大手企業で採用され、航空会社の経営危機も支えたアメーバ経営。しかし「その手法を聞いたことはあるけど……」「実際にはどのような経営手法かを知らない」「アメーバ経営は失敗すると聞いたことがある……」という担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、アメーバ経営とは何なのか、その目的やメリットを交えながら、アメーバ経営が失敗する理由とその事例について解説します。
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アメーバ経営とは、従業員を少数のメンバーに分けて細かな集団に細分化し、集団におけるそれぞれのリーダーが経営者の視点で企業活動を行う経営手法のことです。
企業が細分化され、経営体制がまるでアメーバのように広がる様子から「アメーバ経営」と呼ばれています。もともとは、京セラや現 KDDI の創設者である稲盛和夫氏の経営思想を形にした経営手法です。
アメーバ経営は、大きく以下のような目的があります。
従業員が全員で経営視点を持つ
部門別の独立採算制度を確立する
人材育成
アメーバ経営では、少人数に細分化されたチームメンバー全員が経営視点で主体的に業務へ臨みます。
つまり、チームの利益を最大化するためにはどうすればよいのかを、経営者視点で考えるのです。これにより、経営課題を明確化しやすくなります。また、細分化された部門は、部門別の独立採算制度を採用します。一方で、アメーバ経営では経営視点で業務を進めるため、経営を意識して活動できる人材の育成も可能です。
では、アメーバ経営にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、アメーバ経営の 3 つのメリットをみていきましょう。
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アメーバ経営では、少人数がチームごと、あるいは部門ごとに利益を追求するため、従業員が経営視点で業務を遂行しなければなりません。つまり、一人ひとりが経営者の視点に立って、利益追求をしながら業務を遂行するということです。これにより、従業員一人ひとりが自ずと経営の感覚を持ち、主体的で自立した活動を行うようになるのです。
利益の最大化を考えるということは、コストをおさえる方法も考えなければなりません。それは、それぞれのチームもしくは部門が、各自業務に必要な部材費用や人件費なども考慮するということなので、企業全体のコスト最小化につながります。
たとえば、システム開発をするチームの場合です。システムとして質の高い成果物だけを目指せばよいわけではありません。質の高い成果物を完成させる上で、いかに工数や人件費をおさえ、短期間で開発プロジェクトを完了させるかを意識して活動しなければならないのです。
たとえ質の高いシステムが完成しても、プロジェクト全体で損失が出てしまっては、経営視点で意識すべき営利活動とはいえないからです。
効率的に工数管理をする方法細分化されたチームおよび部門は、少人数で課題に取り組み、コミュニケーションを取りながら業務を遂行するため、課題解決のスピード向上につながります。
企業規模が大きくなるほど、トップダウンでの意思決定が遅くなります。早急に解決すべき課題の解決策を提示しても、複数の上長から承認されなければ動けないといった不具合があるのです。
しかし、少人数のチームならば、たとえトップダウンでも意思決定は速くなります。また、メンバーの一人ひとりが経営視点での課題解決を考えるため、スピードが重要であることを意識して素早い意思決定を行うでしょう。それぞれのチーム、部門の課題解決がスピードアップするので、ひいては企業全体の課題解決スピードも速くなるのです。
チーム内で効率的にコミュニケーションを取るには?アメーバ経営にはメリットがありますが、導入した企業では「失敗した」という声もあります。ここでは、アメーバ経営がなぜ失敗するのか、その理由をみていきましょう。
少人数のチームにて、従業員一人ひとりが経営視点で活動するということは、個々の利益責任も問われるということです。それは、従業員にとって大きなプレッシャーになるでしょう。
もちろん、利益責任を負うことでモチベーションを維持できる従業員もいますが、負担に感じる従業員もいます。人材の適材適所といった考え方が適用しにくい仕組みだともいえますので、全社的にアメーバ経営を取り入れると失敗の原因になることもあるのです。
従業員それぞれが経営視点で動かなければならないため、利益を追求することは当然です。しかし、成果物の品質などよりも利益の追求を優先してしまい、結果、利益追求のみが目的になってしまう可能性があります。
利益だけを追求すれば、製品品質の低下や、顧客要求に応えられないなどの弊害が起き、ひいては企業の経営に大きなダメージを与え、結果アメーバ経営が失敗する原因になってしまうのです。
アメーバ経営を取り入れるには、従業員の意識改革と採算制度の改定をしなければなりません。従業員が経営視点で活動をする意識を持つことも、業務に独立採算制度が取り入れられる業務負荷も、従業員の大きな負担になる可能性が高いでしょう。このようなハードルがアメーバ経営の定着化を鈍らせ、失敗の原因になる可能性もあるのです。
上述したように、アメーバ経営では、少人数のチームや部門による独立採算制度を導入しなければなりません。これにより、単純に「従業員の手間が増える」ことになります。
各自の業務に集中できていた環境から、収支計算をチームや部門ごとに行わなければならない環境への変化は、従業員にとって大きな負担です。
それでは最後に、アメーバ経営の失敗事例をみていきましょう。
国内外で音楽デバイス市場を席巻していたソニーは、アップルに覇権を奪われる形となりました。その原因のひとつが、ソニーが採用したアメーバ経営だといわれています。
アメーバ経営では、少人数でチームおよび部門が組まれるため、意思決定や課題解決が速くなります。一方、独立採算制度によって、各チームと各部門は同じ企業でありながら競争相手にもなるのです。
自社内での競争に勝つためには、利益を追求しながらも、優れたデバイスを製品化するために「こだわった機能」の搭載も欠かせません。すると、社内で各チームや部門が、利益責任を負いながら、こだわりの機能も追求するという競争が始まります。
とはいえ、やはり利益責任を負うというプレッシャーは、どうしても「利益追求」を第一に考えなくてはならなくなってしまうのです。そのため、製品開発は「こだわりの機能搭載」よりも「利益」が優先されていきます。
つまり、企業の思惑と従業員の方向性がずれ、「利益追求」が前面にでてしまったことが、アメーバ経営失敗の原因のひとつだといえるのではないでしょうか。
アメーバ経営は、多くの企業で採用されて効果を上げている経営手法である一方、失敗だったという企業も多くあります。従業員一人ひとりが経営視点を持ち、時間あたりの利益を最大化することやコストの最小化を期待できるなどのメリットもありますが、個々が利益追求をしなければならなかったり、独立採算という手間があったりと、企業規模や従業員によって向き不向きがあるのです。アメーバ経営の導入を検討している場合は、メリットとともに失敗する理由とその事例も踏まえて、慎重に検討しましょう。
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