも役立ちます。タスクの関係性をツリーでまとめたり、スケジュールに落とし込んだりして活用すれば、より効率的なプロジェクト管理が可能となります。
一覧にした作業は、それぞれ工数に違いがあるはずです。重たい作業には多くの時間が必要ですし、軽い作業ならば短時間で完了できるでしょう。それぞれの作業におおよその工数と時間を見積もっておけば、作業単体はもちろん、全体的なスケジュールの所要時間も把握しやすくなります。
作業を細分化すれば、作業を分担しやすくなります。関連する作業や依存性の高い作業をまとめておくことで、さらに効率的な作業分担ができるでしょう。また、プロジェクトメンバーそれぞれの得手不得手を考慮した作業分担を心がけることで、作業進捗はスムーズになります。
ここまでのメリットをみても分かるように、WBS で作業を分解することでプロジェクト全体の作業工数や流れ、役割分担までが行えるためスケジュール作成がしやすくなります。
WBS を利用してスケジュール作成をすると、作業の細かな工数や担当者も明確になるで進捗管理が容易になります。たとえば、一つひとつの作業をガントチャートで可視化すれば、進捗が遅れそう、あるいは遅れている作業の把握もできます。つまり、WBS を基礎としてスケジューリングすれば、プロジェクト管理が効率的になるということなのです。
WBS は、プロジェクトにかかる時間や金額などを見積もる際に役立ちます。プロジェクトが大きくなればなるほど、そのプロジェクトを完了するためにどれくらい時間とお金がかかるのか、すぐに判断することが難しくなります。
しかし、WBS で個々の作業に分割しておけば、それぞれの見積もりをとり、最終的に合算することで、全体の見積もりを出すことが可能です。この方法で見積もりを出したほうが、精度も高まるでしょう。
特に業務を受託する際、クライアントに見積もりを提示しなければならない場合は、丁寧に作業工程を洗い出してから見積もりを取ったほうが、信頼の獲得につながります。
WBS には多くのメリットがある一方、デメリットも意識しておく必要があります。以下の注意点を考慮しておきましょう。
ズレ防止のため、見直しを段階的に行う
工数見積りでバッファを取りすぎない
作成は複数人でおこなう
基準を用意する
上記の注意点について、各項目を詳しく見ていきましょう。
WBS 最大のデメリットは、情報不足によって生じるスケジュールのズレです。WBS は基本的に、プロジェクトのスケジューリングをする前段階で利用するので、洗い出せる作業は、プロジェクトのスタート前に予測できる範囲だけなのです。プロジェクトが進んでいくと、追加せざるを得ない作業や予期せぬトラブルなどが発生します。このとき、プロジェクトスタート時の WBS にズレが出てしまい、スケジュールにも大きな影響を及ぼします。これが WBS を使うデメリットです。このデメリットを回避するためにも、WBS は段階的に見直さなければなりません。
工数を見積るときには、問題が起きたときに備えてタスクとタスクの間に余裕 (バッファ) を設けて見積るのが一般的です。工数が無駄に多くなっていたり、バッファを長く取りすぎていたりすることのないよう注意してください。バッファの空きが長いと、次のタスクにすぐ取りかかることができずタスク担当者を長く待たせてしまう場合や、担当者が怠けてしまう恐れもあります。スムーズな業務完了を目指すためには、バッファを適切な間隔で入れることが重要です。
WBS は、作業工程をすべて見逃さず正確に作らなければなりません。工程が抜けていた場合、途中から追加する必要があり、納期までに完成できない問題が発生するかもしれません。作業のリストアップでは、逆に同じ作業を重複させた場合にも大きな無駄が生じます。WBS に不要な工程を入れていたり、重複した作業にそれぞれ担当者が割り当てられていたりすると、時間や労力が無駄になり、スケジュール管理も難しくなってしまうでしょう。
作業をリストアップするときには、リーダーが 1 人で行うのではなく、実際に作業を行う担当者と打ち合わせて行いましょう。作業の抜け、重複のほかにも、所要時間は無理なく行える時間を設定する必要があります。理想的な数値ではなく、実際に作業を行う担当者の意見を重視しましょう。納期までの日程が厳しいときには、無理矢理作業をスケジュールに入れ込むのではなく、「人を増やす」「納期を延ばす」などの適切な対策を立てることが、安定した納品につながります。
WBS は作業項目が細かすぎると管理の際に負担がかかり、逆に作業項目が粗いと管理精度が下がります。どちらの状態でも管理者に負担がかかり、進捗管理が順調に行えない恐れがあります。
WBSで作業の分解を行う場合には、作業分解点 (粒度) をそろえると管理精度を一定に保つことが可能です。作業時間、または作業工数を基準に合わせると、管理がしやすくなるでしょう。
WBS の基準では、8/80 ルールがよく使用されています。8/80 ルールは、「各項目の作業時間を 8 時間 / 1日以上、80 時間 / 2 週間未満」にするルールです。また、1 % ルール (100 個の作業項目で構成) や、2 % ルール (50 個の作業項目で構成) などの基準もあり、WBS 作りの際の基準として使用できます。毎回作業項目を始めから分解して 1 から作るのではなく、ある程度の基準を用意しておくと抜け防止にも役立ちます。
プロジェクトマネジメントにおいて人気のあるフレームワーク「ガントチャート」ですが、しばしば WBS と混同されることがあります。
WBS は前述のとおり、複雑なプロジェクトを工程別、タスク別に細分化し、可視化するための構造図で、一般的にリスト形式をしています。一方のガントチャートは縦軸にタスク、横軸に時間を書き、棒グラフを用いてタスクとスケジュールがわかるようにしたものをいいます。プロジェクトを視覚的に表しているので、進捗管理や工程管理に役立ちます。
WBSはガントチャートと一緒に活用されることがありますが、それはガントチャートの縦軸にくるひとつひとつのタスクが WBS のそれと同じであるという両者の関係性があるからです。作成する際は、まず WBS で作業内容を全体的に洗い出し、作業の分割と優先順位の明確化を行ったのち、作業進捗を時間軸で表すガントチャートを作成します。特にこの作成順が重要で、先に WBS で仕事をリストアップし、整理していくことが欠かせません。ガントチャートを先に作ると、思いついた作業だけを表の中に入れることになり、抜け、漏れが起きやすいからです。いうなれば、WBS はガントチャートを作成する下準備のようなもので、両方活用することで仕事をより効率的に進められます。
詳しくは後述する『ガントチャート (タイムライン)』をご覧ください。
WBS の作業レベル (階層) は、従属関係に基づいてタスクを分割する際に便利です。プロジェクトは千差万別のため、WBS のレベルも同様にまちまちです。中には深い階層の従属関係が不要なプロジェクトもあります。
WBS には、主に 3 つの従属関係のレベルがあります。ただし、WBS によってはレベルがそれ以上にも以下にもなる場合があります。各レベルは親タスクに結びついており、親タスクを完了するために必要な業務が従属関係によって整理されています。
WBS の最上層に位置する 3 つの従属関係を見てみましょう。
WBS のレベル 1 は、親タスクが含まれるため、プロジェクトを最も簡易的に示したものになります。これは通常、プロジェクトの目標と一致します。
たとえば、プロジェクトチームがウェブサイトデザインのリニューアルに取り組んでいるとします。その場合の WBS のレベル 1 は次のようになります。
ウェブサイトのデザインを刷新する
ご覧の通り、シンプルで一目瞭然です。レベル 1 は、基本的な目標、すなわちプロジェクト管理のさまざまなフェーズの第一段階に当たります。この目標を達成するために必要な業務は、レベル 2 や 3 に登場します。
記事: 効果的なプロジェクト目標の書き方 (実例付)デザイン計画用の無料テンプレートここから、プロジェクトのスコープに応じて分解構成図は少し複雑になっていきます。WBS のレベル 2 には親タスクのサブタスクが含まれます。これを従属関係ともいいます。
先の例に従って、ウェブページのデザインを刷新するために必要なタスクを見ていきましょう。
クリエイティブなブレインストーミングセッションを行う
ブランドのガイドラインを見直す
メッセージングフレームワークを作成する
ロゴのデザインをリニューアルする
新しいトップ写真を追加する
レベル 1 より少し詳細になりましたが、レベル 2 はまだ、プロジェクト目標の達成に必要な従属関係の概要に過ぎません。
WBS のレベル 3 では、前項の従属関係を、副従属関係という管理しやすい構成要素にさらに分解します。プロジェクトのライフサイクルの最下層に位置するこのステージでは、最も詳細なタスクを定義することになります。これらの実行可能なタスクが、必要な成果物すべてを完成させるための道筋をよりシンプルなものにしてくれます。
先ほどの例を取り上げて、新しいサイトデザインに使用できるレベル 3 のタスクをご紹介します。
ブランドカラーを選択する
ブランドのムードボードを作成する
UX デザイナーを割り当てる
モックアップデザインを作成する
モックアップをレビューし、承認する
ブランドの写真撮影のスケジュールを設定する
写真のサイズ変更・編集を行う
ご覧のように、プロジェクトの目標を達成するための業務がかなり明確になりました。どれだけ具体的に視覚化したいかによって、さらにレベルを追加することもできます。
電子書籍をダウンロード: Asana の OKR 設定作戦ブック (無料)基本的に WBS は、工程の階層を視覚的に整理した簡易的なプロジェクト計画です。つまり、WBS には、目標、成果物、タイムライン、主要な関係者といった、プロジェクト憲章に含まれる要素がすべて揃っていなくてはなりません。
WBS を作成するに当たって、まず何を盛り込むかを知る必要があります。ここからは、WBS に含めるべき重要な要素を詳しく解説していきます。
新しくプロジェクトの WBS を作成するに当たっては、まず WBS 辞書から始めましょう。適切に作成された WBS は視覚的であるために、詳細な説明を書き込む余地がありません。そこで役立つのが、各タスクを詳細に説明した WBS 辞書です。辞書を作ることで、チームメンバーがさまざまなタスクの必要な詳細を簡単に把握できるようになります。
辞書を作成するのはプロジェクトマネージャーですが、各部門のチームメンバーの協力を求めることにもメリットがあります。そうすることで辞書の利便性が高まり、的確な詳細を記載できるようになります。
辞書に含めるべき項目の例:
タスク名: 明確でシンプルなものにします。
説明: もう少し詳しく書きますが、それでも 1~2 文に収めましょう。
成果物: ここでも、具体性が大切です。チームが出す成果に何が期待されているのかを明確にします。
予算: 予想される出費です。いつまでに、何に、どれだけの費用が掛かるのかを説明します。
マイルストーン: プロジェクトのタイムライン上で、一連のタスクが完了する重要な瞬間です。
承認: 承認を必要とするタスクがある場合、どのタスクなのか記します。
項目はいくつでも追加できますが、最も考慮すべきポイントは、タスクの達成に必要なプロジェクトの業務について、プロジェクトのチームメンバーが情報を見つけられるようなリソースを作成することです。
タスクの説明には、タスク名と、目標に関する簡単な説明を入れます。WBS には詳細な説明を記載する余地がないため、追加情報は WBS 辞書にまとめましょう。
タスクの説明は、チームメンバーがタスクの内容を短時間で簡単に把握できるようにするものです。そのため、この段階ではまだそこまで詳細にこだわる必要はありません。
タスクの担当者は、責任の所在とコミュニケーションの両方の点で明記しておくべき重要な情報です。情報が見つけやすいほど、タスク達成までの時間が短縮されます。多くの場合、プロジェクトマネージャーがタスクの担当者ですが、タスクのタイプによっては、部門長や経営者も担当者になる場合があります。
プロジェクトの情報を探して時間を無駄にはしたくないものです。タスクの担当者を割り当てることで、プロジェクト関係者は適切な担当者に速やかに質問できるため、チームの生産性を向上できます。
Asana でタスクの管理と優先度設定をする必ずとは限りませんが、大規模な予算を要するプロジェクトは、タスクの予算を注意深く管理する必要があります。予算が守られているかを簡単に管理するには、タスクの予算上限を設定しておくと便利です。
予算の管理を行わないと、予想より支出が増え、利益率が下がってしまうことになります。全体予算だけでなく、個別のタスクのコストも必ず管理するようにしましょう。
目標とする完了日を把握することが重要なのは言うまでもありません。しかし、完了日の変更を念頭においておくことも大切です。
定められた期間を超過しているプロジェクトをいくつも管理するのは大変ですが、避けられないこともあります。スケジュール表やプロジェクト管理ツール内で各タスクを細かい作業に分割して、進捗を正しく管理しましょう。スケジュールの遅れをリアルタイムで把握できるため、締め切りの問題が重なって本来の完了日にプロジェクトが終わらないといった事態を回避できます。
すばやく進捗確認をするためには、スケジュールの管理と合わせて、タスクのステータスを記録することも重要です。記録方法はいくつかありますが、「保留」「進捗中」「完了」といった用語を使用するのが一般的です。
これによってタスクの進捗を管理しやすくなるだけでなく、チームの生産性を俯瞰的に把握できます。たとえば、一部のチームがタスクを完了できないことが続くなら、根本的な問題が隠れている可能性があります。このように、チームの仕事量やコミュニケーションのつまづきが大きな問題に発展する前に、解決することができます。
記事: 効果的なプロジェクトステータスレポートの書き方この電子書籍では、ワークマネジメントとは何かを解説し、ビジネスにどう役立つかをご紹介します。
構成要素やレベルについて見てきましたが、ここからは WBS の作り方について解説します。以下に挙げる具体的な手順に従って、WBS を作りましょう。
WBS作りではじめに行うことは、プロジェクトが目指すところの確認です。
プロジェクトの目指すところには、クライアントの公式サイト作成や社内教育プログラムの構築など多種多様なものがあるでしょうが、それが具体的に何であるかによって、必要となる作業が変わってきます。特にソフトウェアを成果物として納品する場合には、機能要件だけでなく、セキュリティや拡張性など非機能要件についても確認が必要です。
まずはチーム全員で、プロジェクトがどのようなゴール、目標、目的をもち、何をもって成功とするのかを明確化しましょう。
プロジェクトの完了までに必要な作業内容をすべて洗い出します。プロジェクトとは大きな塊のようなもので、そのままでは「どのような作業が必要か」「どれだけの時間がかかるのか」もつかめません。そのため、大きな塊であるプロジェクトを作業単位に分解する必要があるのです。
まずはプロジェクト全体の流れを考え、大きなフェーズや作業プロセスでタスクをとらえてから、フェーズや作業プロセスごとにタスクの分解を繰り返していくとよいでしょう。規模感でいえば、数時間や数日で終えられるような作業単位にまで細分化しますそのときに抜け漏れをチェックし、タスクごとにかかる時間や工数についての見積もりも行います。
なお WBS は、あくまでプロジェクトの全体像や必要なタスクを把握するために作成するものです。タスクをあまり細分化しすぎると、ツリー構造の階層が深くなり、かえって把握しにくくなります。作業の重複や抜けが生じる恐れもあるため、タスクのサイズ感にこだわるよりも、わかりやすさを重視して作業内容を分けるよう心がけましょう。
順番を決めるときに重要なのは、作業それぞれの依存関係に気をつけることです。プロジェクトマネージメントを体系的にまとめた書籍『PMBOKガイド』では、タスクの依存関係として、以下 3 つの定義を示しています。
強制依存関係:「A が終わらないと B を進められない」などの避けては通れない関係
任意依存関係:任意だが優先的に処理したほうが効率的な関係
外部依存関係:第三者からの影響を受ける関係
順番を決めるときは、これらの関係性を考慮すると、円滑に仕事を進められます。実際に手順を考えていく際は、先行作業の終了が必須なタスクなのか、後続作業と同時進行可能なのかといった具合に、依存関係を考えながら作業順序を決めていきます。
関係性を見ながら手順を整理することで、クリティカルパスを明確にできます。遅延につながる重要な作業経路なので、確実に処理が進むよう目立つようにしておくと、ミスが起きにくいでしょう。
順番を考えたら、作業の実行プロセスをまとめていきます。作業感が同程度のタスクをひとまとめにして、ツリー構造に整理しましょう。
整理するときは作業を時系列順に並べ、関連作業は同じ階層にまとめます。必要に応じて関連作業ごとにインデントを行うと、それぞれの関係性がわかりやすいでしょう。また、同じ階層にあるタスクの難易度がバラバラで作業にかかる時間がそれぞれ大きく異なるといったことがないように、階層内のタスクの粒度をそろえることも重要です。
小ツリーの作業を総合したものが、親ツリーを完了するために必要な作業です。このように構造化することで作業を把握しやすくなるため、やり忘れなどの防止につながります。
構造化ができたら、下位の階層に配置されたタスクの総和が上位階層のより大きなタスクと完全に一致することを確認し、タスクの抜け漏れや重複があれば、その都度追加や削除をしましょう。
作業の構造化を終えたら、各作業に担当者をつけていきます。担当者が複数人いると、責任の所在が曖昧になりやすいため、1 作業につき担当者 1 人をつけましょう。担当者を 1 人に絞ることで、責任感を持ってもらいやすくなります。特にクリティカルパスの担当者を決める際は、個人のスケジュールにも気を配りましょう。重要な作業に問題が発生すると、プロジェクトの遅れにつながるからです。
また、会議などを WBS に含める場合は、参加者複数人が担当者になりますが、全員の名前を記載するとかえって見にくくなります。会議の開催責任者など、代表者の名前だけを記載するのがよいでしょう。
人員を配置したら、作業が完了するまでの必要工数を担当者に聞いて作業期間を見積もり、作業同士の関連性を考慮しながらスケジュールを埋めていってください。工数については、人によってこなせる速度が異なるため、管理者側で勝手に決定せず、担当者と話し合いながら決めることをおすすめします。
スケジュール通りに進まないことも多いため、WBS を定期的に見直しながら適宜調整していくようにしましょう。場合によっては作業工程や仕様の見直し、人員の増加などで対処する必要があります。
手書き
Excel
プロジェクト管理ツール
WBS の作成は、紙や Excel に書き出して作成することも可能ですが、この方法では時間も手間もかかります。近年では WBS 作成に役立つ Asana などのツールも数多く登場していますので、作成の手間を惜しむのであれば、それらの活用を検討してみるとよいでしょう。
WBS の作成手段の 1 つには、紙やペン、ホワイトボードを使った手書きがあります。必要な作業をリストアップしてクリティカルパスを確認、計画達成のために必要な人数などを計算してから、紙やホワイトボードに書き出します。
WBS を手書きで作った場合には、予定表の共有が不可能な点、あとから修正ができない点など、明確なデメリットも発生します。したがって現在では、下記に紹介するようなデジタルツールの利用が主流です。
Microsoft の表計算ソフトとして多くのパソコンにインストールされている Excel は、WBS ツールとしても活躍します。Excel は普段の仕事でよく使う人が多いため、WBS も Excel で作っている企業が多くみられます。データ入力がしやすく、表計算、図形、グラフなど、自由度の高いファイルが簡単にできるところがメリットです。
関数やグラフなどが使える場合には、ガントチャートまで Excel で作れます。Excel の WBS 作成用テンプレートも、インターネット上で手に入りやすいため、気軽に作成に踏み切れる環境が整っている点は大きな魅力です。ただ Excel での自動化に限界があり、いろいろな手動操作が求められる機会も増えるでしょう。
WBS 作成には、さまざまな「タスク・プロジェクト管理ツール」も利用できます。ガントチャートとセットの場合が多く、入力処理は自動の箇所も多いため、専用ツールには作業や所要時間など基本的なデータ入力だけで WBS の作成ができます。
専用ツールでは、スケジュ―ルの変更などで修正を一箇所入れれば、関係のある場所もすべて自動修正されます。作成と管理の手間が大きく省け、また入力間違いも少なくなるでしょう。WBS のチームメンバーが各作業にアサインすれば、メンバー同士の業務量と進捗状況を共有できます。担当者間でいつでも連絡を取り合えるため、進捗管理全般が大幅にスムーズ化すると期待されます。
また、WBS だけでなく「予実管理機能」「EVM分析機能」「掲示板」などのグループウェア機能も搭載されたタスク・プロジェクト管理ツールも存在します。自社に必要なタイプをよく検討し、導入しましょう。
WBS は、複数の方法で視覚化することができます。チームにとって最適な方法を選べるのも WBS の魅力です。
一般的に使用される視覚ツールには、ガントチャート (タイムライン)、かんばんボード、カレンダーがあります。使用しているソフトウェアごとに、少し違う機能もあるかもしれませんが、ここではこの 3 つのツールを紹介し、それぞれを使った WBS の作り方を細かく解説します。
ガントチャート (タイムライン) には WBS に必要な機能が揃っており、カラフルに楽しく仕事を視覚化することができます。フローチャートやガントチャートとも呼ばれる、タイムラインの機能をいくつかご紹介します。
従来のスプレッドシートをインポートする
進捗状況を追跡する
タスクを調整する
従属関係によってタスクをつなげる
期日の変更を調整する
タスクの担当者を割り当てる
未スケジュールのタスクをまとめておく
色別の管理を調整する
レベルごとにセクションで分類する
タスクの絞り込みやソート
WBS の作成を始めるには、既存のスプレッドシートのインポートや、タイムラインツールで直接作成するなど、さまざまな方法があります。タイムラインは、視覚的なレイアウトと機能の調整が自在な点が、かんばんボードとカレンダーとは異なります。プロジェクトをより可視化できるので、WBS とガントチャートは人気のある組み合わせです。
かんばんボードは、タスクを横長のタイムラインで整理するのではなく、数枚のボードを並べたようにデザインされています。かんばんツールは、次のような機能によってプロジェクトの進捗維持に貢献します。
進捗状況を追跡する
タスクを調整する
従属関係によってタスクをつなげる
期日の変更を調整する
製品ロードマップを計画する
かんばんボードも、WBS の作成に適したツールで、特に日常のリソース管理によく使用されています。このツールの長所の 1 つが、タスクの詳細を前もって確認できる点です。そのため、WBS 辞書を作成できない場合には、かんばんボードがおすすめの選択肢になります。
この方法で WBS を作成するなら、かんばんボードで仕事を階層化することから始めましょう。
かんばんボードテンプレートを作成WBS 作成の 3 つ目の選択肢が、チーム用のカレンダーツールを使用することです。タイムラインやかんばんボードに比べると WBS に使用されることは少ないものの、プロジェクトを視覚化するには優れたツールです。また、大規模なプロジェクトでは、1 日単位、週単位、月単位でビューを切り替えられるため、非常に便利です。
カレンダーは WBS 作成に活用できる優れたツールで、他の 2 つのツールとは違った形でプロジェクトを視覚化します。カレンダーを使って WBS の作成を始めるには、既存のスプレッドシートをインポートするか、カレンダーツールで新しいプロジェクトを作成します。
記事: プロジェクト計画を視覚化する 3 つの方法: タイムライン、カレンダー、ボード最後に、WBS の具体例をご紹介しましょう。どのツールで作成するかによって多少の違いはあるかもしれませんが、この例の階層構造やレベルをヒントにしてみてください。また、WBS のテンプレートを用意しておけば作成にも時間をとられることがなくなるのでおすすめです。
WBS の名前: ウェブサイトデザイン
説明: 新しいブランディングに基づき、インターネット上の旧ウェブサイトデザインを刷新する。
完了日: 2021年 9月 15日
予算: 50,000 ドル
【レベル 1】
ウェブサイトのデザインをリニューアルする
【レベル 2】
ブランドのガイドラインを見直す (完了)
メッセージングフレームワークを作成する (完了)
ロゴデザインのリニューアル (進行中)
新しいトップ写真を追加する (保留)
【レベル 3】
1. ブランドのガイドラインを見直す
ブランドカラー — 菊井 紗代
ブランドのムードボード — 菊井 紗代
UX のデザイン — 武川 智幸
2. メッセージングフレームワークを作成する
見出し — 段田 勝也
ミッションステートメント — 段田 勝也
トーンのガイドライン — 段田 勝也
3. ロゴデザインのリニューアル
スケッチ — 川添 紀夫
モックアップ — 菊井 紗代
最終デザイン — 菊井 紗代
4. 新しい写真の追加
写真撮影 — 川添 紀夫
写真編集 — 菊井 紗代
最終選定 — 川添 紀夫
プロジェクトの規模や複雑さ、スケジュール、選択したソフトウェアによって、WBS の見え方は異なるため注意が必要です。いずれにせよ、こうした細かい業務内容の一つひとつが従属関係で結ばれ、プロジェクトの視覚的な階層構造を形作るのです。
WBS とは何か、その種類や階層レベル、構成要素、メリット、デメリットなどの基礎知識とともに、WBS の作成手順や表示方法について解説しました。
WBS はテンプレートを利用すれば簡単に作ることができます。タスクの階層構造が視覚化されるおかげで、プロジェクトマネージャーやチームにもたらされるメリットは大きいでしょう。ワークマネジメントツールを使えば、視覚的に理解するタイプの人も、言語的に理解するタイプの人も、誰もが WBS を活用できます。Asana なら、リスト、ガントチャート、かんばんボード、カレンダーを簡単かつシームレスに切り替えられます。Asana を使って仕事のための仕事を減らしましょう。
働き方改革の促進や新型コロナウイルス感染症の流行によって、チームメンバーがオンラインでつながっているという状況も増えてきました。どのような状況下でもプロジェクトを正常にスタートからゴールまで導くには、信頼できるグループウェアの導入が鍵となってきます。コミュニケーションアプリとの連携サービスなどに優れたツールを選び、ビジネスを成功へと導きましょう。
仕事を最大限効率化し、チームの生産性を上げるためには、Asana のプロジェクトマネジメント機能をお試しください。日々の業務と目標をつなげ、「誰が・何を・いつまでに行うのか」を可視化します。