どんなビジネスもリスクに直面します。不透明な時期は特にそうでしょう。リスク軽減を行うと、リスクが発生する可能性を減らし、また発生した場合の影響を抑えることによって会社を守ることができます。この記事では、会社とチームを潜在的なリスクから守るために使える 4 つの一般的なリスク軽減戦略を詳しく紹介していきます。
最後に散歩に出かけたときのことを思い出してください。まず天気を確認しましたよね?それから天気予報アプリをチェックして着る服や持ち物を決めたはずです。寒そうならジャケットまたは薄手のセーターを着て、雨が降る予報なら、土砂降りになる可能性を考慮して傘を持っていくべきかどうか決めたかもしれません。
それこそがリスク軽減です。潜在的なリスク (体が冷えたり、濡れてしまったりする) を判断し、それが発生する可能性を検討し、リスクを抑える措置を取っています。
リスク軽減は、雨の日に濡れないようにするためだけの戦略ではありません。ビジネスにおいては財務的な損失など、深刻な想定外のリスクがもたらすマイナスの結果を避けることができます。それでは、会社とチームのリスクを軽減するのに活用できる 4 つの戦略を見ていきましょう。
リスク軽減とは、ビジネスやプロジェクトに対する潜在的な脅威やリスクを減少させるプロセスのことです。リスク管理戦略の一部でもあり、今後、依頼やタスクの内容を問わず自信を持って仕事を進められるよう、リスクを特定し、そのリスクを管理または排除するためのプランを立てるためのものです。
リスク軽減の目標は、ビジネスやプロジェクトのリスクが発生する可能性を減らすだけでなく、潜在的な脅威をモニタリングし、そうした脅威が発生した場合に対処するための戦略を導入することです。リスク軽減は、あらゆるビジネス戦略の重要な要素です。マクロ経済の状況の変化など、社外で発生するチームではコントロールできないようなリスクに直面した場合は、特に重要な役割を果たします。
リスク管理計画のテンプレートを作成どれだけ上手に計画しても、ビジネスは必ず固有のリスクに直面します。世界的危機が起こるときや市況が変化するときなど、不透明な時期はそうしたリスクに直面する可能性がさらに高まります。リスク軽減を行うと、ビジネスの継続に襲いかかる不要なリスクを抑えられるため、チームは不透明な状況を思うように操舵していけます。
ビジネスが直面するリスクには、以下のようなものがあります。
スコープクリープや、プロジェクトの透明性不足、厳しい納期、リソース不足といった、プロジェクトのリスク。
資金不足や収益性の低下といった、財務上のリスク。
マクロ経済の状況の変化や株式市場の変動といった、経済上のリスク。
データ漏えいやハッカーの存在といった、サイバーセキュリティ上のリスク。
ブランド管理の問題や顧客からの信頼喪失といった、評判上のリスク。
離職率や人材不足、一時的な採用の停止といった、人事上のリスク。
サプライチェーンのリスクや業務手順の変更といった、業務上のリスク。
私生活において、傘を持たずに外出して雨に降られてしまうなど、リスクに対応する準備ができていないとひどい目に遭うのと同じで、ビジネスもリスクに対処する準備が整っていないと、以下のような障害に直面します。
プロジェクトが予算オーバーになる
プロジェクトの結果が期待を下回る
チームメンバーの離職
期日を逃す
企業の評判やブランドへのネガティブな影響
イノベーションの停滞
財務的な損失
こうしたリスクや起こりうる結果は、どうにもならないもののようにも思えます。しかし、リスクはビジネスにつきものだからといって、それに備えることができない訳ではありません。リスク軽減戦略を実践すれば、ビジネスのリスクを抑え、業務に集中できます。
ビジネスを望ましくない結果から守る手段として活用できるリスク軽減戦略は主に 4 種類あります。リスク軽減の最初のステップでは、ビジネスやプロジェクトが直面するリスクを特定し、評価します。考えられるリスクにはどういったものがあるかをある程度把握できたら、チームを守る最適なリスク軽減プランの策定に取りかかります。
潜在的なリスクを特定するには、以下のことを行います。
早い段階から着手する。プロジェクトのリスクは、プロジェクトの立ち上げおよびプロジェクト計画の段階で評価するべきでしょう。先行きの不透明な時期や経済状況が変化しつつある場合は特に、その後も継続的にビジネスのリスクを評価しましょう。
チームとミーティングを行う。リスクを特定する最適な手段として、潜在的な脅威の影響を受けるプロジェクトや事業に関与しているチームとミーティングを行うという手があります。プロジェクトチームやビジネスリーダー、または関係者とのミーティングが考えられます。プロジェクトのリスクを判断する際は、プロジェクトタイムラインやスコープ、予算、利用可能なリソースといった、プロジェクトの制約要因について検討するとよいでしょう。ビジネスのリスクを全体的に評価するときは、市場占有率や競合他社の業績および戦略、考えられる法律上のリスク、現在の、もしくは予想される経済状況 (予想にはPEST 分析が便利です) といった要因を確認します。
潜在的なリスクが実現する可能性を判断する。ビジネスが直面するリスクを把握したら、リスクマトリクスのテンプレートを作成します。リスクマトリクスのテンプレートは、リスクが実現する可能性と、実現した場合に生じる結果の重大度を見て、リスクが引き起こす全体的なインパクトをまとめたものです。そうすることによって、ビジネスにとって大きな痛手となり得るリスクと危険ながらも背負う価値のあるリスクを見極めることができます。
リスク軽減戦略を立てる。ビジネスが直面するリスクとその潜在的なインパクトが分かったところで、各リスクの種類と潜在的な結果を考慮したリスク軽減戦略を策定します。
以下に 4 種類の一般的なリスク軽減戦略を紹介します。
リスク回避は、望ましくないリスクを引き起こしかねないアクションを完全に避けることに重点を置いたリスク軽減戦略です。この戦略を使うときは、単純に、リスクを引き起こし得るアクションは実行しない選択をすることによって、リスクを避けるという対応をします。
リスク回避を使うべき場面: リスク回避戦略は、対象のリスクが実現すると、会社の財務状況に大きく影響する場合など、潜在的な脅威のリスクが高い場合の使用に適しています。
例: 勤め先の会社が 2 つ目のオフィスを開設する予定にしているとしましょう。具体的なリスクを評価していると、1 つ目のオフィスが 2 つ目のオフィスの運営を支えられるだけの利益を出せていないため、さらなる資金を確保する必要があることに気付きます。また、2 つ目のオフィスの開設が遅れたり、すぐに利益を出せなかったりすると、支払いを滞納する恐れもあります。この状況は、会社全体に影響し、最終的には、会社が業績を上げ利益を獲得する能力に影響する可能性があるため、拠点を増やす活動を一時停止して、リスクを全体的に避けた方が無難かもしれません。
リスク削減 (別名: リスク管理) では、リスクが実際に発生する可能性を減らしたり、実際に発生した場合のインパクトを制限したりするのに役立つアクションを実行します。リスク削減戦略を使用する際は、リスクをプロジェクトの初めに定義し、プロジェクトを通じて積極的に追跡することにより、リスクをモニタリングし、実際に発生した場合は対処できるようにすることが重要です。
リスク削減戦略を使用すべき場面: リスク削減戦略は、プロセスの調整や更新といった軽減措置を取ることで潜在的なリスクを管理できると考える場合に使用するとよいでしょう。
例: マーケティングキャンペーンを始めようとしている状況を想像してください。プロジェクトの初めにプロジェクトのリスクを検討した際に、期日を超過してしまう可能性があることに気付きます。リスクを見直した結果、プロジェクトが期日を過ぎる可能性は低く、コントロールできると判断します。リスクが実際に起こる可能性を下げるべく、まず初めに、タスクのスコープが不適切に設定されている、制作が遅れる、予想外のバグが発生する、リソース配分に制限があるなどのリスクが発生し得る理由を特定します。そして、スケジューリングのミスを避けるためにチームカレンダーソフトウェアを使う、スコープ管理計画を作成する、リソースを正しく割り振るといった管理手法を取ります。
記事: リスク登録簿とは?プロジェクトマネージャー向けガイド (実例付)リスク移転戦略では、潜在的なリスクの結果を第三者に移します。この戦略を使用すると、リスクが実際に発生しても会社の責任にはならないようにできるため、会社が守ることができます。
リスク移転戦略の一般的な例に保険を購入するという手があります。会社が保険会社に保険料を支払い、定義された特定のリスクから生まれるコストを受け持ってもらいます。リスクが実際に起こった場合は保険会社が損害賠償金を支払うため、会社が金銭面での責任を負うことはありません。リスクの移転は、業務のアウトソーシングや請負業者との契約によっても行えます。
リスク移転戦略を使用すべき場面: リスク移転は、会社を潜在的な金銭的責任から守りたいときに最適なリスク軽減戦略です。リスクが実際に起こる可能性は低くても、実際に起こった場合に会社が被る金銭的なインパクトは大きいという場合にも便利な戦略です。
例: あなたの会社が新製品をリリースするとしましょう。現時点で、社内には製品を制作するのに必要なリソースがなく、制作プロセスをセットアップするにも初期費用が高くつくため、制作をサードパーティの請負業者に委託することにします。これで、あなたの会社は初期費用を支払う必要がなくなるほか、請け負い業者が制作作業を遅らせたり、その他の形で制作作業に悪影響を及ぼしたりすることがあっても、本来なら会社が被ることになったであろう金銭的損害を請負業者がカバーすることになります。
リスク移転には、マイナス面もあります。会社をリスクから生まれる金銭的な責任から守ったからといって、マイナスの結果が生じた場合の影響を受けないわけではありません。たとえば、請負業者との何らかの問題が発生して製品のリリースが遅れた場合、あなたの会社は金銭的な損害を被ることはないにしても、リリースが遅れたことは会社のブランドや評判にとって悪影響となります。したがって、リスク軽減戦略を検討するときはそうした要因を考慮することが大切です。
名前からも分かるように、リスク容認とは潜在的なリスクを認識し、許容するということです。リスク削減とは違い、リスク容認ではリスクを軽減しようとはせず、リスクが起こる可能性があることを念頭に置いて、そのままプロジェクトを進めます。リスクのインパクトや発生する可能性が許容範囲を超えてしまう場合は、リスク軽減戦略を適切に調整して対応します。
リスク容認戦略を使用すべき場面: リスク容認戦略は、潜在的なリスクが実際に起こる可能性が低い場合やリスクから生まれるマイナスの結果が軽微な場合、リスクを軽減するコストがリスクが実際に起こった場合に被るコストよりも大きい場合など、潜在的なリスクのレベルは許容範囲と判断できる場合に使うとよいでしょう。
例: あなたが運営する花の配達会社が 5 年間に渡って同じ花屋からバラを入荷しているとします。過去 5 年間、その花屋がバレンタインデーにバラを発送できなかったことは一度もありません。バレンタインデーは、大きく儲ける一番のチャンスですから、花屋が発送できないようなことがあれば会社の儲けと評判に悪影響を及ぼしかねません。しかし、実際に発送できなかったことは一度もありません。しかも、予備となる花の供給源を確保するために他の花屋を見つけて契約を結ぶとなると、会社にとって大きな出費となるほか、結果的に無駄になる可能性もあります。花屋が配達できなくなるリスクは低いため、あなたの会社はそのリスクを許容できるものとし、リスクから会社を守る措置を取らずに事業を進めます。
リスク軽減は静的なものではなく、進化し続けるプロセスです。リスク軽減戦略を決定したら、継続的にリスクをモニタリングしてリスク発生の可能性や深刻度が上昇するのを防ぎ、新しいリスクが浮上した場合に備えてきちんと準備をしておくとよいでしょう。
以下に、ビジネスリスクをモニタリングする方法をいくつか紹介します。
最初にプロジェクトロードマップを定義して、すべてのチームメンバーと関係者がプロジェクトのスコープと成果物について共通認識を持てるようにする。
定期的な進捗確認を予定して、プロジェクトのスコープと進捗をモニタリングする。
プロジェクトのステータスを追跡できるプロジェクト管理ソフトウェアを使って、リアルタイムでプロジェクトの進捗とパフォーマンスを追跡する。
出費と費用をモニタリングして、効果的なコスト管理を行う。
事前にプロジェクト予算を定義する。
タイムマネジメントのテクニックやツール (デイリープランナーテンプレートなど) を活用してスケジュールを管理する。
リソース配分計画を作成して、リソース上のリスクを軽減する。
変化するビジネスの状況を積極的にモニタリングし、必要に応じてビジネス戦略を調整する。
危機管理計画を導入して、ビジネスに関わる脅威に対応する。
どんなビジネスもリスクに直面します。またリスクは怖いものです。変化の時期や不透明な時期は特にそうでしょう。リスク軽減戦略を使用すれば、ビジネスとチームを不要なリスクから守り、不透明さを改善し、ビジネスを前進させることができます。
プロジェクトの進捗を追跡できるプロジェクト管理ソフトウェアを使ってプロジェクトのリスクを減らしましょう。順調に運んでいるものやリスクとなるものを確認し、一目で障害を特定し、チーム全体を見える化して、チームメンバー全員が自分の担当業務と期日を把握できるようにしましょう。
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