自分の仕事が成功したかどうかを判断するにはどうしたらいいでしょうか。ベンチマーキングは、成功を評価する自分だけの基準を設定するのに役立つ、データを基にしたプロセスです。ベンチマークを設定するだけで、チームに期待事項を明確に示すことができます。この記事では、ベンチマークのさまざまな種類と、独自のベンチマークを作成する手順をご紹介します。
成功とは何なのでしょう?漠然とした言葉です。自分自身やプロジェクト、ビジネスが成功しているか、どうやって知ることができるのでしょうか。成功の尺度とは人それぞれなのが事実です。そのために、成功の定義は難しく、チームを管理したり、ビジネスを成長させたりする場合には特に難しいものです。
だからこそ、自分なりの成功基準を設定することが非常に重要です。それには、ベンチマーキングと呼ばれるデータを基にしたアプローチを利用できます。ベンチマークでは、競合他社を使って、あるいは社内で比較を行って、信頼できる成功の基準点を作成します。
ベンチマークとは、あらかじめ定められた基準のことで、ベンチマーキングとは、その基準を設定するプロセスのことを指します。ベンチマークを決めるには、自分の仕事を何かと比較して測る必要があります。ベンチマーク設定のための比較対象には、次ようなさまざまなものが挙げられます。
競合他社。自分の仕事や望まれる結果を競合他社と比較することで、業界では何が普通なのか、顧客が何を期待しているのかがわかります。それに基づいて、ビジネス、製品、メッセージングを調整し、競争力を維持できます。
過去の結果。過去の結果をベンチマークとして使用することで、社内で改善が行われているかどうかがわかり、プロセスやワークフローにおけるギャップが特定できます。ベンチマークと比べて改善されていれば、今やっていることがうまくいっているということで、それをさらに強化することができます。改善されていない場合、変更を加える絶好の機会です。
目標。目標をベンチマークとして使用すると、結果が、期待していたもの、始めた当初に望んでいたものであるかどうかがわかります。達成できていない場合には、目標を達成可能なものへと調整する必要があるかもしれません。
プロジェクトの成果を分析するのには、目標とベンチマークの両方が使えますが、それらは実際には微妙に異なります。根本的な違いは、その目的です。目標は、達成を目指すものであり、成長を指向したものになりがちです。ベンチマークは、パフォーマンス (実際の結果) を参考となる基準点と比較するためのものです。
たとえば、今年の経常収益で 50 万ドルを達成するというビジネス目標を立てたとします。この目標は、キャッシュフローを成長、拡大させるために達成したいことを表しています。その一方で、収益のベンチマークは、競合他社と比べて収益額はどうか、昨年と比べてどうかを表すものになるでしょう。通常、ベンチマークは目標設定の基準として使用できるものです。昨年の収益が 20 万ドルに達しており、飛躍的に成長していることがわかっている場合には、50 万ドルというのは現実的な目標でしょう。
ベンチマーキングも競合他社分析も、競合他社の調査に基づいて、他社がどのように動いているかを判断するものです。この 2 つの違いはスコープ (範囲) です。ベンチマーキングはスコープが狭く、個々のビジネスプロセスに焦点を当てるのに対し、競合他社分析は、スコープが広く、大局的な戦略や目標に焦点を当てるものです。
ベンチマーキングでは、自社のプロセスやベストプラクティスを見直すために、競合他社の調査データを使います。それをベンチマークとして記録・保存し、自社の仕事の進め方の基準を設定するのに使用します。これは、データを使用して全体的なビジネス戦略を見直す競合他社分析とは少し異なります。ベンチマーキングと競合他社分析のどちらを使用するかは、プロジェクトのスコープによります。プロセスだけを見るのであれば、ベンチマーキングで十分です。より大きな戦略や目標に関するデータが欲しい場合は、競合他社分析を使用するのがいいかもしれません。
ベンチマーキングは、仕事をどう進めるかの基準設定に役立ちます。そこでは、意見やアイデアに基づいて基準を選択するのではなく、データに基づいて決めます。それにより、インパクトが最も大きいものに的を絞り、集中した基準であることが保障されるのです。
また、ベンチマーキングでは、ワークプレイスでの期待や目標の理論的根拠を従業員に示せます。チームの日々のタスクがなぜ重要なのかを示すためのデータとなり、自分が何のために、なぜ働いているのかを皆が知ることができるのです。
ベンチマーキングには、次のような多くのメリットがあります。
成功を定義・決定できる。ベンチマーキングでは、自社にとっての成功は何なのかを決定できます。たとえば、リードジェネレーションを前年比 10% 増加させることを毎年の成功のベンチマークとし、11% を達成する見込みであれば、期待を上回ったということになります。
ギャップを特定できる。ベンチマーキングは、競合他社とのギャップを明らかにしてくれます。たとえば、同じ期間に競合他社が 8 つの新機能を開発しているのに対して、新機能を 3 つしか開発していなければ、競争力を維持するのは難しいでしょう。
製品の品質に対する高い基準が設定できる。ベンチマーキングの結果として、製品やサービスの品質が向上し、顧客満足度の向上につながります。たとえば、地域イベントを毎年 4 回開催することをベンチマークとした場合、お客様とより定期的に交流するための基準を設定していることになります。
ベンチマークの設定はシンプルですが、きちんとしたプロセスがあります。始める前に、比較に使用できる関連したベンチマーキングデータを集めましょう。競合他社、過去の仕事、目標に関するデータなどが候補です。この集めたデータから得られる指標は、ベンチマーク分析のベースラインとなるものです。
たとえば、自社の製品のリリースを追跡し、アイデア出しからリリースまで 3 か月かかることがわかったとします。捉え方によって、その期間は長くも短くも聞こえるでしょう。しかし、主観的な「捉え方」は、リリースのタイミングが最適かどうかを判断する正確な方法とは言えません。その代わりにベンチマークを使用すれば、それぞれの製品がどれくらいの期間でリリースされるべきかの答えが出せるのです。たとえば、次のようなことを調べるとよいでしょう。
同じような製品を競合他社が発売するのにかかる時間は?
前回の製品のリリースにかかった時間は?
そのリリースの際に、時間を節約するためのプロセスの改善を行ったか?
ここではその他の細かい情報も関係してきます。競合他社の方が速く製品をリリースできるとしても、そのチームと予算の規模が自社の 2 倍だとしたら、それは適切な比較対象とはいえません。ベンチマークが現在の状況にどの程度関連しているかを考慮し、それぞれのシナリオに最も適したものを選びましょう。
ベンチマーキングには、社内、競合他社、戦略の 3 つの種類があります。どの種類を使用するかは、何を測定し、何を得たいのかによって変わります。
初めてベンチマーキングを行う場合、社内ベンチマーキングは最も簡単に始められるものです。プロジェクト管理の他の部分と同様、社内ベンチマーキングでは、質問の答えを出すために組織の知識を利用します。また、社内の情報を見直すため、自分の管理下でデータ収集がすべて行われます。社内ベンチマーキングには、他の部門、チーム、あるいは過去の仕事のビジネスパフォーマンス指標を確認しましょう。現在の仕事に適用できるような、ベストプラクティスや効果的なプロセスを探すのです。
社内の情報を集めるには、次のような方法があります。
アンケートを使用したり、同僚や直属の部下に何をどう達成したかを尋ねる。
過去のプロジェクトを見直し、競合的に有利となるきっかけとなったビジネスプロセスを探す。
高インパクトなイニシアチブを研究する。何がよかったのか?プロジェクトを成功に導いたプロセスやベストプラクティスを、再利用し、標準化できるとしたら、それはパフォーマンスベンチマーキングの優れた候補となります。
過去の目標に注目し、仕事が期待に沿っているかを評価する。
情報を収集しながら、望ましい結果 (再現したい、標準化できそうなプロセス) があれば、メモしておきます。同時に、実際のパフォーマンスと意図したものとの差、パフォーマンスギャップに注目しておきましょう。このプロセスは、現在のパフォーマンスと望まれるパフォーマンスとを比較する、ギャップ分析に似ています。ただし、社内ベンチマーキングでは、現在のパフォーマンスを、過去や他のチームのパフォーマンスと比較するという点で異なります。
何がうまくいき、何がうまくいかなかったかが見きわめられたら、標準化したいプロセスやワークフローをベンチマークとし、社内のレビューを終了できます。
記事: プロジェクトマネジメントで学んだ教訓を記録しておく方法社内のレビューとは反対に、外に目を向けて、同業他社の成果を見ます。競合他社ベンチマーキングの難点は、信頼のおけるデータを見つけるのが難しいところです。競合他社が情報を共有していると信頼するか、正しいか実証できない可能性のある、第三者からのデータを取得する必要があります。
しかし、追求する価値はあります。データ収集のハードルを越えたら、競合他社のリサーチは競争優位性を獲得するための最良の方法の 1 つです。業界に共通するパターンやテーマを見きわめ、ベンチマーキングやプロセス全体の改善に役立てることが可能です。
たとえば、直接の競合他社が、自社のアカウントよりも多くの SNS エンゲージメントを獲得していることがわかったとします。この情報を使って、自社の SNS エンゲージメントのベンチマークを設定できます。つまり、業界で競争力を維持するために自社が達成すべき、SNS パフォーマンスの指標を決定しているのです。
何かがうまくいっていないことはわかっていても、その理由がわからないことがあります。単に問題解決方法がマンネリ化している場合もあれば、新しい市場に進出し、まったく新しい仕事のやり方を開発しようと模索しているからなのかもしれません。戦略ベンチマーキングは、業界知識の枠を超えるような、クリエイティブな方法です。戦略ベンチマーキングでは、業界最高水準のパフォーマンスを求めます。多くの場合、他の企業、業界、あるいは文化に目を向け、自分の仕事のための新しい戦略ベンチマークが作成できるかどうかを考える必要があるということです。
戦略ベンチマーキングは、昔からイノベーション促進のために利用されてきました。たとえば、エスカレーター会社がショッピングモールに進出する際には、重力に逆らって急な傾斜で速く人を上に登らせる、という問題を解決しなければなりませんでした。それは業界では前例がないことで、彼らは外部に目を向けました。そして結局は、鉱業で培われた技術を使用してショッピングモールのエスカレーターの設計したのです。このようにうまく使うと、戦略ベンチマーキングは、競合他社を大きく引き離すことにつながります。
以下のシンプルな 8 つのステップに従って、ワークフローやプロセスの継続的な改善のためにベンチマーキングを活用できます。
ベンチマーキングの対象を決定する。何をベンチマークしたいかを決定します。初めてベンチマークを行う場合は、仕事に最大のインパクトを与えるプロジェクト、プロセス、または望ましい結果のためのベンチマークを作成することから始めましょう。
ベンチマーキングの種類を決定する。競合他社、社内、戦略のうち、どれからデータを取得するかを決定します。
見直し、記録する。何のためにベンチマークを作成するのかを確認します。関連するプロセスをすべて記録し、関連するワークフローを文書化することで、開始前に現在の状況をよく把握することができます。
データを集める。ベンチマーキングの種類によって、データは競合他社リサーチや社内データから得られます。競合他社リサーチを使用する場合、事実確認が難しい競合他社の二次情報 (ウェブサイトやニュース記事など) には注意が必要です。
データを分析する。データを自身のパフォーマンスや仕事と照らし合わせて、ギャップ、パターン、改善できそうなところを特定します。
計画を立てる。データだけでは、何にもなりません。分析が完了したら、プロジェクト計画を使って、ベンチマークをどう設定し、使用するかを決めていきます。
変更を実行する。ここで、プロジェクトマネジメントの段階に移り、設定したベンチマークを実際に導入し、仕事、チーム、会社の新しい標準とします。
洗い流して、繰り返す。ベンチマーキングは継続的なプロセスですが、新しいアイデアやワークフローごとに個別に行うものです。新しいプロジェクトが始まるたびに、プロセスを最初からやり直しましょう。
プロセス、ワークフロー、結果のベンチマーキングを行うことで、成功を測定するための基準値が得られます。ベンチマークは、期待されるものや、チームがどうすれば最高の結果を出せるかを明確にしてくれるのです。
ベンチマーキングは、ビジネスを推進するための仕事の標準を見出すのに役立ちますが、それだけでは仕事を終わらせる助けにはなりません。Asana を導入すると、ワークフローの追跡、自動化、構築が可能になり、より良い仕事をより速く行えるようになります。
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