プロジェクトマネジメントにおいてよく耳にする 「PMO」。その意味を知りたい。PMO ってどんな人?PMO の役割って何?そんな疑問にお答えすべく、この記事では PMO の基本知識についてご紹介します。PMO の役割や責任範囲、メリットについて把握しましょう。
更新: この記事は、PMO と PM の違いに関する記述を含めて 2022年 9月に改訂されました。
どんな組織も、成長過程でチームのやり方は変化していくものです。たとえば、マーケティングチームがチーム全体の作業開始や作業調整のために独自のクリエイティブブリーフのテンプレートを使いはじめたり、製品チームがしっかりとしたリクエスト受け付けプロセスを開発することにしたり。こういったプロセスを導入することで両チームはそれぞれ大事な仕事をこなすことができるわけです。しかし、もしこの 2 つのチームが共同作業を行う場合はどうすればいいのでしょうか?どのテンプレートを使って、どのプロセスで進めればいいのでしょうか?
そんなときに真価を発揮するのが、PMO です。PMO はチームのプロセスを標準化し、組織全体のベストプラクティスを整理することで効率と効果を高めます。しかし実際には、PMO は何をするのでしょうか?また、PMO はどんなプロジェクトにも必ず必要な存在なのでしょうか?この記事では PMO の役割を紹介し、あなたのチームに PMO が必要かどうかを判断するお手伝いをします。
プロジェクトを計画するときは、祝日がすでに記載されているカレンダーを使って効率的に行いましょう。詳しくは『2023年カレンダーを活用してプロジェクトカレンダーを作る』の記事をご覧ください。
プロジェクトマネジメントオフィス (PMO) は、主要なプロセスや戦略的イニシアチブの実行方法の定義など、組織のプロジェクトマネジメントのベストプラクティスを設定し、管理する存在です。プロジェクトだけでなく、品質管理やマネジメント業務への支援を行います。PMO はプログラムマネジメントオフィスと呼ばれることもあり、社内チームである場合もあれば、外部のサポートシステムである場合もあります。
PMO とは、Project Management Office の頭文字を取った略語で、日本語では PMO (読み方: ピーエムオー) もしくはプロジェクトマネジメントオフィスと呼ばれるビジネス用語です。PMO の役職名は何かというのもよく聞かれる疑問ですが、PMO は実際の所ひとつの役職ではなく部署、部門を意味します。「PMO マネージャー」ならば、「プロジェクトマネジメントオフィスマネージャー」が役職名です。
PMO は組織全体または特定の部門における、ビジネスに不可欠な企画・運営プロセスを定義、統一、確立、そして継続することで、部門間コラボレーションをサポートし、組織内の混乱を減らします。一般的には、製品やサービスの構築や提供方法を部門規模や会社規模で定義するのも PMO の役割です。
PMO は共通サービス組織であり、多くの場合他のチームの仕事を促進したり、実現したりする中心的なサポートチームの役割を果たしています。たとえば、小規模な組織では 1 つの PMO チームが全部門のプロジェクトマネジメントのベストプラクティスを統一していることがあります。一方で、さまざまなシステムが存在し、部門間コラボレーションの少ない大規模な会社の場合は、PMO が各部門の中に組み込まれていることもあります。
Asana でチームのコラボレーションを向上PMO は 2 つのタイプに分けることができます。どちらのタイプの PMO に投資すべきかは組織のニーズによって異なりますが、まずは 2 種類の PMO の違いをこちらで確認しましょう。
社内 PMO とは、プロジェクトの成功をサポートする社内チームのことです。社内 PMO は組織内のすべてのプロセスを収集して統一し、ベストプラクティスを確立する常設チームです。ベストプラクティスを確立した後も、組織の成長に合わせてトレーニングの提供、ガイドラインの更新、ベストプラクティスの継続的な統一などを行い、チームのサポートを続けます。後述する社外 PMO に比べて、社内 PMO の方が組織の長期的なサポートに適しています。
社外 PMO とは、会社のベストプラクティスの作成をサポートする代理店やコンサルティング会社のことです。社外 PMO は通常、顧客企業のプロセスの聞き取りを行い、最適なベストプラクティスを提案します。社内 PMO とは異なり、社外 PMO はそのベストプラクティスの実行を担当したり、組織のサポートを継続して行うことは通常ありません。
社内 PMO は、共通サービスチームです。通常、PMO のプロジェクトマネージャーは部門間パートナーとして、サポート対象である部門や組織全体のプロセスを統一します。PMO にはプロジェクトマネージャーやプロセスマネージャーに加えて、ビジネス戦略チームのメンバーも参加し、プロセスの統一だけでなく、プロセスの最適化や改善をサポートします。
PMO とよく混同されがちなのが PM (プロジェクトマネージャー) です。両者とも最終的な目標はプロジェクトを成功させることなので、その違いを把握していないと、PMO と PM、どっち?と混乱する人もいるかもしれません。PMO と PM の根本的な違いは、PMO が「部門」「組織」であるのに対し、PM は「役職」である点でしょう。多くの場合、実際にメンバーをまとめながらプロジェクトを進行させていくのは PM です。そしてその PM の仕事が上手く回るよう土台を作るのが、PMO というチームなのです。
社内 PMO には 3 つのタイプがあります。会社の状況やプロジェクト全体の管理状況、具体的なニーズに合わせてタイプを選びます。
支援型 PMO: トレーニング、情報、サポートの提供に特化しており、あまり強制力はありません。支援型 PMO はプロジェクトに提案やシステムを提供しますが、それらを採用するかどうかは各プロジェクトマネージャーが判断します。
支配型 PMO: プロセスを完全にコントロールすることで、全チームの足並みを揃えます。支援型 PMO とは違い、支配型 PMO はガイドラインを統一し、プロジェクトマネージャーにそのガイドラインを遵守させます。きちんと遵守できているか確認するために、PMO がプロジェクトをレビューする場合もあります。
指示型 PMO: プロジェクトマネジメントの要素を引き継ぎ、リソースの割り当て、プロジェクトのリスク管理、プロジェクトスコープの定義など、細かいプロジェクト計画のほとんどを担当します。実質的に大規模な取り組みのほとんどを PMO が運営するため、このタイプの PMO には最も多くの人員が配置されます。
PMO 部署を設けることの最大のメリットは、システムとプロセスを統一できる点にあります。プロジェクトメンバー全員が一体となることで、部門間コラボレーションのハードルが下がり、より大きな成果と高いパフォーマンスを上げることができます。
システムとプロセスの統一は PMO の取り組みの中でも最も難しい点であると同時に、そもそも PMO が必要になる主な理由の一つです。チームや部門は時間とともに独自のプロセスを構築していきます。仕事をうまくこなしていくために、各チームはそれぞれ独自のルールや技術、プロジェクト管理ツールなどを導入していきます。しかし、それぞれのチームのニーズに合ったプロセスやツールしか導入していないので、すぐに情報のサイロ化や知識のギャップが発生してしまうのです。こういったサイロの放置は業務の非効率化につながり、部門間コラボレーションの難易度も上がってしまいます。
PMO の仕事はまず、各チーム独自のプロセスを理解し、その情報を集約して、サポート対象である部門や組織のために、統一された 1 つのプロセスを確立することです。このレベルのチェンジマネジメントの達成は難しいかもしれません。詳しくは、成功するチェンジマネジメントのプロセスを構築する 6 つのステップの記事をお読みください。
Asana でプロジェクトを計画するチームが最高の成果を出せるようサポートすること以外にも、PMO にはこんなメリットがあります。
プロジェクトを企業戦略に沿う形で調整し、日々のタスクを会社の目標と結びつける
システムの統一を通して部門間コラボレーションを可能にする
組織規模のプロジェクトマネジメントルールを確立する
リアルタイムの可視性と背景情報を全チームに提供する
組織全体のプロジェクトマネジメントのベストプラクティスを開発、共有、モニタリングする
新しいプロジェクトマネージャーのトレーニングや新しいプロジェクトマネジメントスキルの指導を行う
組織全体のデータを統合し、民主化する
業務の効率を高める
リソースの利用率を高める
プロジェクトに費やす時間とコストを削減する
PMO は、会社全体のプロジェクト管理プロセスの統一をサポートします。チームにベストプラクティスやガイドラインを導入することにより、プロセスの統一を実現します。PMO の役割は何なのか、ひとつひとつ確認しましょう。
PMO の仕事は、プロジェクトマネージャーやプログラムマネージャーを支援し、部門の違う関係者間の調整方法とプロジェクトの進め方を統一することです。PMO はプロジェクトの運用方法について、ガイダンスや手法、システム等を提供します。提供するものの例として、以下のようなものがあります。
プロジェクトリーダーや予算責任者などの関係者の明確な責任範囲
プロジェクトマイルストーンの設定やプロジェクト状況の伝達方法に関するガイドライン
プロジェクト進捗報告プロセス (進捗管理) の統一
プロジェクト計画、QBR (四半期ビジネスレビュー)、プロジェクト事後評価などで議論する内容の明確化
プロジェクトガバナンスとは、プロジェクトのライフサイクルの中で行われる意思決定の枠組みです。たとえば、情報の保管場所や情報にアクセスできるメンバー、チームのコラボレーション方法など、プロジェクトそのものの詳細や、プロジェクト管理の 5 つのフェーズなどのベストプラクティス、その他のプロジェクト管理手法などがこれに含まれます。また、プロジェクトガバナンスは組織によるプロジェクトのサポート方法を大まかに統一します。この場合は PMO がプロジェクトガバナンスのルールを確立し、長期的または短期的な企業目標に貢献するプロジェクトに組織が確実に投資できるようにします。
PMO はベストプラクティスの確立に加えて、幹部チームにとっての分析パートナーとしての役割も果たします。PMO は主な質問を設定し、分析アプローチを決定し、同意を得ます。そしてデータの要約を行い、必要に応じてアクションプランを作成します。PMO は、プロジェクトの成果を効果的に評価するためのレポート機能も提供します。こういったレポートによってプロジェクトチームはデータに基づいた決定を下し、ビジネスリスクを軽減することができるのです。
Asana を使ったワークフロー調整の例を見る戦略プランとは、組織が目指すものと、どうやってそこに到達するのかを示す 3 ~ 5 年間のロードマップです。PMO は、この戦略プランの作成とモニタリングも担当していることがよくあります。その仕事内容には、たとえば以下のようなものがあります。
ビジネスパートナーの戦略策定を支援する
目標設定者を統一する
年間の OKR を決定する
OKR を四半期ごとの計画に落とし込む
目標までの進捗を確認できるシステムを作成する
目標の伝達方法を確立する
そして PMO はこの戦略プランがプロジェクトレベルで浸透するようにします。具体的にはこんな仕事があります。
記事: RACI チャートのガイド (実例付)チームが自分たちのために情報やフォルダー、ツールなどを設定するとき、他のチームメンバーがどうやってその情報にアクセスするのかは考慮されていません。このような情報の分断は、手作業や重複作業の原因となります。実際に、平均的なナレッジワーカーは文書の検索、進捗の確認、仕事に関するコミュニケーションなどの「仕事のための仕事」に、勤務時間の 60% を費やしています。
PMO の仕事の一つは、このような情報のサイロを減らすことです。サイロはたとえば次のような方法で減らすことができます。
主要な情報がまとめられた、信頼できる唯一の情報源を作る
チームメンバーの望ましいコラボレーションのベストプラクティスを確立する
情報の保管と共有に関するセキュリティ対策の基準を策定する
情報を定期的に更新する責任者の割り当てとモニタリングを行う
誰が何をいつまでにやるのか全員が把握できるようにして、重複作業を減らす
プロセスを統一する上で重要なのは、全員が同じツールを使っていて、その使い方を知っていることです。もし、まだチーム全員が同じワークマネジメントソフトウェアを使用していていないのであれば、PMO がチェンジマネジメントプロセスと新しいツールの導入を推進し、使用状況をモニタリングします。トレーニングを促したり、可能な範囲でプロセスを自動化したりするのも PMO の仕事です。
ワークマネジメントツールの選択に役立つ完全ガイドリソース管理とは、プロジェクト完了のためにチームのリソースを計画し、スケジュールを立てるプロセスのことです。ここで言うリソースとは、機材や資金から技術ツールや社員のキャパシティまで、あらゆるもののことを指します。
PMO のリソース管理は、組織の規模によって異なります。小規模な組織であれば、PMO が直接リソースをプロジェクトに割り当てる役割となるかもしれません。大規模な組織では、PMO がリソース管理計画のシステムや、スコープクリープを防ぐための変更管理プロセスなどの構築を行うこともあります。企業レベルでは、キャパシティ計画やリソース予測なども含まれます。
チームが部門を超えていかにうまくコミュニケーションを取り、コラボレーションするかがチームが効果的に働くカギです。PMO の役割の一つは、異なるチーム間の既存のプロセスをチェックして、それらのプロセスを統一することで、よりスムーズな部門間コラポレーションを可能にすることです。これには、必要に応じて用語を統一したり、価値観を共有したり、健全な組織文化をサポートしたりすることも含まれます。
すべてが決まって動き出したら、PMO の最後の役割は新しいプロジェクトマネージャーを育成し、新しい取り組みをサポートするためのトレーニングセッションを継続的に開催することです。たとえば、チームや会社全体の重要業績評価指標 (KPI) を設定するための研修や、プロジェクト内の対立のソリューションに関するウェビナーなどを開催します。
記事: あなたが活用していない最善の対立解決戦略PMO を設立することは、まったく新しいチームを設立するようなものです。場合によっては、企業全体を横断するチームになることもあります。PMO は非常に役立つ価値ある組織ですが、作るのには時間がかかります。
以下に当てはまる場合は、PMO が有効な可能性があります。
仕事がサイロ化されていて、チームの共同作業が難しい
プロセスにまとまりがないように感じる
情報が失われやすい
最近組織の規模が急激に成長している
前項のうち当てはまるのが 1 つか 2 つしかない場合は、他の戦略を試してみましょう。
仕事の状況を俯瞰してすべての取り組みを一か所でモニタリングしたい場合は、プロジェクトポートフォリオ管理をお試しください。
企業レベルのセキュリティや情報システム管理を確立したい場合は、企業プロジェクト管理をお試しください。
会社規模の指標や、日々の仕事がどのように会社の目標に結び付いているかを明確にしたい場合は、目標管理ソフトウェアをお試しください。
PMO の意味と種類、メリット、役割を解説しました。全員が同じ方向に向かって進めるように PMO チームがサポートすることで、チームは何をすべきで、なぜそれが重要なのか、どうすれば達成できるのかを理解できます。PMO が必要だと感じられるなら、まずは現在各チームがどのように働いているかを調査することから始めましょう。現状を理解することが PMO 設立の第一歩です。すべての情報が集まったら、そこからベストプラクティスを定義して部門間コラボレーションを促進しましょう。
現状を理解するために、まずはワークマネジメントの導入から始めてみましょう。ワークマネジメントを行うと、リソース管理、仕事と目標の関連付け、プロジェクトの進捗報告や可視性アップをはじめとした、PMO チーム設立の準備に必要なさまざまな要素を上手に管理できます。
ワークマネジメントソフトウェアについてもっと知りたいですか?Asana を使って組織のあらゆるレベルで仕事を調整する方法をご覧ください。