プロジェクト会計とは、プロジェクトごとに行う会計作業のことです。単に損益計算書を書いて利益を追跡するだけではなく、収入源とコスト発生元を特定して、利益がどのようにして生まれているのかも明確にできます。
プロジェクトマネージャーは、計画からスケジューリング、調査、報告までをこなす、真の何でも屋です。この記事では、習得したいもう一つのスキル「プロジェクト会計」をご紹介します。
「会計士」としての仕事は、正式な業務内容には含まれていないかもしれませんが、予算の立て方を知っていることは、プロジェクトの計画作業やリソースの割り当てに欠かせない要素です。コストばかりかかるプロジェクトに参加したい人はいないでしょうから、プロジェクト単位で会計を行い、日々の取引や収益を評価すれば、プロジェクトの費用対効果を判断できます。
プロジェクト会計は、プロジェクトのライフサイクルを通して個々の成果物にかかるコストを追跡するための手段です。それには、財務会計と管理会計の要素が伴い、その 2 種類の会計を行うことにより、プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの財務面での健全性と利益幅をモニタリングできます。
この種の会計は、マネージャーと関係者がプロジェクトの収益性を計算するのに役立つため、価値のあるものと言えます。プロジェクトのコストと潜在的な収入源を追跡することにより、各成果物はコストを費やすほど価値のあるものかどうかを事前に判断できます。そうした詳細を考慮することにより、素材や労働力、時間に関する課題に対処できます。
Asana のプロジェクトマネジメント機能を試すプロジェクト会計と財務会計はどのような点が違うのでしょう?プロジェクト単位の会計と標準的な財務会計では、その両方で事業コストと収益が追跡されますが、プロジェクト会計では特定のプロジェクトに関連する取引に焦点が置かれます。この手法は、以下のようにシステムやプロセス、報告の標準が異なる点で、他の手法と区別されます。
開始日と終了日が設定される。会計の追跡は、プロジェクトが開始するとともにスタートする。
成果物を基に報告する。特定のマイルストーンや購入する必要があった製品に対する出費を追跡する。
コストの具体的な内訳が細かく示される。各タスクのコストをリストアップする。
手法が代替可能である。原価計算を使おうが、発生主義会計を使おうが、それらの手法はこのプロセスに影響しない。
業務内容が複数領域にまたがる。プロジェクト会計は、プロジェクト管理と会計をブレンドしたものであるため、2 領域の担当者の間で役割を分割したり、どちらか一方にすべての担当業務を任せたりできる。
プロジェクトのあらゆるレベルで詳細を明確にしたいという方は、プロジェクト会計を使うとよいでしょう。この手法を使えば、日々のコストや費用、請求、収益を注意深くモニタリングできるため、予算を最適化して、特定のプロジェクトの財務面での目標を着実に達成できます。
プロジェクト会計は、以下の場合を含め、どのようなプロジェクトにも使用できます。
財務監査に備える。
普段の業務範囲外の新規プロジェクトを引き受ける。
新製品や新サービスを開発する。
ビジネスプロセスとテクノロジーの改善を実践する。
ユニークなプロジェクトの請負契約を追跡する。
プロジェクト会計を建築業界で使う方法について考えてみましょう。住宅やオフィス、アパート、ショッピングセンターを同時に建築している場合は、それらの建築プロジェクトのコストを 1 か所で報告することはできません。各建造物の費用便益を明確に把握するには、それぞれのプロジェクトの資金と予算を追跡する必要があります。
プロジェクト会計では、発生したコストや収益を個々のプロジェクトに結びつけて把握できるため、簡単に各プロジェクトの進捗状況を確認できます。
プロジェクト会計をワークフローに追加すると、プロジェクト管理の取り組みを合理化できます。以下のプロジェクト会計プロセスのフローにしたがって、予算を最初から最後まで追跡しましょう。
プロジェクト会計では、財務管理のテクニックを使うことにより、個々のプロジェクトの予算を整理し、割り当て、維持することができます。プロジェクト会計プロセスのフローは、主に以下 6 つのフェーズに分割されます。
プロジェクトの開始前に、初期予算の見積りとコストに基づいた分析を完成させます。初期フェーズでは、以下の問いについて確認することをおすすめします。
新しいプロジェクトを引き受けるのに適したタイミングか?会社のリソース、料金、財務状況、現行のプロジェクトの進捗状況をしっかりと確認しましょう。そのインサイトを使って、さらにプロジェクトを引き受けることがリスクに値するかどうかを判断します。
過去にあった類似のプロジェクト予算からどのような情報を取得すれば予算を見積れるか?予算を計算し、コストに基づいた分析を行う際は、過去のプロジェクトの情報を使うと予算を見積りやすくなります。この提案されているプロジェクトが今までに類を見ない種類のものであれば、トップダウン見積り法を使えば、全体的なタイムラインと見積りを設定できます。
初期フェーズの目標は、関連する財務データと予測を基に、経営上層部に新しいプロジェクトを引き受けるよう勧めたり、引き受けないように説得したりする根拠を用意することです。また、クライアントにプロジェクトのおおよその見積りとタイムラインを提供することもできます。
予算とは、特定の目的に使用できる資金を示すものです。初期フェーズの作業が完了したら、プロジェクトの各アクティビティグループやカテゴリに割り当てる予算を決定します。各成果物には、コストが割り当てられている必要があります。予算には、オーバーヘッドコストなど、コストのトランザクションに関連する間接費や請求対象外要素を必ず含めるようにしましょう。
予算を立てるときは、リスクを考慮することも重要です。仕入価格の高騰など、予定外のコストに対応できるよう、10% のバッファーを持たせておくことを検討しましょう。
プロジェクトのさまざまなレベルでどれだけの資金が使われているのかを追跡すると、リソースと出費がどれだけ効率よく消費されているのかをモニタリングできます。そうすることによって、プロジェクトが予算を超えないようにします。
また、プロジェクトを通して、各取引を処理し、財務的なコミットメントと収益認識を追跡し、請求書を作成し、収益レポートを作成することも必要になります。
このフェーズは、おそらくプロジェクトを通して続くことになるでしょう。プロジェクトの財務情報をワークマネジメントプラットフォームのような信頼できる唯一の情報源に整理して、このプロセスを簡素化すれば、戦略的な目標にもっと集中できるようになります。
プロジェクト会計の管理フェーズに参加すると、予定されていたコストと実際のコスト、利益、収益を簡単に追跡できるため、プロジェクトの進捗を明確に把握できます。このインサイトは、次のフェーズで役に立ちます。
予算フェーズでは、予算を複数のカテゴリに分割しましたが、今度はプロジェクトをさらに細かく分割していきます。実行フェーズが始まると、各チームメンバーはそれぞれの担当カテゴリの中でプロジェクトタスクに取り組みます。そのカテゴリに設定されている予算は、各タスクに充てられます。すると、予算として計画していた金額とプロジェクトに必要な金額の差が見えてくるはずです。
予算の多くは、注意深くモニタリングしないと、実行フェーズで予定から外れていきます。主な原因の一つが、スコープクリープです。これは、事前に設定されていたプロジェクトスコープには含まれていなかった成果物が追加されることによって生じます。スコープをきちんとコントロールするには、各チームの時間とリソースの使い方を正確に追跡することが重要です。
プロジェクトチームがプロジェクトの予算とリソースを継続的に、かつリアルタイムにレビュー、検証、更新するためのプロセスを作成します。そうすると、すばやく不一致を発見し、予算オーバーを避けられます。
プロジェクトに参加するメンバーは、タスクに費やした時間を正確に記録したり、どのリソースが何に使用されたかを文書化したりするなど、予算のメンテナンス作業において何らかの役割を果たします。製品の予算案は、たまに参照するだけの静的な用紙ではありません。むしろ、各チームメンバーがリアルタイムに更新する、最も正確な最新情報でなくてはいけません。プロジェクトの各カテゴリが完了したら、予算を徹底的に分析して、予算オーバーであれば、それに対処し、必要に応じて資金を再割り当てします。
プロジェクト会計サイクルの最終フェーズでは、レポートの内容を基にプロジェクトの総コスト、収益、利益幅を計算しなくてはいけません。そうすることは、経営陣が、今後、類似のプロジェクトに取り組むことが努力に値する選択かどうかを判断するのに役立ちます。
プロジェクトが予算オーバーになったり、その価値以上のコストを費やすことになったりしても、そうしたミスから学べる教訓があります。プロジェクトを完了したら、レポートの内容を確認して、計画通りに運んだことや考慮できていなかったことを記録しておきましょう。そうすることで、メンテナンスのプロセスを合理化することや、予算の予備費を確保しておくことなど、次のプロジェクトに向けて改善すべきことを判断できます。
記事: プロジェクトマネジメントで学んだ教訓を記録しておく方法プロジェクト単位の会計を適切なプロセスで実践すると、パイプラインの各プロジェクトを管理できると同時に、各プロジェクトの小さな要素を分析できるため、何にコストがかかり、何から収入が発生しているのかがわかります。以下に説明するプロジェクト会計の原則を実践すれば、プロジェクトがスムーズに運びます。
プロジェクト単位の会計は、組織の一般的な財務会計プロセスよりもかなり細かい作業となります。こうしたプロジェクトは、それぞれを別の財務アカウントで管理することが適切な慣行とされています。そうすると、個々のプロジェクトに必要な情報を簡単に整理でき、それらに簡単にアクセスできます。
どんなプロジェクト計画プロセスでも、成功させるには予算策定ステップを含めるべきです。このステップをプロジェクトが始まる前に完了させておけば、進捗状況の評価や潜在的な問題の認識、プロジェクトのメリットがコストよりも大きいかどうかの判断を行うための基準となります。
どのプロジェクトでも、時間や労働力、素材など、たくさんのリソースが必要になります。プロジェクト会計において、そうしたリソースを割り当て、消費する方法を知っておくことは、予算が設定された範囲に収まっているかどうかを追跡する上で欠かせません。
記事: プロジェクトを成功させるためのリソース管理完全ガイドプロジェクトの最重要な要素を順調に進めるには、関連性の高い重要業績評価指標を評価する必要があります。KPI は、定量化できる尺度であり、プロジェクトマネージャーはそれを使用することにより、プロジェクトの目標を達成するという観点において、パフォーマンスを評価することができます。プロジェクト管理における KPI には、以下のようなものがあります。
スケジュールパフォーマンス
コストパフォーマンス
予算の変動
お客様の不満
変更リクエストの数
プロジェクトマネージャーは、時間が何よりも大切だと承知しています。タスクに費やされる時間を追跡すると、コストをリアルタイムに計算し、労働時間がプロジェクトの予測に合っているかどうかを判断できます。タイムシートや時間追跡ソフトウェアを使用すると、マネージャーは、簡単にプロジェクト資金について報告できるほか、各従業員の時間を使い方を確認できます。
プロジェクト会計は、個々のプロジェクトの進捗と日々の出費を追跡するのにとても便利です。上手に活かすことができれば、頻繁に報告を行うことにより、財務面の健全性をモニタリングし、潜在的な課題により進捗がペースダウンする前に、そうした課題を未然に認識することができます。
財務状況を毎日細かく追跡できるプロジェクト単位の会計は、マネージャーや関係者にさまざまなメリットをもたらします。別のアカウントを使うことで財務報告を楽に管理できるだけでなく、プロジェクト会計は、プロジェクトを事前に決定されたスコープの中で進めるためにも役立ちます。
組織の標準的な会計手段に加えて、プロジェクト会計を使用することには、主に以下のようなメリットがあります。
日々の費用や収益の可視性が改善される。
請求、経費、未払費用などがより正確に計算される。
2 つのプロジェクトの会計における違いを追跡できる。
プロジェクトの進捗と収益性をリアルタイムで報告できる。
有用なインサイトを使って将来のプロジェクトに挑戦する。
お客様に請求や進捗に関する正確なデータを提供できる。
リソース管理の改善。
計算された実際のコストと予測されたコストを比較することで、類似のプロジェクトのスコープと価格設定を決定する。
プロジェクト管理の仕方が改善されることによりプロジェクトが失敗するリスクが軽減される。
プロジェクト会計は、建築会社やエンジニアリング企業など、契約を結んで行われるビジネスの場で使われるのが最も一般的です。しかし、この手法はさまざまな種類の組織でも重宝します。
器用貧乏という言葉がありますが、何でも屋は悪いことではありません。コストや費用、収益をより適切に管理することが企業のメリットになるとお考えでしたら、プロジェクト会計を試してみてはいかがでしょう。
プロジェクト会計を管理プロセスに導入することが、期待通りの結果を手にする企業と、予算オーバーやリソース不足、コストが高くつく遅延などに悩む企業の分かれ目となるかもしれません。Asana を使えば、財務目標を順調に進められます。取引や時間の管理、プロジェクト資金の整理、財務報告書の作成といった作業を楽々とこなせるほか、財務ワークフローを自動化して、財務目標を追跡することもできます。
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