プロジェクトに失敗はつきものですが、失敗は避けられる場合も多くあります。100% の成功率は現実的でも理想的でもありませんが、仕事が成功する可能性を最大限に高めるには、プロジェクトでよくある落とし穴の存在を認識しておくことが重要です。この記事では、プロジェクトが失敗に終わる 7 つの一般的な原因と回避方法を説明し、仕事を順調に進めるのに便利なツールをご紹介します。
プロジェクトが失敗に終わったときの辛さを味わったことがあるプロジェクトマネージャーは少なくないでしょう。2021年に Project Management Institute が実施したアンケートの回答者は、それぞれの組織で行われたプロジェクトの実に 12% は失敗に終わったと答えています。しかし、プロジェクトが失敗するのを避けたいと思うのはあなただけではありません。この記事を読むだけでも、すでに重要なステップを踏んでいるのです。前もって計画を立て、プロジェクトのよくある落とし穴を回避しましょう。
プロジェクトは以下の理由で失敗とみなされる場合があります。
プロジェクトの目標を達成できなかった。
理想の成果物を得られなかった。
作業を予定どおりに完了できなかった。
何を失敗とするかは、人それぞれです。「失敗した」プロジェクトでも、重要な結果を得られたということはよくあります。それは、締め切りを逃した場合も、成果物を完成できなかった場合も言えることです。失敗していい気分になることは決してありませんが、失敗したということは、簡単ではない努力を要する目標を立てたということの裏返しでもあります。
たとえば、Asana では、100% の確率で成功していたら、あまり積極的な計画ではなかったのだろうと考えます。だからと言って、避けられたはずの落とし穴にはまってしまって失敗していいわけではありません。プロジェクトが失敗する場合は、前のめりに勢いをつける目的でストレッチゴールを設定したなど、それなら仕方ないと言えるような理由であることが重要です。
幸い、こうした原因は解決することができます。失敗は、前もって計画を立てれば食い止めることができます。
問題: プロジェクトの目標についてチームのチームの認識が揃っておらず、成功を評価する術もない。
プロジェクト目標とは、プロジェクトが終了するまでに達成を目指すものです。プロジェクトの終わりに評価できる、具体的で期限が設けられた目標でなければなりません。明確な目標がなければ、チームは足並みを揃えることに苦労するだけでなく、プロジェクトが成功したのか、失敗したのかの判断にも困ります。
たとえば、チームはモバイルアプリの新しいチェックアウト (決済) ページをデザインしていると想像してください。明確な目標 (「第 2 四半期にエンドユーザーのチェックアウトタイムの平均時間を 30% 短縮させる」など) がないと、そのページにどのような新機能を取り入れればよいのかという判断に困ります。プロジェクトが終わった後にパフォーマンスを評価する際は、比較材料となる具体的な目標がなくて苦労するでしょう。
目標が不明確なのは、よくある問題です。1 万人のナレッジワーカーに対してアンケートを行った、2021年の 「仕事の解剖学」インデックスでは、日々の業務がより大きな目標にどう貢献しているかを理解している従業員は半数にも達していないことがわかっています。
解決策: 計画プロセスの一部として明確な目標を立てる。
効果的なプロジェクト目標があれば、チームの足並みが揃うほか、成功を評価するための基準にもなります。プロジェクトをスタートする前に目標を立てておけば、プロジェクトの道標になります。欲を言えば、チームメンバー全員の足並みを揃えてスタートを切れるよう、目標設定プロセスにチームを参加させるとなおよいでしょう。
目標は、全体的なプロジェクト計画の一部として設定するとよいでしょう。また、プロジェクト計画には、プロジェクトの関係者や成果物、タイムラインなども明記されます。
記事: 効果的なプロジェクト目標の書き方 (実例付)問題: 作業を進行する中でプロジェクトの成果物が変更となる。
スコープクリープは、ゆっくりと肥大化することが多いため、なかなか気づきにくいものです。発生するまでは気付かないと言っても過言ではないでしょう。プロジェクトの成果物がプロジェクトスコープを超えてしまい、予想以上の作業を抱えてしまうときのことを言います。
たとえば、新製品リリースの一環として、今月はブログ記事を 10 件公開する予定だと想像してください。ところが、別の製品をサポートするための記事を 2 件追加して欲しいと関係者から依頼が届きます。新しい依頼を受けてしまったがために、リソースが追い付かなくなり、記事の公開期限を全体的に先延ばしにしなくてはいけないという状況です。
スコープクリープは、締め切りを逃したり、プロジェクトが失敗したりする主な原因の 1 つです。2021年に Project Management Institute が実施したアンケートの回答者は、過去一年内に組織で実行されたプロジェクトの実に 34% でスコープクリープが発生したと答えています。
解決策: プロジェクトを開始する前にプロジェクトスコープを定義し、配布する。
スコープを事前に定義しておくと、成果を予定通りに予算内で出しやすくなります。人員の配置も事前に計画しておけば、チームが土壇場のリクエストに圧倒されることはありません。また、プロジェクトスコープを文書化しておけば、関係者からの追加のリクエストを先送りにする上で便利なツールとして使用できます。上の例でいうと、ブログ記事の件数を元々予定していた 10 件のままにして、プロジェクトを予定通りに完成させるということです。
プロジェクトスコープは、スコープ記述書を使って文書化するとよいでしょう。プロジェクト計画に含めてもよいですし、個別の文書として作成してもよいでしょう。スコープ記述書を作成したら、必ず関係者と共有します。関係者は、プロジェクトに何が含まれ、何が含まれないのかを明確に把握できれば、後からタスクを付け加えようとはしないでしょう。追加のリクエストが出るときは、変更管理プロセスを使えば、そのリクエストがプロジェクトスコープに追加するほど重要かどうかを判断できます。
記事: クイックガイド: 8 個のステップでプロジェクトスコープを定義問題: 目標は達成不可能である。
意欲的な目標は、勢いをつける上で便利ですが、達成可能なものでなくてはいけません。プロジェクト目標が野心的過ぎると、チームメイトがストレスを感じ、締め切りを逃すという事態が発生しやすくなります。
たとえば、セールスチームが今月 100 件のコミッションを獲得するというストレッチゴールを掲げているとしましょう。しかし、チームメイトの 2 人が有給休暇をとっているため、残りのチームメイトは目標を達成するために残業をしなくてはいけません。つまり、目標を達成できるだけのリソースがないため、目標は達成不可能です。
過度に野心的な目標は、プロジェクトタイムラインに大きな支障を与えます。2021年の「仕事の解剖学」インデックスによると、締め切りを逃す最も一般的な原因は、目標が非現実的なためであるとわかっています。
解決策: SMART なプロジェクト目標を立てる。
ある程度の事前計画を行っておけば、意欲的でも残業を必要としない目標を立てられます。野心的でも達成可能な目標を立てるには、SMART (Specific (具体的)、Measurable (測定可能)、Achievable (達成可能)、Realistic (現実的)、Time-bound (期限がある)) な目標でなければいけません。SMART な目標設定メソッドを使用すれば、そのプロジェクトにおける成功の定義をはっきりさせることができると同時に、プロジェクトロードマップとフィニッシュラインも明確になります。目標が達成可能であり、プロジェクトスコープ内で設定されていることを確認しておけば、プロジェクトのリスクを軽減し、チームを成功に導くことができます。
記事: よりよい SMART な目標作成のためのヒントと実例問題: 仕事を完了させるために必要なリソースがない。
リソースとは、予算やスタッフ、時間、スペース、ツールなど、プロジェクトを完了させるのに必要なものを指します。リソースが不足していると、プロジェクトは遅延したり、中止になることさえあります。
たとえば、新製品の広告キャンペーンに取り組んでいるとしましょう。締め切り日が目の前に迫っている中で、フリーランスの動画編集者を雇う予算が尽きてしまいます。社内には編集者が 1 人しかいないため、キャンペーンの延期を余儀なくされます。この場合は、予定通りに作業を仕上げるのに必要な予算とマンパワーの両方を使い切ってしまいました。
解決策: あらかじめリソース管理計画を立てておく。
予算カットなど、想定外の出来事を予測するのは簡単なことではありません。しかし、前もって計画を立てておけば、チームがプロジェクト目標を達成するのに必要なものを揃えられる場合も少なくありません。リソース管理計画を行えば、プロジェクトに必要なリソースの種類と量が明確になるため、プロジェクトをスタートする前に何が必要なのかを的確に把握できます。そして、リソース配分のベストプラクティスを用いて各プロジェクトに各リソースを割り当てる正確なタイミングを見極めます。これには、従業員の余力や予算、IT 関連機器、作業スペースなどが含まれます。
記事: プロジェクトを成功させるためのリソース管理完全ガイド問題: チームメンバーが最新情報を伝える方法とタイミングを理解していない。
最近、コミュニケーションはかつてないほど複雑化しています。2021年の「仕事の解剖学」インデックスによると、ナレッジワーカーは 1 日平均で 10 種類のアプリを 25 回も切り替えながら作業を行っています。また、そのうちの 27% はアプリを切り替える際にアクションを見落としたり、メッセージが伝わっていなかったりする場合があると話しています。
アプリ過多の今、重要なプロジェクト更新をどのタイミングでどこに発表すればいいのかは判断しにくいものです。プロジェクトチームのメンバーがどのコミュニケーション手段をいつ使用するのか、誰が何を伝えるべきなのかについて、共通認識を持てていないと、仕事がうまく進行しない可能性があります。
たとえば、あなたは北米とヨーロッパに分散するチームのリーダーを務めているとしましょう。メールやメッセージ、ビデオカンファレンス、共有ドキュメントなど、さまざまなコミュニケーションツールを使用しながら作業を行っています。ですが、チームは各チャンネルを使用するタイミングについて明記されたドキュメントを持っていないため、チームメンバーは重要な最新情報を限られたメンバーしかアクセスできないチャンネルに共有することがよくあります。この結果、重要な詳細の見落としが発生し、仕事が重複することも多々あります。
解決策: コミュニケーションプランを作成、共有する。
明確なコミュニケーションプランは、進行中の重要なプロジェクトに関する情報を伝達する手段を決定するものです。どのツールを何の目的に使用するのかが明確になり、最新情報を共有する頻度 (および誰が共有するのか) を決定し、主な関係者に情報を共有するタイミングが指定されます。しっかりとしたコミュニケーションプランがあれば、情報を探す時間を減らし、プロジェクト目標の達成にあてる時間を増やすことができます。
一般的に、コミュニケーションプランには、各コミュニケーションを行う頻度や使用するチャンネル、オーディエンス、担当者が記載されます。たとえば、プロジェクトの週次ステータス更新には、以下のような詳細が含まれることがあります。
コミュニケーションの種類: プロジェクトのステータス更新
頻度: 毎週
チャンネル: メール
オーディエンス: プロジェクトチーム
担当者: プロジェクトマネージャー
問題: 締め切りを逃すと慌てて作業を行うことになり、プロジェクトの進行が大幅に遅れる。
締め切りに間に合わなかったり、会議が延期されたりすることがあると、そのときは大したことではないと思えても、最終的には慌てて作業を行ったり、チームメイトがストレスを感じるようになったり、プロジェクトが大幅に遅れるといった状況に発展する場合があります。
たとえば、美術館で展示会を計画しているとします。会場担当者とのロジスティクスミーティングはすでに数回延期されています。グランドオープニングまで 2 週間しかないという状況で、チームは予定通りに準備を整えるには計画プロセスをすばやく完了させる必要があります。それができなければ、イベントを延期しなくてはいけなくなる可能性も出てきます。このようなスケジュールの遅れは、一般的になりつつあります。2021年の 「仕事の解剖学」インデックスによると、毎週期限の 26% で遅れが発生しています。
解決策: プロジェクト計画にプロジェクトのスケジュールを含める。
先ほども話題にのぼった、とても便利なプロジェクト計画には、通常プロジェクトの詳細なスケジュールが含まれます。プロジェクトのスケジュールには、完了させる必要があるステップ、各作業の担当者、各タスクの期日が明記されます。
効果的なプロジェクトスケジュールは、各要素のつながりを明確にします。そのおかげで、主なマイルストーン同士の依存関係を簡単に確認できるため、期日から遡って各ステップを完了させるのに十分な時間を設けることができます。また、スケジュール作成プロセスにチームを参加させれば、メンバー全員のタイムラインや担当業務を考慮できます。
記事: 仕事を楽にするプロジェクトスケジュールの作成方法問題: チームメンバーがプロジェクトの重要なドキュメントを見つけられない。
プロジェクトスケジュール、コミュニケーション計画、リソース管理計画、SMART な目標を盛り込んだ最高のプロジェクト計画を作成した後は、何をすべきか?
そうしたドキュメントが静的なもので、チームが容易にアクセスできないとなると、時間のかかるステータス会議を開かずに最新情報を伝えるのは困難になります。会議を開くにしても、情報が失われる可能性があります。
解決策: ワークマネジメントツールを使ってプロジェクトの情報を 1 か所にまとめる。
ワークマネジメントを行うと、ワークフローを整理し、プロセスをセットアップできるため、チームは長期に渡ってコラボレーションを行えます。適切なワークマネジメントツールは、プロジェクトの情報、ドキュメント、ステータスを確認できる、唯一の信頼できる情報源として機能します。私たちは (当然ですが) Asana を好んで使用しています。それは、メンバー全員が一番やりやすい方法で作業とチームの優先事項を表示し管理できる柔軟なシステムを提供してくれるからです。しかし、どのツールを使用するにしても、プロジェクトマネジメントソフトウェアを活用すれば、チームは必要な情報にアクセスし、最新のプロジェクト更新を通じて最新情報を把握できます。つまり、すぐに過去の情報と化す Excel トラッカーを破棄し、プロジェクトチームが必要とするときに、いつでもリアルタイムに情報を提供できるということです。
プロジェクトが失敗する一般的な理由がわかったところで、今度はプロジェクトを成功に導くツールをいくつかご紹介します。
プロジェクトを関係者にピッチするためのプロジェクト憲章。
作業を順調に進めるためのプロジェクト計画。以下が含まれます。
チームの仕事量を管理するためのリソース管理計画。
起こりうる障害を識別するためのリスク登録簿。
主な詳細について共通認識を確立し、関係者の同意を得るためのプロジェクトキックオフミーティング。
すべてをコーディネートするためのプロジェクト管理ツール。
趣旨はご理解いただけたのではないでしょうか。リスク管理を行い、プロジェクトの失敗を避けるには、事前に計画を立てることが欠かせません。チームが戦略的に計画を立てられるようにし、またプロジェクトのすべての進捗状況を考慮することにより、プロジェクトを成功させた実績を打ち立て、主要な目標を達成できます。事前に計画を立て、数多くのプロジェクトを成功させていきましょう。
Asana でプロジェクトを計画する