要件収集とは、プロジェクトの具体的な要件を最初から最後まで特定するプロセスのことです。このプロセスはプロジェクトの立ち上げフェーズに行われますが、プロジェクト要件の管理はプロジェクトタイムライン全体を通して行います。この記事では、要件収集の概要と、丁寧な要件収集がプロジェクトの成功へつながる理由をご説明します。
要件収集に説明など必要ないと思われるかもしれません。しかしその重要性は軽視されがちです。運動前のストレッチや寝る前の歯磨きのように、簡単でありながら軽視されやすいタスクなのです。
しかしこういった単純なタスクを軽視してしまうとケガや虫歯、つまりプロジェクト管理においてはプロジェクトのリスクが発生します。
この記事では、要件収集プロセスの概要と、丁寧な要件収集がプロジェクトの成功へとつながる理由をご説明します。
要件収集とは、プロジェクトの具体的な要件を最初から最後まで特定するプロセスのことです。このプロセスはプロジェクトの立ち上げフェーズに行われますが、プロジェクト要件の管理はプロジェクトタイムライン全体を通して行います。
要件収集は通常、プロジェクトの要旨の作成時やキックオフミーティングの際に行われます。
たとえば、このような疑問点に基づいて行われます。
プロジェクトのスケジュールの長さはどのくらいか?
誰がプロジェクトに関わるのか?
どんなリスクが考えられるか?
要件収集は決して複雑な作業ではありませんが、どのプロジェクト計画においても重要となる作業です。
Asana のプロジェクトマネジメント機能を試す次の 6 つのステップで要件収集を行いましょう。すべてのステップが完了する頃には、その後のプロジェクト管理フェーズを進めるのに必要なリソースがまとめられた、包括的な要件定義書が出来上がっているはずです。
記事: ビジネス要件定義書のテンプレートの 7 つの重要要素 (使用例付き)要件収集の最初のステップは、プロジェクトの役割の割り当てです。このステップで、プロジェクト関係者を特定します。
プロジェクト関係者 (ステークホルダー) とは、内部のメンバーか外部のパートナーかどうかにかかわらず、プロジェクトにリソースを割くすべての人のことを指します。たとえば、顧客は外部の関係者であり、部長や役員は内部の関係者です。最初に役割を割り当てることで、後で誰にプロジェクトスコープを確認してもらえばいいのか、特定することができます。
他の役割として、プロジェクトマネージャー、プロジェクト管理者 (アドミニストレーター)、デザイナー、製品テスター、開発者などがあります。こういった人々は、プロジェクト目標の達成に必要な要件やリソースの特定を助けてくれます。
さっさとプロジェクトに取りかかって、必要だとわかっているものをすべてリストアップしたい気持ちはわかりますが、それがよくない結果につながることもあります。ペースを落として、しっかりとプロセスに従うことで、プロジェクトのリスクを回避できる可能性が高まります。
プロジェクト関係者を特定したら、次はその関係者と会ってプロジェクトに何を望んでいるのかを把握します。プロジェクト関係者の期待内容を把握することは重要です。結局のところ、プロジェクトの成果物というのはこの関係者のために作っているものだからです。
たとえば、こんな質問をしてみましょう。
このプロジェクトにおけるあなたの目標は何ですか?
このプロジェクトの成功の鍵は何だと思いますか?
このプロジェクトの懸念点は何ですか?
この製品やサービスにどんな新しいものを求めていますか?
このプロジェクトで変更したほうがいい点はありますか?
そもそも、プロジェクトに取り組むのは、プロジェクト関係者のためです。関係者に質問をして、要件リストの作成に役立てましょう。
ステップ 3 は、ステップ 2 と同時に行います。関係者に質問し、情報を集めます。目標はできる限りすべてを記録し、プロジェクトを始めるのに必要な情報をすべて確保することです。
情報収集と記録には、プロジェクト管理ツールを使いましょう。プロジェクト管理ツールなら、プロジェクト計画、プロジェクト要件、プロジェクトでのやり取りをすべて一か所にまとめられます。文書化する内容の例としては、以下のようなものがあります。
質問に対する関係者の回答
関係者の質問
関係者の要求
関係者のコメント
質問中に出てきた疑問点やコメント
一言一句すべてを記録する必要はありませんが、できるだけ文書化しておくことですべての関係者の意見を確認できるため、要件管理に役立ちます。
情報の取り込みプロセスが完了したので、今度はその情報に基づいて要件管理計画を作成します。
要件収集プロセスで質問した内容を振り返り、その回答に基づいて以下のような要件の目標を立てましょう。
プロジェクトスケジュールの長さ: ガントチャートでプロジェクトのタイムラインを計画し、それを使ってプロジェクトのマイルストーンに基づくプロジェクト要件を可視化できます。プロジェクト全体を通して必要な要件もありますが、特定のフェーズでのみ必要となるものもあります。たとえば、チームメンバーの人件費はプロジェクト全体を通して必要ですが、プロジェクトタイムラインの最終段階でだけ特定の資料が必要になるというような場合があります。
プロジェクトに関わる人々: 各ステップの実行に必要なデザイナー、開発者、マネージャーの数や、プロジェクトに関わる具体的なメンバーを特定します。必要なチームメンバーが集まらなければ時間通りにプロジェクトを完了することはできないので、メンバーもプロジェクト要件に含まれます。
プロジェクトのリスク: プロジェクト要件を定義するうえで、プロジェクトのリスクを把握しておくことは重要です。リスク登録簿を使って関係者のフィードバック、スケジュールの遅延、予算不足などのリスクの優先度を決定し、そういったリスクを防ぐ方法を話し合うブレインストーミングセッションを予定しましょう。
SMART な目標と同様、プロジェクト要件は実行可能、測定可能、数値化可能である必要があります。プロジェクトの予算、タイムライン、必要なリソース、チームなどを書き出すときは、できるだけ詳細に書き出すようにしましょう。
プロジェクト要件が形になったら、関係者の承認を得てユーザーのニーズを満たしていることを確認しましょう。明確なコミュニケーションを促すことで関係者は最初からプロジェクトの範囲を把握でき、スコープクリープも防げます。承認が得られたら、今度はリソースの取得やチームの編成などの実施計画を進めましょう。
プロセスの最後となるのがプロジェクトの進捗状況のモニタリングです。プロジェクト管理ソフトウェアを使って、プロジェクト期間中もプロジェクトの予算やその他の要件の状況を確認しましょう。プロジェクト管理ソフトウェアの利点は、プロジェクトの変更点をリアルタイムで確認でき、問題が発生したらすぐにアクションを起こせる点です。
要件収集の基本的な手段は関係者に意見を求めることですが、関係者がプロジェクトにとっての最適解を判断できないこともあります。そういった場合はプロジェクトの要件が何であるかを理解するために必要な情報を、自分で集めなければなりません。
プロジェクトライフサイクルへ向けて万全な準備を整えるために、以下の調査テクニックを活用しましょう。
アンケート調査: 関係者全員に同じ質問をする必要がある場合は、アンケート調査が有効です。事前に関係者とアンケートを共有して、プロジェクト要件に関する質問に答えるための時間を与え、書き忘れがないようにしましょう。アンケート調査は要件収集に役立つ手段ですが、忙しくて回答できないような経営陣の関係者に対してはあまり有効とはいえません。
ユースケースシナリオ: ユースケースシナリオとは、プロジェクト実行の流れを説明した文書です。プロジェクトに関わるメンバーや、期待されている作業内容、プロジェクト目標達成までのステップなどの情報が含まれます。ユースケースシナリオを共有することで関係者はプロジェクトロードマップと予定されている成果物を明確に把握でき、その上でユースケースの内容が期待している内容と合っていない場合は意見を出すことができます。
マインドマップ: マインドマップとはブレインストーミングを視覚化したものであり、特に必要なプロジェクト要件を特定する際に役立ちます。マインドマップの中心に一番のプロジェクト目標を置き、そこから枝分かれしていく形で必要なもののカテゴリを加えていきます。そこからさらに分岐を続けることで、より詳細な要件を書き出し、最終的にはすべてのプロジェクト要件を把握できます。
プロトタイプ作成: 自分がプロジェクトに何を求めているのかプロジェクト関係者がよく理解していない場合は、関係者に質問してもあまりよい結果が得られないかもしれません。その場合はプロトタイプを作成して、成果物の例を関係者に示しましょう。そうすることで関係者の気に入るものや気に入らないものが把握でき、その情報をもとに、プロジェクト始動に必要な具体的な要件を特定できます。
上記のどのテクニックもあまり適さないと考えられるような場合は、アイデアボードやフォーカスグループ、ユーザーストーリー、意思決定マトリクスのテンプレートなど、他のオンラインツールを使った情報収集も検討してみましょう。
要件収集はプロジェクトに役立つものというよりは、プロジェクトに不可欠なものです。過去に失敗したプロジェクトがうまくいかなかった理由を思い出してみてください。リソースが不足してしまった、予算を超えてしまった、プロジェクト完了にかかる時間を短く見積ってしまった、これらはすべて、要件収集プロセスに従えば防げるプロジェクトリスクです。
要件収集には以下をはじめとしたさまざまなメリットがあります。
関係者の満足度が上がる: 効果的な要件収集プロセスに従うことで、よりターゲットを絞ったプロジェクト成果物が完成し、関係者の満足度が高まります。プロジェクトに期待できる内容が把握できるのも関係者にとってはうれしいことです。
プロジェクトの成功率が上がる: 要件収集を行うことで、プロジェクトの成功率も上がります。プロジェクトへ向けた準備が整っているほど、プロジェクトリスクの発生確率が下がるためです。
プロジェクトのコストが下がる: プロジェクトリスクの発生はプロジェクトコストの増加にもつながります。リスクを避けることで、コストの削減にもなり、プロジェクトを予算内で進められます。当然プロジェクトに必要以上のお金はかけたくないので、これは要件収集の大きなメリットといえるでしょう。
要件収集はプロジェクト計画の重要な部分です。関係者に質問する場合も、別の調査手段を使ってプロジェクト要件を書き出す場合も、プロジェクト管理ソフトウェアならすべての情報を集めてシームレスに次の段階へと移ることができるので非常に便利です。
プロジェクト関係者もチームメンバーもアクセスできる状態であれば、プロジェクトの最初から最後までコミュニケーションやコラボレーションが可能になり、プロジェクト失敗の可能性をさらに減らすことができます。
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