ビジネス用語「ステークホルダー」。よく耳にする単語ですが、その意味を知っていますか?「ステークホルダーとは簡単に言うとどんな人なのか?」「シェアホルダーは誰なのか?」「両者の主な違いは?」など、疑問に思っている人もいるかもしれません。そこでこの記事では、ステークホルダーとは何か、その種類をまとめ、シェアホルダーとの違いを解説します。意思決定を行う際にはすべてのステークホルダーのニーズを考慮することが重要になりますが、その理由についてもまとめます。
更新: この記事は、ステークホルダーエンゲージメントに関する記述を含めて 2022年 10月に改訂されました。
ウォーレン・バフェット (Warren Buffett) 氏は 1942 年の春、わずか 11 歳のときに最初の株を購入しました。他の子供たちが野球をしたり、漫画を貸し借りしたりして遊ぶ中、バフェット氏は、当時 1 株 $38 であった CITGO 社の株を 6 株購入し、初めて企業のシェアホルダーとなったのです。
その後、投資界の大物へと成長する彼ですが、当時は小さな存在でした。CITGO 社の株を所有していても、11 歳の彼は、大きなプロジェクトチームの主要なステークホルダーではありませんでした。実際のところ、同社は彼の存在すら知らなかったでしょう。
バフェット氏がステークホルダーではなく、シェアホルダーであったというのはどういうことなのでしょう?この 2 つの用語は同じようなものに聞こえますが、実際には大きく異なる役割を指しています。この記事を参考に、正しい単語の使い方をマスターしましょう。
まずはステークホルダーの意味を確認しましょう。ビジネスシーンでよく聞かれる「ステークホルダー」とはどんな人なのでしょうか?ステークホルダー (stakeholder) は、プロジェクトに影響を与えたり、その影響を受けたりする立場にある人のことです。日本語では他にも「利害関係者」とも呼ばれます。
個人のプロジェクト協力者から企業経営者まで、さまざまな人たちがステークホルダーになりえます。組織に属しているとも限りません。たとえば、次に行うイベントでは、一緒に働く社外のエージェンシーがステークホルダーになるかもしれません。同様に、消費者も、その人の好みが製品に直接影響する場合はステークホルダーになる場合があります。
ステークホルダーとは、ビジネスやプロジェクトに関わるすべての人です。具体的には、経営者、従業員、顧客、取引先、金融機関、行政機関、株主などが挙げられます。
ステークホルダーは、プロジェクトマネジメントに関連して言及されることが多くあります。 なぜなら効果的なコラボレーションを行い仕事を完了させるには、プロジェクトに関わる人々、つまりステークホルダーが誰なのかを把握する必要があるためです。適切にステークホルダーを特定し円滑なコミュニケーションを進めることができれば、より多くのサポートとリソースが得られるでしょう。
Asana でチームのコラボレーションを向上主に 2 種類のステークホルダーが存在します。
企業と直接的な関係にある人を「社内のステークホルダー」と言います。チームメイトや他部門のパートナーなどがこれに該当します。企業に雇用されていることが多いですが、そうでない場合もあります。たとえば、企業の大株主が社員出ない場合にも、株価に影響を与えるプロジェクトの直接的な影響を受けるため、社内のステークホルダーに分類されるわけです。
企業との直接的な関わりを持たない人を「社外のステークホルダー」と言います。消費者や顧客、エンドユーザー、取引先などがこれに該当します。社外のステークホルダーは、組織に属さないものの、何らかの形でプロジェクトの影響を受ける立場にあります。たとえば、製造プロジェクトを強化する場合は、サプライヤーからリソースを追加してもらう必要が出てくるでしょう。
プロジェクトが円滑に進んでいくためには、組織 (チーム) とステークホルダー間の深い信頼関係が必要不可欠です。そのために行われる取り組みを「ステークホルダーエンゲージメント」といいます。その目的はステークホルダーの関心を理解し、良好な関係性を構築することにあります。たとえば、株主に対する株主総会の開催、顧客に対するセミナー開催、地域社会に対するボランティア活動、CSR 活動などが、ステークホルダーエンゲージメントの代表的な取り組みです。
ステークホルダーの意味を確認したところで、シェアホルダーの意味もチェックしましょう。シェアホルダー (株主) は、企業の株を所有する人を指します。株主には「ストックホルダー」という用語もありますが、シェアホルダーは企業経営を左右するような大株主のことを指します。株とは、組織の所有権の小さな一部です。つまり証券口座を開設し、企業の株を購入すると、実質的にはその企業を部分的に所有することになります。株を所有すると、正真正銘のシェアホルダーになります。
シェアホルダーとしては、投資額に対して最大の金銭的利益を確保したいものです。そうなると、企業の経営レベルでの業績に注目するでしょう。株価は、企業の業績が上がると上昇するからです。そして、株価が上昇すると、その株を売却して利益を得るチャンスが生まれます。
シェアホルダーになると、所有する株の種類によっては、配当を受けたり、合併や買収などに関する方針に投票したり、企業の取締役会のメンバーを選任したりできます。企業の普通株を所有する人なら誰でも投票できますが、その人の票がどれだけの影響力を持つかは、その人がどれだけ多くの株を所有しているかによります。つまり、大きな投資家は、企業の全体的な戦略計画に対して大きな影響力を持つということです。このポイントがステークホルダーと混同されやすい原因です。なぜなら、ビジネスやプロジェクトの結果が株価に影響する場合、シェアホルダーはプロジェクトのステークホルダーにもなり得るからです。
無料の企業目標テンプレート株主は、所有する株の種類により、普通株主もしくは優先株主に分類されます。どちらの株も一般的な証券口座を使って購入できますが、メリットは異なります。
普通株を所有する人を普通株主と言います。一般的に普通株は、長期的な利益率が高く、シェアホルダーに企業の部分的な所有権を付与します。つまり、企業の普通株の所有者なら、誰でもその企業の方針に投票したり、取締役会のメンバーを選任したりできます。しかし普通株主は企業が清算される場合、社債権者、優先株主、および他の債券保有者への完全な支払いが行われた後にしか資産の請求を行えないため、その分抱えるリスクが少し大きくなります。
優先株を所有する人を優先株主と言います。一般的に、優先株は、長期的な利益は劣るものの、シェアホルダーに対する年間の配当金を保証します。通常、優先株主は、企業の方針に投票したり、取締役員を選任したりはできないため、企業の将来について発言できません。ただし、優先株主は、企業が清算された場合に、普通株主よりも先に資産を請求できるため、抱えるリスクは低くなります。
前項で少し触れましたが、ステークホルダーとシェアホルダーというビジネス用語は混同されがちですが、実は大きく異なります。その違いについて、こちらで具体的に確認しましょう。
先述のとおり、ステークホルダーはプロジェクトの影響、すなわち「利害」を受ける立場にある人を指し、シェアホルダーは企業の株を所有する人を意味します。その他にも、両者は以下のような違いがあります。
シェアホルダーとステークホルダーは、優先事項が異なります。シェアホルダーは、投資額に対する最大の利益 (通常は配当金や株価の増価など) を得ることを狙っているため、企業に対して金銭的な興味を持っていると言えます。つまり、シェアホルダーは、全体的な利益や株価を増加させることを最優先しています。民間企業や自営業のシェアホルダーは、そうした企業の債務を負うこともあるため、金銭的なインセンティブがより高くなります。
一方のステークホルダーは金銭面をはじめ、さまざまな点にフォーカスします。社内のステークホルダーは、全体的な運営が良好に進むよう、企業活動やプロジェクトが成功することを期待するだけでなく、自分自身が公平な扱いを受け、自分の職務において昇進していくことを望みます。社外のステークホルダーも、クオリティの高い製品を受領したり、堅実なカスタマーサービスを体験したり、お互いに尊重し合える、有益なパートナーシップに参加したりするなど、さまざまなメリットをプロジェクトから期待します。
記事: 顧客管理: 新しい顧客を惹きつけ、満足度を維持する方法シェアホルダーとステークホルダーは、目標を達成するタイムラインも異なります。シェアホルダーは、企業の株を所有している期間に限ってその企業の共同所有者になれるため、その企業の株価に影響を与える短期目標を重要視することが一般的です。つまり、シェアホルダーは、その気になれば株を売却して、別の企業から株を購入することが簡単にできるため、組織の長期的な成功が最優先事項ではないということは珍しくありません。
対照的に、ステークホルダーは企業の長期目標により関心がある点で、シェアホルダーとは考え方が異なります。短期的な経済パフォーマンスや株価の変動はあまり重視しない傾向にあります。むしろ、ステークホルダーは、組織の経営状況全般が良好であることを望みます。たとえば、
従業員は、公平な扱いを受けられるだけでなく、成長の機会も得られる企業で働き続けることを望んでいます。
消費者は、お気に入りの製品を引き続き購入することを望んでいます。
サプライヤーは、企業との良好な関係と信頼関係を維持し、引き続きその企業との取引から利益を得ることを望んでいます。
これは、ビジネスアナリストたちの間で長年行われている論争です。企業は、シェアホルダーのために利益を上げることに集中するべきなのか、もしくはすべてのステークホルダー (顧客、サプライヤー、従業員、地域社会、地域住民など) にメリットを提供することに集中するべきなのかという論争は、主に 2 種類の見解に分けられます。
シェアホルダー理論は、1960 年代に、エコノミストのミルトン・フリードマン (Milton Friedman) 氏によって初めて紹介されました。フリードマン氏は、企業は主にシェアホルダーのために富を築くことに集中するべきだと提唱しています。彼は、社会的責任 (従業員や顧客の扱い方など) に関する意思決定は、企業のエグゼクティブではなく、シェアホルダーの責任だと主張しています。企業のエグゼクティブは、基本的にはシェアホルダーの従業員であるため、シェアホルダーがそうするべきと決定しない限り、社会的責任を果たす義務を負いません。
ステークホルダー理論は、1984 年に経営学の教授 R・エドワード・フリーマン (Dr. R. Edward Freeman) 氏によって初めて紹介されました。フリーマン氏は、企業はシェアホルダーに限らず、すべてのステークホルダーのために富を築くことに集中するべきだと提唱しています。彼は、ビジネスとその消費者、サプライヤー、従業員、投資家、地域のコミュニティはお互いにつながり合った関係にあると主張しています。以下がその例です。
お客様には、引き続き製品を購入していただけるよう、製品と企業に満足していただきたい。
従業員には、エネルギーを全力投球し、創造力を発揮できるよう、職場に満足し、モチベーションを維持して欲しい。
投資家を手放さずに、企業の成長の機会を増やせるよう、資本家やパートナー、シェアホルダーが利益を得られるようにしたい。
シェアホルダーは企業にとって重要な存在ですが、プロジェクトリーダーやプログラムマネージャーは、ステークホルダー理論を優先するべきでしょう。その理由は、シェアホルダーは企業の長期的な健全性よりも、株価に影響する短期目標に一番関心を持っているためです。短期間の成果や収益の増加を最優先すると、その過程において企業文化や取引関係、顧客の満足感を犠牲にしてしまう可能性があります。
一方でステークホルダー理論を優先すると、従業員やお客様、ビジネスパートナーに対して責任のある行動を取れます。目の前のプロジェクトのステークホルダー (社内と社外を含む) を優先すると、従業員のウェルビーイングとお客様の満足感の両方を促進できる、質の高い仕事環境を築くことができます。また、チームも自分の意見が考慮されていると感じることができれば、最高の仕事をして、プロジェクトの成功に貢献したいという気持ちが強まります。ある調査によると、組織が自分の意見を完全に考慮してくれていると感じる人は、全体のわずか 15% しかいません。しかし、ステークホルダー理論を活用すれば、その数字を高め、すべての従業員やパートナーと持続可能で健全な関係を築くことができます。つまり、クイックウィンを狙うのではなく、将来に投資するということです。
記事: 5 つの欲求を満たして従業員の満足度を高めるステークホルダーの意味と種類をまとめ、シェアホルダーとの違いを解説しました。ステークホルダーとは簡単に言えば「利害関係者」、シェアホルダーは「株主」でした。どちらも企業にとって重要な鍵を握る人々ですが、同義語ではないので注意が必要です。
多くの人々は、毎日ステークホルダーと一緒に仕事をしますが、企業のシェアホルダーとは滅多に顔を合わせません。ステークホルダーは仕事をこなし、プロジェクト目標を達成することに協力してくれるため、ステークホルダーとの関係を管理し、仕事をコーディネートし、常に情報を共有できる手段を設けることが重要になります。
プロジェクト管理ツールを使用すると、ステークホルダーの管理をシンプルに行えます。たとえば、Asana を使用すれば、タスクを作成し期日を明確にして割り当てる、作業を共有可能なプロジェクトに整理する、また自動的に作成されるステータス更新を送信するといったことが行えます。それができると、ステークホルダーが必要とする情報を、必要とされるときに提供できます。
Asana で仕事を自動化