人に何かを購入してもらうには、まず初めに、それに関する情報を伝える必要があります。単純に聞こえますが、それこそが、商品の認知度を高め、それを購入すべきだと顧客に納得させるという、あらゆるプロモーション戦略の基本的な原則となります。この記事では、12 種類のプロモーション戦略をご紹介し、独自の効果的な戦略を作成するためのベストプラクティスについて説明します。
2008年の大晦日、Red Bull 社は、バイクスタントパフォーマーの Robbie Maddison 氏に、オートバイをふかし、猛烈な勢いで急傾斜から宙に飛び上がり、10 階建ての凱旋門 (のレプリカ) の上に着地するというスタントの報酬金として 2 億円をオファーしました。彼は見事にスタントを成功させ、Red Bull 社は可能性の限界に挑むブランドとしての評判を固めました。現在、同社は、エナジードリンクメーカーの域を超え、エクストリームスポーツの中心的存在として、アスリートにインスピレーションを与えています。
人々が Red Bull のドリンクを選ぶ理由は、その味やエネルギーだけではありません。同社は独特なプロモーション戦略を展開するため、人々は、有名で、流行の先端を歩み、壮大なことに関わる Red Bull ブランドを好むのです。
プロモーション戦略とは、商品の需要を生み出す、または高める計画のことで、商品の認知度を高め、消費者の購買意欲をかき立てるのに使う戦術を定義するものです。
プロモーション戦略の目標は、潜在顧客に商品を紹介し、それを購入するよう説得することです。バイヤージャーニー、つまり、顧客がニーズに気付き、特定の商品をソリューションとして考慮し、購入を決定するまでの過程を進めていくというものです。
マーケティング戦略は、どのようにマーケティング活動を行い、商品を販売するかを決定する、大規模で長期的なものです。効果的なマーケティング計画には、プロダクト、プライス、プレース、プロモーションで構成される完全な「マーケティングミックス (4P)」など、商品のプロモーションに使用する戦術がすべて網羅されます。プロモーション戦略は、マーケティングミックスの一つの主要要素であり、マーケティング戦略の一部にすぎません。
以下は、マーケティングの 4P としても知られる、マーケティングミックスの構成要素です。
商品 (Product): 販売するアイテム。
価格 (Price): 利益を生み出すために請求する商品の金額。
場所 (Place): ターゲットオーディエンスにリーチできる商品の販売場所。
宣伝 (Promotion): 商品の需要を生み出し、顧客をマーケティングファネルの各段階へと導く手段。
マーケティングミックスの 4 つ目の P である宣伝 (Promotion) がプロモーション戦略となります。
記事: マーケティングと広告の違いとは?
バイヤージャーニーは、ファネル (漏斗) を 3 つのセクション (上層、中層、下層) に分割したものとして可視化される場合がよくあります。顧客は、ファネル上層からジャーニーを開始して、下層に到達した時点で商品の購入を決定します。効果的なプロモーション戦略では、マーケティングファネルの各セクションに、顧客にアピールするためのさまざまな戦術が含まれます。
以下に、マーケティングファネルの詳細と各セクションのプロモーション戦略の例を紹介します。
ファネル上層にいる顧客は、解決したい問題を把握しており、その解決策を探しています。顧客はまだ、あなたの商品の存在を知らない可能性があるため、この段階でのプロモーション戦略は、顧客の注目をつかみ、あなたの会社のブランド、製品、商品に関する認知度を高めるものにするとよいでしょう。
プロモーション戦略の例: テレビ広告、イベントのスポンサーシップ、コンテンツマーケティング。
ファネル中層では、顧客はあなたの商品と他の選択肢を比較します。顧客をファネルから失わないようにするには、自分の商品が競合他社の商品とは異なる点を示し、自分の商品が最適な選択肢であると顧客を説得しなくてはいけません。ファネル中層におけるプロモーション戦略は、感情的なつながりを生み出し、あなたの商品が顧客の抱える問題を解決する具体的な方法を示すものでなくてはいけません。
プロモーション戦略の例: 顧客によるレビュー、無料サンプル、ケーススタディ。
記事: 競合分析の方法とその実例顧客は、ファネル下層で、商品を購入するかどうかを決定します。ファネル下層の顧客をターゲットにする場合、プロモーション戦略はアクションを起こすことを促すものでなくてはいけません。
プロモーション戦略の例: 特別オファー、メールによるオファー、柔軟な返品ポリシー。
商品を宣伝する方法はたくさんあります。アイデアを探している方のために、12 種類のプロモーション戦略を用意しましたので、ぜひご覧ください。
プロモーションの種類として、真っ先に頭に浮かぶことが多いのが有料広告です。このわかりやすい戦略では、ターゲット市場の関心をつかめるよう、お金を払うことによって、広告を特定の場所に特定のタイミングで表示します。ブランドの認知度を高め、自分のブランドについて聞いたことがないという人たちにブランドを紹介するのにとても便利な手段です。
以下は、有料広告の例です。
テレビ広告
ラジオ広告
新聞広告や雑誌広告
掲示板
オンライン広告 (Google や SNS の広告など)
コンテンツマーケティングは、オーディエンスの関心を集め、オーディエンスを維持することを目的に、価値のあるコンテンツを配布することにフォーカスした一般的なデジタルプロモーション戦略の一種です。コンテンツマーケティングは、顧客の問題解決に直結する便利なコンテンツに自分のブランドを関連づけることによって、徐々に信頼を築き、最終的には顧客に商品を購入するよう促すことが狙いです。コンテンツマーケティングは、どの企業にとっても非常に便利なプロモーションツールですが、B2B や SaaS 企業などセールスサイクルの長い企業には特別な効果を発揮します。そうした企業では、バイヤーが適切な情報に基づいて購入を決定するためのカスタマーエデュケーションを十分に提供できます。
コンテンツマーケティングのやり方は、以下をはじめ、多岐にわたります。
ブログ記事
動画
SNS 投稿
メールマガジン
ポッドキャスト
ホワイトペーパーまたはレポート
SEO (検索エンジン最適化) を改善するために作成されたコンテンツ
スポンサーシップでは、企業をイベントやテレビ番組、チャリティー、セレブといった、他のブランドと連携させます。たとえば、Pepsi は毎回スーパーボールのスポンサーを務める一方で、Red Bull は、NASCAR やありとあらゆるエクストリームスポーツのアスリートのスポンサーとなっています。最近では、Instagram や Youtube といった SNS プラットフォームを通じて有名になった人たちと提携する、SNS インフルエンサーマーケティングもスポンサーシップに含まれることが多くなっています。
スポンサーシップの目標は、ブランドの一般的なイメージと信頼性を高めることです。自社を他のブランドを連携させると、メディアに対する露出を増やし、広報活動を改善し、オーディエンスの幅を広げることができるほか、ライバルに差をつけることもできます。
メールマーケティングとは、その名のとおり、メールを使うことによってターゲットオーディエンスとつながるための手段です。潜在顧客からロイヤルカスタマーまで、メーリングリストに載っているすべての登録者にメールを送ることができます。たとえば、無料の商品やサービスを提供することと引き換えに、潜在顧客のメールアドレスや情報を獲得することができます。
メールを使うと、以下を含む、たくさんのものを送ることができます。
ニュースレターや限定コンテンツ
商品リリースに関する情報
特別オファーやクーポン
リターゲティングは、購入意欲が強い顧客 (または潜在顧客) に焦点を絞ります。言い換えると、顧客ベースのうち、すでにマーケティングファネルの一番下の層まで到達したセグメントを狙うということです。このオーディエンスは購入する気が満々なため、リターゲティングを優先すると、高い投資利益率を得ることができます。
たとえば、リターゲティングには、以下のようなものが含まれます。
オンラインのショッピングカートに商品を入れておきながらもチェックアウトしなかった顧客にリマインダーのメールを送信する。
過去に商品を購入している顧客に的を絞った広告を表示する。
かなり前に何かを購入しているが、それ以来戻っていない人にナーチャリング (育成) メールを送信する。
リファラルマーケティングとは、顧客にブランドのことを友人などに伝えてもらうマーケティング手法のことで、口コミマーケティングとしても知られます。優れた商品があれば自然に発生するものですが、知り合いなどを紹介してくれる顧客に対して特別オファーや報酬を提供すれば、さらに紹介を促進することができます。
リファラルマーケティングは実質的に無料なため、とても強力な戦略と言えます。また、人は自分の友人を信用する傾向があるため、紹介された顧客は、たまたま広告を見たという人よりも、あなたの商品を購入してくれる可能性が高くなるでしょう。たとえば、Dropbox は、リファラルマーケティングを使用することによって、永続的に登録数を 60 パーセントもアップさせ、その後、数億ドルの利益をあげるスタートアップ企業へと成長しました。
記事: マーケティングプロジェクト管理: 戦略の構築方法
イベントマーケティングでは、ブランドや商品を宣伝する目的で、エベントに参加したり、イベントのスポンサーを務めたり、イベントを主催したりします。この戦略を使用すると、顧客と直接つながり、関わることができるため、顧客はあなたの商品やブランドが何を象徴するのかを実感できます。その他にも、イベントではブランドの存在感を築き、リードを獲得し、顧客との有効な関係を築くことができます。
イベントマーケティングのやり方は、以下をはじめ、多岐にわたります。
カンファレンス
トレードショー
セミナーやコース
ウェビナー
バーチャルイベント
ライブストリーミングイベント
コミュニティイベント
ブランドを特別な意義に関連づけると、顧客は何か大きな取り組みに参加しているような気分になれます。顧客は、あなたの商品を購入することによって、自分たちが何らかのメリットを得るだけでなく、この世界をもっと素晴らしい場所に変えることに貢献するのです。これは、ブランドロイヤルティを高めるだけでなく、顧客が競合他社よりも自分のブランドを選ぶ理由になります。
アパレル企業の Patagonia が好例です。同社は、持続可能な製造プロセスを宣伝することによって、環境保全を大切にする顧客を惹きつけ、維持することに成功しています。
顧客によるレビューは、最も効果の強いマーケティングツールの一つです。Amazon や Yelp、TripAdvisor といったブランドは、レビューを活かしてビジネスを展開しており、顧客によるレビューを促進することによって、人々の信頼を得ています。この戦略の素晴らしい点は、顧客に自分のブランドを宣伝していただけるという点です。また、品質の高い商品 (および評価の高いレビュー) がある限り、こうしたユーザーによって生成されるコンテンツは、潜在顧客を説得して商品を購入していただく上で大いに役立ちます。
多くの場合、顧客によるレビューは自然に集まるものですが、メールやウェブサイトのバナーを使って既存顧客にレビューをリクエストすれば、その過程を加速できます。最近では、顧客に商品を送り、率直なフィードバックを得ることによって、レビューを促進するブランドも存在します。
顧客ロイヤルティプログラムは、ブランドと繰り返しやり取りをする人にリワード (報酬) を与えるものです。特別オファーや割引、限定商品などを提供することによって、顧客に継続的に商品などを購入していただくための手段です。顧客は、企業から何かを購入すればするほど、より多くの特典を手に入れることができます。たとえば、コスメ専門店の Sephora は、一定の金額の買い物をする顧客に割引やギフトを提供するロイヤルティプログラムを宣伝しています。
ロイヤルティプログラムは、顧客維持率を高めるだけでなく、潜在的なバイヤーに競合他社の代わりに自分のブランドを購入していただくよう説得するのにも役立ちます。ロイヤルティプログラムを宣伝することによって、お金を節約するだけでなく、長期的には支払うお金以上のメリットを手にする方法を示すことができます。
誰でもただでモノをもらえると嬉しいでしょう。商品のサンプルをプレゼントすれば、顧客満足度を向上させることができるだけでなく、顧客はとても得した気分になれます。しかし、最も重要なのは、無料サンプルやトライアルは、潜在顧客が商品に直接触れるチャンスとなるほか、その後、実際に購入を決断する際の自信になるという点です。
企業がこのプロモーション戦略を実践する手段として、以下のようなことが挙げられます。
トライアル期間を提供して、顧客がリスクを負わずに商品を試すことができるようにする。スポーツジムやアプリ、オンラインのソフトウェア企業などがよくこの手法を用いています。
ストアに直接来店する顧客に無料サンプルを提供する。会員制のウェアハウス Costco はこの手段を使うことで有名です。
顧客が商品を購入する際に、無料サンプルを含める。この手段を使うと、既存顧客は新商品を試してみようという気になります。たとえば、Glossier といったオンラインの美容品サプライヤーは、顧客が商品を購入するたびに、無料のスキンケアや化粧品のサンプルをよく提供しています。
無料の賞品を獲得できるコンテストを主催する。これは、潜在顧客の連絡先情報を集めるのに便利な方法です。たとえば、ホテル会社なら、無料のバケーションを獲得するチャンスが得られるといって、潜在顧客に連絡先情報を入力するよう働きかける場合があるでしょう。
特別オファーは、マーケティングファネルの下層にいる顧客、つまり商品を購入しようかどうか迷っている人たちを獲得するのに役立ちます。特別オファーは、2 通りの形で機能します。1 つ目は、切迫感をかき立て、顧客にすばやく行動させようとします。2 つ目は、お金を節約しやすくして、顧客が高い投資利益率を得られていると感じられるようにします。
提供できる特別オファーの種類は、いくらでもあります。以下に、その例をいくつか紹介します。
初めての顧客を対象とした初回限定オファー
複数の商品をまとめて割引価格で提供する (靴下の 10 足パックなど)
「2 個購入すると 1 個無料」オファー
リベート
季節限定のセールや割引 (ブラックフライデーのプロモーションなど)
特別なカテゴリを対象とした割引
顧客を対象としたバースデークーポン
一定金額以上で送料を無料にする
最も革新的なプロモーション戦略でも、正しく実行しなければ、失敗する場合があります。以下に、正しくセットアップする方法を紹介します。
プロモーションはシンプルな内容にする。プロモーション戦略は、シンプルで、顧客が簡単に理解できるものが最適であると言えます。広告の意味やオファーの使い方を理解するのにエネルギーをたくさん使ってしまうような内容ではいけません。顧客が利用を諦めて他社の商品を購入する決断をしてしまわないよう、楽に理解できると感じられるものにしなくてはいけません。たとえば、セールスプロモーションのメールは、シンプルにわかりやすくまとめます。ページは文字だらけにせず、特別オファーの内容を強調し、また行動喚起のボタンを含めることによって、顧客がそれをクリックして直接オファーを利用できるようにします。
結果を評価して、戦略を変える準備をする。すべてのプロモーションが期待通りに運ぶとは限りません。つまり、普段から評価指標を追跡し、A/B テストやスプリットテストなどを使って、戦略の効果を評価することが重要となります。そうすると、もはや結果の出ないマーケティング活動に時間を浪費してしまうことを回避できるほか、市場環境の変化にすばやく適応することができます。
プロモーションに合わせて商品とホームページの宣伝をしなおす。人は、ホームページや商品の外観に見慣れてしまうものです。宣伝をしなおすということは、クリエイティブ戦略を組み合わせたり、顧客の関心をつかめるよう、ホームページや商品のランディングページの外観や雰囲気を変更したりするということです。たとえば、eコマースを展開する企業なら、プロモーションに注目が集まるよう、ホームページに新しい視覚要素を追加してもよいでしょう。
区別しやすいブランドを作成する。市場にはたくさんの商品が出回っていますので、オーディエンスの注目を求めて競合他社と競い合う必要があるでしょう。つまり、自分のブランドはどういった点で他のブランドを上回っているのか、他の企業には提供できないもののうち、自社は何を提供できるのかを示すなどして、自社ブランドを差別化することにフォーカスする必要があります。たとえば、食品チェーンの Whole Foods は、より健康的な食事の仕方や生活の仕方を宣伝し、また見た目がきれいなショッピング体験を演出することによって、競合他社との差別化を図っています。
優れた顧客体験を提供する。プロモーション戦略は、顧客が商品を購入した時点で終わるものではありません。ただ単に新しい顧客を引き寄せることに集中するのではなく、既存顧客にもよい体験をしてもらい、またあなたのブランドの商品を購入したいと思えるようにする必要があります。顧客ジャーニーマップを作成することによって、購入プロセスを通じて、人はどのように考え、行動し、何を感じるのかをプロットし、それから改善できそうなことを探ります。これには、一層質の高いカスタマーサービスやよりスムーズなチェックアウトプロセス、長期的に顧客との良好な関係を維持することを狙った歓迎メールや継続的なコミュニケーションなどが含まれます。
優れたマーケティングキャンペーンやデジタルマーケティング戦略、市場進出 (GTM) 戦略には、しっかりとしたプロモーション戦略が欠かせません。アプローチの仕方を作成するにあたり、この記事で紹介した 12 個の例は、それぞれ一つずつ独立して使う必要はありません。顧客があなたのブランドについて初めて知ったという場合でも、あなたの商品を競合他社の商品と比較している場合でも、リピーターとして戻ってきたという場合でも、異なる戦術を組み合わせれば、バイヤージャーニーの各ステージで顧客の注目をつかむことができます。
効果的なプロモーション戦略を実践するには、多くの関係者と一緒に作業をコーディネートする必要があります。マーケティング戦略テンプレートを使って、タスクを整理しましょう。目標の計画を立て、リソースを割り振り、戦略担当者を明確にするといった作業をすべて 1 か所で行えるので、非常に便利です。
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