従業員満足度とは、仕事、仕事体験、勤め先企業に対する従業員の幸福度を示すものです。この記事では、多くの従業員が職場で満足感を得るために必要とするものについて解説します。仕事の満足度を促進する職場環境を作ると、チームの士気が高まり、従業員体験が改善されます。
「汝の愛するものを仕事に選べ、そうすれば生涯一日たりとも働かなくてすむであろう」ということわざがあります。絶対にそうなるとは言えませんが、楽しい仕事を見つけるのは大切だということはわかります。ある調査では、幸福度の高い人は、生産性が 13% も高いという結果が出ていますが、意外なことではありません。幸福度の低い人が効率よく働くためには、自分の感情を捨てて働かなくてはいけません。
この記事では、多くの従業員が職場で満足感を得るために必要とするものについて解説します。少人数チームのリーダーからプロジェクトマネージャー、CEO まで、ここで紹介するヒントを活かしてチームの士気を高めれば、従業員の満足度アップに貢献できます。
人事部門では、仕事、仕事体験、勤め先企業に対する各従業員の幸福度を従業員満足度を使って示します。
マズローの欲求段階説として知られる、心理学のモチベーション理論を見ると、授業員の欲求をより深く理解できます。アメリカ人心理学者のアブラハム・マズロー氏は、人は欲求を満たすには 5 つのものが必要だと提唱しました。彼は、それらを次のように階層的に順位付けています。
食べ物、水、住まいといった生理的欲求
安全性
愛と所属
尊重
自己実現
従業員の欲求とはこの 5 つの基本的欲求から、さらに職場に焦点を当てて考えたものです。従業員が職場で大切にするものはそれぞれ異なりますが、この 5 つの基本要素は、満足している従業員がその満足度を維持するための基本条件となります。
マズローの階層と同じく、一番重要なのは一番下の欲求です。最初の欲求を満たすまでは、次の段階に進めません。たとえば、自分にふさわしいと思う収入を得られなければ、仕事に安心感を得るのは難しいでしょう。仕事に安心感を得られなければ、所属感も感じにくくなります。
報酬: 従業員は、この社会で生き残り、自分の職務において尊重されていると実感するには、職務相応の報酬を受ける必要があります。報酬には、従業員の給与に加え、自社株、社員特典といったその他のメリットも含まれます。この欲求は、他のすべての欲求を満たすための土台となるため、従業員はこの一番重要な欲求を満たさないと、他の欲求を満たすことができません。適切な報酬を受けられない従業員は、自尊心が低下したり、フラストレーションを感じたりするほか、自信を失ってしまう場合もあります。
安全: 適切な報酬の欲求を満たした授業員は、次に、自分の雇用主は信頼できる存在であるという安心感を欲するでしょう。いつでも職を失う可能性があると思っているような従業員は、仕事で充実感を得ることができません。仕事の安全性が保証されていないと、そのうち従業員と雇用主の間には不信感が生まれるかもしれません。
所属: 所属は、マズローの基本的欲求の 1 つです。従業員は、ありのままの自分で出勤できると感じられる必要があります。チームがリモートで働く場合も、オフィスで一緒に働く場合も、従業員は、マネージャーやチームメイトと有意義な関係を築くことができれば、職場での満足度をもっと強く感じることができます。社内のメンバーから孤立している従業員や仕事で支持されている実感を得られない従業員は、どうしても満足度が低くなってしまいます。
目的: 満足度の最も高い従業員は、仕事に目的意識を感じる従業員です。日々の作業がどのように会社の大きな目標に影響するのかを把握しているチームメンバーは、モチベーションが高まり、仕事に対する姿勢も一層前向きになる傾向にあります。目的意識を持てるかどうかは、物の見方次第です。仕事体験を適切に形作れば、従業員に仕事をする目的を与えることができます。
自己実現: 自己実現している従業員とは、自分の仕事に自信を持ち、限界を押し上げ、好奇心を持ち、質問をするほか、チームメンバーを支え、他部門と連携できる従業員です。チームメンバーに成長の機会を与え、新しいスキルを修得するよう働きかければ、チームメンバーがこのレベルの充実度を達成するきっかけを作れます。従業員は、自分の得意なことをしているとき、最高の気分になれます。
従業員満足度は、白黒がはっきりしたものではなく、さまざまな方法で評価できます。従業員満足度の改善に取り組むとき、それはチェックリストのようなはっきりしたものではなく、その度合いはさまざまであることを覚えておきましょう。たとえば、自分の職場にある程度の帰属意識は感じているものの、完全に満足できるレベルには達していない、というような場合もあります。
Asana でチームのコミュニケーションを改善チームメンバーは、自分の仕事体験を自分の欲求と照らし合わせて満足度を評価します。たとえば、Apollo Enterprises で 5 年間勤務している菊井 紗代さんが、これまでの体験を振り返るとします。彼女は、会社のレビューで自分の従業員体験を以下のように綴ります。
「Apollo Enterprises で勤務した 5 年間、私はオフィスの皆と良好な関係を築くことができました。職場はまるでコミュニティのように感じられるので、私は出勤するのが大好きです。
私はカスタマーサービスで働いています。自分の仕事には目的があると、心から感じています。私は、自分の仕事が得意ですし、この会社は、私が自分の役割を果たさないと、忠誠心の高いお客様を維持することができないと思います。この会社はこれからも常に私の役割を必要とするでしょう。ですから、私は職を失う心配をしていません。ですが、自分のスキルが他の従業員から認められていないと感じることはたまにあり、自信を失ってしまうことがあります。
私の仕事に対する一番の不満は、給与が不相応である点です。私が現在の職務に就いてからもう 5 年が経ちますが、昇給をいただける希望はまったくありません。低賃金であることだけを理由に、大好きなこの仕事を手放してよいものかを判断する必要があります。」
菊井さんの仕事は、完全な満足感を得るための基本的な欲求をほぼすべて満たしています。彼女は、帰属意識、目的意識、職の安定性を実感できていますし、自分の仕事が得意であることも認識しています。しかし、4 つの欲求が満たされているにもかかわらず、雇用主が彼女にふさわしい報酬を提供していないがために、彼女は転職してしまう可能性があります。
菊井さんのマネージャーは、彼女のレビューを基にカスタマーサービスチームに対する見方を少し変えてみるとよいかもしれません。別のスタッフを教育して、菊井さんの職務経験の域まで成長させるよりも、菊井さんに昇給を与えた方がコストを安く抑えることができるでしょう。菊井さんを失いたくなければ、彼女の価値を考慮する必要があります。
従業員を満足させることは、個人の生産性に需要なだけでなく、会社全体にとってもプラスとなります。満足している従業員は、会社に長く在籍するほか、従業員の定着率を維持できれば、間接費を抑え、収益性を高めることができます。
従業員満足度を高めるには、従業員の 5 つの欲求を考慮し、それを満たすための実行可能なステップを実行します。
従業員にキャリアアップの機会を与え、従業員の適切な報酬に対する欲求を満たします。チームメンバーが成長するペースはそれぞれ異なっても、昇進のチャンスは全員に与えられるべきです。
明確な成長路線を描き、関連する昇給を設定すれば、従業員は、自分が目指す報酬を手にするには、どのように特定の目標を達成していけばよいのかを理解できます。個人の成長路線以外にも、難しいプロジェクトや新しいスキルを習得するためのワークショップを提供して、従業員の成長をさらに後押ししてもよいでしょう。
成長路線は、マネージャーの成長路線だけでなく、一般的な役職の成長路線も提供するようにしましょう。 私たちは、マネージャーになることを収入アップと関連付けてしまいがちですが、誰もがマネージャーに向いているわけではありません。時として、優れたチームリーダーは、チームを別のかたちで支える一社員として活躍します。成長の道はたくさんあることを示すと、チームメンバーは、その会社での自分の将来を想像しやすくなります。
記事: リーダーシップとマネジメントの違いとは?透明性を持って従業員と接することは、信頼と尊重を築く最適な方法です。それは、ポジティブなことも、ネガティブなことも話し、従業員がそれぞれの役割をきちんと果たすのに必要な情報を与えるということです。
たとえば、多くの企業はコロナウイルスが猛威を振るう中、経済的に不安定な状況に陥りました。その結果、雇用主と従業員は職の安定性を失いました。そうした不安定な状況を隠さなかった雇用主は、従業員の信頼を得たことにより、従業員の満足度を維持できたことでしょう。
従業員に職を失う心配はないと安心させて、トラブルが発生したときにはそのことをしっかりと伝えておけば、何が起きても一緒に切り抜けようとする力強いチームを作り上げることができるでしょう。
従業員が一番幸せなのは、職場で帰属意識を感じるときです。そのためには、経歴などに関係なく、すべての従業員が歓迎されていると実感できるように、インクルージョンを重視する組織文化を築きます。
職場で自分らしくいることができれば、チームメンバーはもっと幸せになるだけでなく、会社の活動にもっと精力を注ぎ、もっと参加するようになります。これは、帰属意識を重んじる文化の構築に投資し、多様性とインクルージョンのプログラムを構築し、従業員に Employee Resource Groups (ERG) のようなプログラムを通じて、共感できる人たちとつながりを持つように働きかけることで実現できます。たとえば Asana では、子どもを持つ従業員が働きながら育児をこなす方法について話し合うための Slack チャンネルと月例会議を設けています。子どもを持つチームメンバーに同じような経験をしている他のメンバーとつながる機会を与えると、そのメンバーは帰属意識を持つことができます。
さらに、従業員が日々のタスクの外で仲良くなれるように、チームアクティビティを企画してみるのもよいでしょう。従業員は、一緒に働くメンバーとのつながりを感じることで、より安心して仕事ができるようになるはずです。
記事: コミュニケーションを改善し仲間意識を高める 45 のチームビルディングゲーム日々の仕事に集中していない従業員は、最高の成果を出すことができないでしょう。従業員は、無気力や燃え尽き症候群、またインポスター症候群などに見られる自己不信など、さまざまな理由で労働意欲を失ってしまいます。
従業員が目的意識を感じられるようにサポートすることは、従業員の満足度を向上させる最も有効な手段の 1 つです。日々の仕事がどのように会社の大きな目標の達成に貢献するのかチームメンバーが理解できるようにすることは、チームリーダーの仕事です。
これは、オンボーディングプロセスの最中から始まります。オンボーディングを使って新しいチームメンバーをワクワクさせ、そのメンバーの仕事が大切な理由を示します。そうしてつけた勢いは、以下を行って維持します。
日々の仕事を会社の目標に結び付ける
業務の優先順位を明確にする
従業員の成果を評価する
健康的な仕事習慣を促進する
チームメンバーにフィードバックを求める
チームコラボレーションを開始する
従業員満足度を向上させる最後のステップでは、意見を共有する機会を与えることにより、従業員がもっと自信を持てるようになることを支援します。マネージャーミーティングに参加させたり、会社の意思決定についてフィードバックを求めたり、プロジェクトに関する指導を求めたりすることをおすすめします。
ボトムアップの意思決定を促進すると、チーム構造の下層部にいるメンバーにも同等にプロジェクトの成功に貢献するチャンスを与えることができます。自分の提案したアイデアにあなたが注目すると、チームメンバーは自分が評価されていると感じることができます。
記事: モチベーションを高め、コラボレーションを促すチームワークの名言集 100 選従業員満足度を改善するためのアクションを実行することは、満足度を改善する上で重要な 2 つの要素のうちの 1 つでしかありません。現在のやり方が機能しているかどうかを知るには、従業員満足度を評価する必要があります。従業員は満足しているでしょうか?それとも、満足度を上げるために変更を加える必要があるでしょうか?
従業員満足度を評価する方法はたくさんあります。最も正確なインサイトを得るには、複数の手段を使います。以下の評価可能なアイデアを考慮してみましょう。
従業員エンゲージメント調査: 従業員エンゲージメント調査を行うことで、授業員が何に満足していて、何に不満を感じているかに関する基本的な情報が得られます。質問の内容を関心のある領域に合わせて調整し、従業員の反応を調べます。
1on1 ミーティング: チームメンバーと 1 対 1 のミーティングを開き、各メンバーの仕事に対する気持ちを評価し、直面している問題があれば、それについて話し合います。
従業員満足度 (ESI): ESI は、従業員の満足度を 10 段階で評価します。従業員は、職場にどの程度満足しているか、職場がどの程度期待に沿っているか、職場がどの程度理想に近いかなどについて答えます。この情報を、チームや会社規模で実施する変更や改善に役立てることができます。
従業員の離職率: 従業員の離職率とは、特定の期間内に過去の従業員が退社した割合を示すものです。離職率には、本人の意思による場合とそうでない場合が含まれます。この割合を使って、退職した従業員は不満を抱えていたのかどうか、および何を不満に思っていたのかを評価します。
意見箱: 従業員によっては、人前で自分の不安や意見を述べることに抵抗を感じる人もいるでしょう。意見箱を使用すると、従業員が自分の名前を伏せてアドバイスを提供する手段となるほか、正直なフィードバックも得やすくなります。
レビューとフィードバック: レビューや従業員フィードバックの実施を定期的に求めると、従業員満足度に関するデータを増やしていくことができます。そうしたレビューやフィードバックで得られる情報は、会社の改善や成長に活かすことができます。
職場で感じる充実感とは、従業員によって異なるため、評価指標がたくさんあればあるほど、収集したデータは各従業員の満足度をより的確に示します。収集したデータにネガティブな結果があれば、その情報を使って問題のある領域 (オンボーディング、社内文化、キャリア開発など) に焦点を合わせることができます。
どの職場でも、一番大切なのは従業員の存在です。高いパフォーマンスを発揮する従業員がいないと、企業はよい結果を出すことも、利益を出すこともできません。チームに満足度の高い従業員が揃っていれば、オペレーション全体を成功に導くことができます。
チームコミュニケーションソフトウェアがあれば、チームはいつでも、世界中のどこにいても、コラボレーションを行えます。ミーティングをセットアップし、フィードバックのやり取りを行い、何百ものアプリを連携させて、すぐに仕事に取りかかりましょう。満足度の高いチームは、生産性の高いチームです。適切なツールを使えば、簡単に満足度を向上させることができます。
Asana でチームのコミュニケーションを改善