サービスリクエスト管理を行うことで、チームはサービスリクエストへの対応方法やタイミングをコントロールできます。サービスリクエスト管理の 5 ステップとベストプラクティスでサービスリクエスト管理を実現し、リクエストの波にのまれることなくチームの時間を積極的に管理しましょう。
多くの組織にとって、サービスチームは縁の下の力持ち的存在です。他のチームを回すために欠かせない IT サポートや人事支援などを提供するため、いつも需要が高くなります。
組織からの需要が高いと、一歩引いて計画を立てるような時間もなく、次々と来るリクエストの球に反応して打ち返すだけになりがちです。しかし、そうならないための対策法は存在します。
サービスリクエストとは、サポートを求める正式なリクエストです。社員や顧客、ベンダーなどが IT チームや人事チームなどのサービスチームにこういったリクエストを送ります。サービスチームはサポートの対象となる範囲内で、事前に定められたサービスを提供します。たとえば、社員が IT チームに送るサービスリクエストの例として以下のようなものがあります。
新しい機材やソフトウェアのリクエスト
パスワードリセットのリクエスト
アクセス権のリクエスト
サービスリクエストは多くの IT チームで活用されています。ただし、以下の例のように IT チーム以外でも使用できます。
有給休暇のリクエスト
出張旅行のリクエスト
コンテンツ制作のリクエスト
発注書の承認リクエスト
採用リクエスト
新入社員オンボーディングのリクエスト
トレーニングのリクエスト
サービスリクエスト管理とは、サービスリクエストを受け付け、文書化し、実行するプロセスのことです。IT や人事、総務など、多くのリクエストを受けるサービスチームにとって、すべてのリクエストに対応して見落としのないようにするために、サービスリクエスト管理は欠かせません。
サービスリクエスト管理のプロセスを事前に確立しておくと、リクエストの量が多くても優れたサービスを提供できます。プロセスの確立には、こんなメリットがあります。
リクエストをスピーディに文書化、トリアージし、適切なチームメンバーに割り当てられる。
サービスリクエストのフォローアップを行うことで、満足のいくサポートが得られたことを確認できる。
サービスカタログを用意することで、利用できるサービスを明確にし、リクエストを標準化できる。
提出から完了までサービスリクエストを追跡し、現在何が行われていて対応にどのくらいの時間がかかるのか把握できる。
チームによるサービスリクエスト対応を管理し、最適化できる。
チームのキャパシティを守り、リクエストの波にのまれずに済む。
サービスリクエスト管理は、IT プログラムの実装、改善、管理をサポートする一連の IT 運用プロセスを示す IT サービスマネジメント (ITSM) の本質です。ITSM の中でも、IT インフラストラクチャライブラリ (ITIL) フレームワークではサービスリクエスト管理に関するより詳しいガイドラインやベストプラクティスが提供されています。
しかし、IT 以外のチームでもサービスリクエスト管理の活用は可能です。どんなリクエストであれ日常的に対応しているなら、サービスリクエスト管理が役立ちます。
サービスリクエスト管理とインシデント管理は密接に関連している場合が多いですが、この 2 つは別々のプロセスです。インシデント管理はソフトウェアのバグ、サイバーセキュリティの脅威、システムの不具合などの予期しない問題を発見し、対応するためのプロセスです。一般的にインシデントはビジネスプロセスを中断させたり、収益に影響を与えたり、チームにとって大きな障害となったりするため、サービスリクエストよりも優先度が高くなります。
一方、サービスリクエストは会社の通常のワークフローの一部であり、障害を取り除くというよりは、チームがサポートを受けられる窓口を提供し、事前に定められたリストの中からサービスを選んでもらうような形になります。サービスリクエストでも、プロセスの滞りを避けるためにリクエストを管理し、追跡する必要があることに変わりはありませんが、インシデントと比べてサービスリクエスト対応のスケジュールや割り当てには少し時間の余裕があります。
記事: 調達管理とその重要性
特に、すでに多くのリクエストを抱えていて、これまでリクエストプロセスのシステムを作ったことがないという場合は、サービスリクエスト管理は大変なことのように感じられるかもしれません。そこで、サービスリクエスト管理のプロセスを簡単な 5 ステップに分けてみました。
社員がサービスリクエストを伝えるところからプロセスは始まります。会社の規模やニーズによって伝達手段は異なります。小規模な会社であればメールや電話、オンラインフォームで連絡することがあるでしょう。大規模な会社であればヘルプデスクやサービスデスク、従業員向けヘルプポータルなど、しっかりとしたプラットフォームで伝達するのが一般的です。
次は、サービスチームがリクエストを審査して以下を判断します。
リクエストの緊急度—たとえば、パソコンがロックされて使えなくなってしまったなどという場合は、パスワードリセットのリクエストの緊急度が高まります。
リクエストの完了に必要なリソースやツール—たとえば、ブログ記事のリクエストの場合、必要なリソースとしてライティング、デザイン、パブリッシングなどが考えられます。
上司の承認や他のチームによる確認の必要性—たとえば、社員が新しいコンピューターをリクエストしているという場合は、まず承認プロセスを通す必要があるかもしれません。
十分な背景情報が得られたら、リクエストの実行へと進みます。リクエストをチームメンバーに割り当て、予定完了日を設定することも、この実行に含まれます。チームメンバーがリクエスト内容に取り組む中で、さらにリクエストの詳細が必要になることもあります。
チームがリクエスト内容を完了したら、リクエスト主にそのことを知らせ、対応内容が十分であるかどうかを確認しましょう。たとえば、パスワードのリセットを行った場合、社員がリセット後のパスワードでアカウントにログインできるかどうかを確認すべきでしょう。確認が完了したら、リクエストチケットはクローズしてアーカイブしましょう。
チームがリクエストに対応したからといって、誰もがその結果に満足できるとは限りません。フィードバックを求めることは、チームがポジティブな顧客体験を提供できていることを確認し、サービスリクエスト管理プロセスに改善できる点がないか探す上で重要なステップです。
記事: チェンジマネジメントとは?成功するチェンジマネジメントプロセスを構築する 6 つのステップサービスリクエスト管理が初めての方や、現行のプロセスを改善したいという方のために、参考としてベストプラクティスをいくつかご紹介します。
すべてのサービスリクエストは一か所に集めて管理して、誤って重複する内容のリクエストに取り組んでしまうことのないように、また社員が見つけやすくわかりやすい場所でサポートを求められるようにしましょう。例として、プロジェクト管理ツールでリクエストプロセスを一元管理すると、すべてのリクエストがそれぞれのステータス、タイムライン、担当者とあわせて一か所で俯瞰的に確認できます。
自分で問題を解決できる社員が増えるほど、チームの仕事は減ります。たとえば、ナレッジベースやセルフサービス型のポータルを作成して対処法などの記事を掲載すれば、チケットを未然に減らすことができます。また、上司からの承認や他チームへの通知など、サービスリクエストを送る前に従うべき手順をすべてまとめた記事を作成してもよいでしょう。リクエストに必要な情報がすべて揃うように、リクエストの受け付けフォームに必要な項目をセットアップするのも、その後のやり取りを最小限にとどめるのに効果的です。
シンプルな繰り返しのタスクを自動化すると、チームの時間を節約でき、ヒューマンエラーも削減できます。プロジェクト管理ツールでリクエストの受け付けと管理を行えば、オートメーションをセットアップしてリクエスト管理のワークフローを合理化できます。たとえば、Asana を使えば社員がサービスリクエストフォームを送信したときに、自動で新規タスクを作成し、割り当てられます。
仕事リクエスト用の無料テンプレート
多くのリクエストを管理するチームにとって、過去の記録は重要です。これまでのサービスリクエストをすべて文書化しておくことで、仕事の見落としもなくなります。リクエストの種類や完了までのタイムライン、担当者、リクエスト者、実行したアクション、サービス水準合意 (SLA) などの重要な情報はすべて記録しておきましょう。こういった情報があることでリクエスト完了までにかかる平均的な時間や、各リクエストの情報を共有しているステークホルダーの数などのデータが確認しやすくなり、プロセスの改善に役立ちます。
リクエストそのものの文書化に加え、プロセスのドキュメンテーションを最新に保つことも重要です。プロセスを常に最新の状態にしておくことで、チームメンバーはプロセスに従うための情報を得ることができ、サービスリクエストの対応で必要となるすべてのステップを完了できます。
よいサービスリクエスト管理プロセスを作るには、改善状況を継続的にトラッキングすることも重要です。重要業績評価指標とも呼ばれる、プログラムのパフォーマンスを測定する指標を定め、定期的にその指標を報告しましょう。たとえば、リクエスト完了までの平均時間や、顧客満足度などが報告内容として考えられます。
サービスチームは組織の中でも忙しく、需要の高いチームです。そして、日々の仕事は他のチームと比べ、たとえばビッグプロジェクトの立ち上げなどと比べると目立つものではないかもしれませんが、そういった他のチームのプロジェクトをスムーズに進めるためには欠かせないチームです。チームを縁の下の力持ちにはせず、そのすばらしい功績を会社全体のコミュニティで共有するなどして日々の努力を公の場で称えるようにしましょう。
仕事の優先順位付けをサポートし、働き過ぎず、リクエストの波にのまれないスケジュールを組むことも同様に重要です。具体的には他のメンバーへの仕事の委任や、期日の調整、タスクの優先度を下げる、タスクの完了予定日などに関するステークホルダーの認識の管理などがサポート内容として挙げられます。チームの高い士気を維持し、その後の燃え尽き症候群を防ぐためには、チームのキャパシティを確保することが不可欠です。
リソース管理テンプレートを作成効果的なサービスリクエスト管理プロセスがあると、サービスリクエストへの対応方法やタイミングをうまく管理できます。つまり、受動的な姿勢も計画的なものへと変わり、リクエストの波にのまれることなくチームの時間を積極的に管理できるようになります。
Asana のようなプロジェクト管理ツールを使えば、サービスリクエスト管理プロセスの無駄を減らせます。リクエスト送信用のフォームを作成し、すべてのリクエストを一か所で管理し、オートメーションで手作業を最小限にして、チームが大事な仕事だけに集中できるようにしましょう。
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