「ステークホルダー」という言葉をビジネスの現場で耳にすることは多くなりましたが、その正確な意味や役割を理解していますか?この記事では、「ステークホルダーとは誰のことか?」「シェアホルダーとの違いは?」「なぜ意思決定においてすべてのステークホルダーのニーズを考慮する必要があるのか?」といった疑問にわかりやすく答えます。
ステークホルダーの種類、企業との関係、マネジメントの考え方までを幅広くカバーし、プロジェクトや組織運営に役立つ実践的な知識を得られる内容です。
更新: この記事は、ステークホルダーに関する企業の取り組みについての記述を含めて 2025年 7月に更新されました。
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新しいサービスを立ち上げる、社内の仕組みを見直す、取引先と新たな契約を結ぶ。こうしたビジネスのあらゆる場面で関わるのが「ステークホルダー」です。よく似た言葉に「シェアホルダー」がありますが、両者は役割も関わり方も大きく異なります。
本記事では、ステークホルダーとは誰のことか、どのような種類があり、なぜビジネスに欠かせない存在なのかをわかりやすく解説します。シェアホルダーとの違いを比較しながら、マネジメントやエンゲージメントの基本も理解しましょう。
ステークホルダーとは、あるプロジェクトや事業活動において、影響を与えたり、逆に影響を受けたりする立場にある関係者のことを指します。日本語では「利害関係者」とも呼ばれます。
ステークホルダーには、プロジェクトの協力者やチームメンバーだけでなく、企業経営に携わる経営層、社外パートナー、エージェンシー、さらには一般の消費者なども含まれることがあります。組織の内外を問わず、その活動に直接影響を及ぼす、または影響を受ける人々が該当します。
たとえば、イベントを開催する場合、共に働く外部エージェンシーはもちろん、イベントの成果に期待を寄せるスポンサーや来場者もステークホルダーとなります。また、ある製品の改善が消費者の関心事に直結するなら、その消費者もステークホルダーといえるでしょう。
こうしたさまざまなステークホルダーと良好な関係構築を行うことが、企業やプロジェクトの成功に欠かせない要素となっています。
ステークホルダーとは、ビジネスやプロジェクトに関わるすべての人を指します。
具体的には、企業の経営陣や従業員だけでなく、顧客、取引先、金融機関、行政機関、株主なども含まれます。また、労働環境に関わる労働組合や、広報や情報発信を担う部署など、組織の内外で多様な役割を持つ関係者も重要なステークホルダーです。
こうしたさまざまな立場の人々が、それぞれの関心や期待を持ちながら、プロジェクトや企業活動に影響を与えています。
ステークホルダーは、プロジェクトマネジメントに関連して言及されることが多くあります。 なぜなら効果的なコラボレーションを行い仕事を完了させるには、プロジェクトに関わる人々、つまりステークホルダーが誰なのかを把握する必要があるためです。適切にステークホルダーを特定し円滑なコミュニケーションを進めることができれば、より多くのサポートとリソースが得られるでしょう。
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Asana でチームのコラボレーションを向上ステークホルダーは大きく分けて、「直接的ステークホルダー」と「間接的ステークホルダー」の 2 種類に分類できます。これらは、企業やプロジェクトとの関わり方や影響の受け方によって区別されます。
企業と直接的な関係を持つ人々を指し、チームメイトや他部門のパートナーが含まれます。多くの場合は企業に雇用されていますが、そうでないケースもあります。
例えば、企業の大株主は社員ではありませんが、株価に直接的な影響を与えるプロジェクトに関わるため、直接的ステークホルダーに分類されます。
企業に所属していないものの、何らかの形でプロジェクトや事業活動に影響を受ける関係者です。消費者、顧客、エンドユーザー、取引先、そしてサプライヤーがこれに該当します。 例えば、製造プロジェクトを進める際、サプライヤーからのリソース提供が必要になるため、間接的ステークホルダーとして重要な役割を果たします。
どちらのタイプにせよ、各ステークホルダーの役割と関係性を理解し、適切に対応することが、プロジェクト成功の鍵となります。
記事: RACI チャートのガイド (実例付)ステークホルダーの意味を理解したところで、次はシェアホルダー (Shareholder) について見ていきましょう。
シェアホルダーとは、企業の株式を保有している人、つまり株主のことを指します。米国ではストックホルダー (Stockholder) という呼び方もありますが、意味は同じです。株を 1 株でも保有すれば、その時点で企業のシェアホルダーとなります。
株を所有することで、シェアホルダーはその企業の一部を間接的に所有していることになり、議決権を通じて経営方針に影響を与えることができます。特に、多くの株式を保有する大株主は、取締役の選任や合併、買収といった経営上の重要事項において、企業の経営に対して大きな影響力を持ちます。
多くのシェアホルダーにとっての主な関心事は、投資額に対して最大の利益を得ることです。企業の業績が良くなれば株価が上がり、保有株を売却することで利益を得られるチャンスが広がります。また、株の種類によっては、配当を受け取る権利もあります。
なお、シェアホルダーは本来、ステークホルダーの一部でもあります。特に、企業の意思決定やプロジェクトの結果が株価に影響を与える場合、シェアホルダーはそのプロジェクトのステークホルダーの利益にも直結する利害関係者となるのです。
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シェアホルダーは、保有する株の種類によって「普通株主」と「優先株主」に分類されます。どちらの株式も一般的な証券口座を通じて購入できますが、それぞれに異なる権利やリスク、メリットがあります。
企業にとっては、両者との適切な関係性を築き、継続的な情報提供を行うことが、コーポレートガバナンスや企業価値の向上にもつながります。
普通株を所有する人は「普通株主」と呼ばれます。普通株主は、企業の部分的な所有権を持ち、経営に関する重要事項について議決権を行使できます。取締役の選任を通じて、企業の経営戦略にも間接的に影響を与える立場です。
一般的に普通株は、長期的な成長性が見込まれるケースが多く、企業価値の向上を重視する投資家に好まれます。一方で、リスクも存在します。企業が清算される際は、まず債権者、優先株主、その他の債券保有者に対して支払いが行われた後にしか、普通株主は資産の請求を行えません。そのため、他の投資形態に比べてリスクがやや高くなる傾向があります。
優先株を所有する人は「優先株主」と呼ばれます。優先株主は、原則として議決権を持ちません。そのため、企業の経営戦略や将来の方針に直接的な影響を与えることはできず、経営に関しては発言権が制限されます。ただし、契約内容によっては限定的な議決権が付与されるケースも存在します。
その代わりに、優先株主は通常、安定した配当金の支払いを受ける権利を持ちます。また、企業が清算された際には、普通株主よりも先に資産を請求できるため、投資リスクは比較的低めとされています。
優先株主は、特定のステークホルダーとして企業の財務的安定性やリターンを重視する傾向が強く、近年注目されているステークホルダー資本主義の観点からも、重要な役割を担う存在といえるでしょう。
前項で少し触れましたが、ステークホルダーとシェアホルダーというビジネス用語は混同されがちですが、実は大きく異なります。その違いについて、こちらで具体的に確認しましょう。
先述のとおり、ステークホルダーはプロジェクトの影響、すなわち「利害」を受ける立場にある人を指し、シェアホルダーは企業の株を所有する人を意味します。その他にも、両者には以下のような違いがあります。
シェアホルダーとステークホルダーは、優先事項が異なります。シェアホルダーは、投資額に対して最大の利益(通常は配当金や株価の増価など)を得ることを狙っているため、企業に対して金銭的な関心が強いと言えます。つまり、シェアホルダーは、企業全体の利益や株価の上昇を最優先しています。特に非上場企業や自営業のシェアホルダーは、企業の債務に対して責任を負う場合もあるため、金銭的なインセンティブがより強くなる傾向があります。
一方、ステークホルダーは金銭面だけでなく、さまざまな側面にフォーカスします。社内のステークホルダーは、企業活動やプロジェクトの成功を望むだけでなく、自分自身が公平に扱われ、昇進などの成長機会を得ることを期待します。社外のステークホルダーも、クオリティの高い製品の受領や堅実なカスタマーサービスの体験、有益なパートナーシップの形成など、多様なメリットをプロジェクトから求めています。
顧客がステークホルダーであるという観点については、以下の記事で詳しく説明しています。
記事: 顧客管理: 新しい顧客を惹きつけ、満足度を維持する方法シェアホルダーとステークホルダーは、目標を達成するタイムラインも異なります。シェアホルダーは、企業の株を保有している期間に限ってその企業の共同所有者となるため、株価に影響を与える短期的な目標を重要視する傾向があります。つまり、シェアホルダーは、必要に応じて株を売却し、他の企業の株を購入することも簡単にできるため、組織の長期的な成功を必ずしも最優先とはしないこともあります。
対照的に、ステークホルダーは企業の長期的な目標に関心を持っています。短期的な経済パフォーマンスや株価の変動にそれほど影響されず、組織全体の健全な経営状況を望む傾向が強いです。たとえば、
従業員は、公平な待遇と成長機会が得られる企業で働き続けることを望んでいます。
消費者は、お気に入りの製品を引き続き購入することを望んでいます。
サプライヤーは、企業との良好な関係と信頼関係を維持し、引き続きその企業との取引から利益を得ることを望んでいます。
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これはビジネスアナリストの間で長年議論されているテーマです。企業はシェアホルダーの利益を最優先すべきか、もしくはすべてのステークホルダー (顧客、サプライヤー、従業員、地域社会、地域住民など) に利益を提供すべきか、主に 2 つの見解に分かれます。
シェアホルダー理論は、1960 年代にエコノミストのミルトン・フリードマン (Milton Friedman) 氏によって提唱されました。フリードマン氏は、企業経営者は主にシェアホルダーの利益最大化を目的に行動すべきであり、その範囲内で合法的に社会的責任 (従業員や顧客の扱い方など) を果たすべきだと主張しました。
つまり、企業のエグゼクティブは株主の代理人であり、株主の利益を最優先に考える義務があるという考え方です。
ステークホルダー理論は、1984 年に経営学の教授 R・エドワード・フリーマン (Dr. R. Edward Freeman) 氏によって提唱されました。フリーマン氏は、企業はシェアホルダーに限らず、すべてのステークホルダーの利益に配慮しながら富を築くべきだと説いています。彼は、ビジネスとその消費者、サプライヤー、従業員、投資家、地域のコミュニティはお互いにつながり合った関係にあると主張しています。以下がその例です。
お客様には、引き続き製品を購入していただけるよう、製品と企業に満足していただきたい。
従業員には、エネルギーを発揮し、創造力を発揮できる環境とモチベーションを維持してほしい。
投資家 (シェアホルダー) やビジネスパートナーには、企業の成長を通じて利益を享受してもらいたい。
シェアホルダーは企業にとって重要な存在ですが、プロジェクトリーダーやプログラムマネージャーは、ステークホルダー理論を優先するべきでしょう。
シェアホルダーは短期的な株価の動きに関心が強いため、短期の利益を追求しすぎると企業文化や顧客満足が損なわれるリスクがあります。
一方、ステークホルダー理論を重視すれば、従業員や顧客、パートナーに対して責任ある行動が可能です。プロジェクトの社内外ステークホルダーを大切にすることで、従業員のウェルビーイングや顧客満足度を高め、質の高い職場環境を作れます。意見が尊重される組織は、従業員のモチベーション向上にもつながります。
ある調査によれば、自分の意見が十分に考慮されていると感じる従業員はわずか15%にとどまっていますが、ステークホルダー理論を実践すれば、その割合を高め、持続可能な健全な関係構築が可能になります。つまり、クイックウィンを狙うのではなく、将来に向けての投資になるのです。
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前のセクションで述べたように、ステークホルダーは企業やプロジェクトの成功にとって非常に重要な存在です。そこで、彼らの期待や利害関係を的確に把握し、適切に対応していくための考え方として「ステークホルダーマネジメント」があります。
ステークホルダーマネジメントは、ステークホルダーを特定し、その影響力や関心の度合いを分析した上で、コミュニケーションや関係構築の計画を立てて実行するプロセスです。これにより、誤解や対立を防ぎ、プロジェクトや事業の円滑な進行を支援します。
また、ステークホルダーマネジメントの一環として、信頼関係をより深める取り組みが「ステークホルダーエンゲージメント」と呼ばれます。
プロジェクトが円滑に進むためには、組織 (チーム) とステークホルダー間の深い信頼関係が必要不可欠です。そのために行われる取り組みを「ステークホルダーエンゲージメント」といいます。その目的はステークホルダーの関心を正しく理解し、良好な関係性を構築することにあります。
具体的な例としては、株主に対する株主総会の開催、顧客向けのセミナー実施、地域社会へのボランティア活動、企業の社会的責任を果たすための CSR 活動などが挙げられます。最近では、SDGs への対応や、企業の持続可能性を重視した取り組みもステークホルダーエンゲージメントの重要な一環とされています。
企業はステークホルダーとの良好な関係を維持し、信頼を深めるためにさまざまな取り組みを行っています。具体的には以下のような方法が挙げられます。
企業は株主や顧客、地域社会に対して透明性の高い情報開示を行い、説明責任を果たすことが求められています。たとえば、決算報告書の公開や、CSR 報告書、サステナビリティレポートの発行などが挙げられます。これにより、ステークホルダーは企業の現状や課題を正しく理解できるようになります。
企業は顧客満足度調査や従業員アンケートなどを通じて、ステークホルダーの声を直接聞き、経営や事業改善に役立てています。こうしたフィードバックは、より良い製品やサービスの提供、働きやすい職場環境づくりに繋がります。
最近では、ステークホルダーとの連携を強化するために、Asana のようなプロジェクト管理ツールを活用する企業も増えています。
Asana を使うことで、関係者間のタスク管理や進捗共有がスムーズになり、コミュニケーションの透明性が高まります。これにより、プロジェクトの成功率を上げるとともに、ステークホルダーとの信頼関係構築にも貢献しています。
ステークホルダーとのコミュニケーションやタスク管理は、プロジェクトの成否を大きく左右します。Asana を活用すれば、関係者間の情報共有や進捗管理が簡単になり、チーム全体の連携がスムーズになります。今すぐ無料トライアルを試して、プロジェクト運営をより効率的に、より効果的に進めてみましょう。
無料で Asana を試すステークホルダーの意味と種類をまとめ、シェアホルダーとの違いを解説しました。ステークホルダーとは簡単に言えば「利害関係者」、シェアホルダーは「株主」でした。どちらも企業にとって重要な鍵を握る人々ですが、同義語ではないので注意が必要です。
多くの人々は、毎日ステークホルダーと一緒に仕事をしますが、企業のシェアホルダーとは滅多に顔を合わせません。ステークホルダーは仕事をこなし、プロジェクト目標を達成することに協力してくれるため、ステークホルダーとの関係を管理し、仕事をコーディネートし、常に情報を共有できる手段を設けることが重要になります。
プロジェクト管理ツールを使用すると、ステークホルダーの管理をシンプルに行えます。たとえば、Asana を使用すれば、タスクを作成し期日を明確にして割り当てる、作業を共有可能なプロジェクトに整理する、また自動的に作成されるステータス更新を送信するといったことが行えます。それができると、ステークホルダーが必要とする情報を、必要とされるときに提供できます。
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