オンボーディングプロセスは、新入社員を歓迎し、成功へと導く体系化されたアプローチです。オンボーディングを正しく行うと、さらに優れた企業文化が構築され、インポスター症候群を防ぎ、新しいチームメンバーの自分の役割を学び成長する力を引き出せるようになります。優れたオンボーディングのメリットと実現方法を知り、さらに 4 つの簡単なステップで独自のオンボーディングプロセスを生み出しましょう。
更新: この記事は、オンボーディングとは何か、その必要性と OJT との違いに関する記述を含めて 2023年 3月に改訂されました。
「第一印象が肝心」という言葉は当を得ています。特に新入社員がチームに加わるときには、よい印象を与えたいものです。これまで素晴らしい応募者を求めて時間とリソースを費やしてきました。次は、新入社員にチームから歓迎されていて成功に必要なものが揃っていると感じてもらい、チームの一員になれたことを喜んでもらいましょう。
新規採用者のオンボーディングは、単なる新しい仕事のトレーニング期間ではありません。正しく行うと、企業文化を構築し、インポスター症候群が起こる前に抑制し、新入社員が必要なスキルを学ぶ機会になります。オンボーディングプロセスが体系化されていれば、新しいチームメンバー全員を成功へと導くことができるのです。
まずは「オンボーディング」の意味から確認しましょう。ビジネスシーンにおけるオンボーディング (On-boarding) は、新しく入社したメンバーが周りに馴染み、存分に能力を発揮できるようにするための一種のプログラムを指します。
新卒採用でも中途採用でも、新しい場所に飛びこむのには勇気がいることです。オンボーディングとは、新入社員をチームに歓迎し、すぐに仕事を始められるようにするための体系化されたアプローチであると言えます。
ワークマネジメントソフトウェア Asana では、オンボーディングプロジェクトを簡単に作成することができます。カスタマイズも自由自在なので、個々のニーズに対応したオンボーディングを構築することが可能です。詳しくは『新入社員のオンボーディングガイド』をご覧ください。
電子書籍をダウンロード: ワークマネジメントとは?チームがワークマネジメントを必要とする理由オンボーディングと並んでよく使われるビジネス用語に OJT (On the Job Training) があります。OJT は「職場内訓練」などとも呼ばれる人材育成メソッドですが、オンボーディングとの違いは何でしょうか?
大きな違いは、その内容にあります。オンボーディングは企業文化をはじめとする一般的な内容を学ぶのに対し、OJT は即戦力育成を目的にしているため、業務に必要なスキルやノウハウなど、具体的な知識を学ぶ場です。また、担当者も異なるが多く、オンボーディングの場合は会社の人事部、OJT の場合は職場の上司や先輩社員が直接指導するケースが多いでしょう。
新メンバーがすぐにチームに慣れるために必要なオンボーディングですが、その目的は他にもあります。ここでは、オンボーディングの効果とは何かについて考えてみましょう。
組織と文化について学ぶ
チームメイトを知る
他部門のパートナーと顔合わをする
それぞれの役割に必要なツールや情報について学ぶ
人材育成はもちろん、企業文化への理解を深め、周りとのつながりを確認し、コミュニケーションを促進するオンボーディングは、無くてはならないプロセスと言っても過言ではありません。
効果的なオンボーディングプロセスは、新しいチームメンバーが歓迎されていると感じ、学べるようにします。そして生産性を向上させ、優れた人材がさらに長期間勤続するようにもなります。Glassdoor の調査によると、しっかりしたオンボーディングプロセスがある組織では、従業員の離職率が 82% 改善し、生産性が 70% 以上向上することが判明しています。
では、効果的なオンボーディングのメリットには具体的にどういったポイントがあるのでしょうか?ひとつひとつチェックしてみましょう。
組織の文化は会社内の規範、ベストプラクティス、理想、共通の価値観すべてで成り立っています。優れた文化を育めば、そのメリットが全員にもたらされます。チームメンバーがサポートを感じられるようになり、彼らが仕事の意義を感じ、成長し、最高の仕事をするように促進できます。
優れた文化は、第一印象のよさからスタートします。オンボーディングプランを使い、前向きな職場環境を築く方法を紹介します。
会社のコアバリューを伝える時間を取りましょう
バリュー (価値観) はチームメンバーがどのような待遇を期待できるか示し、従業員がお互いに尊重しあって協力するためのガイドラインとなります。たとえば、Asana の価値観の中には誠実であること、責任を与えて負うこと、そしてマインドフルネスの実践などがあります。
多様性、インクルージョン、帰属意識 (DI&B) の基準を確立しましょう
チームメンバーには居心地がよいと感じてほしいものです。たとえば、全新入社員が会社の基準や従業員のリソースグループについて学べるように、オンボーディングプロセスに DI&B 研修セッションを入れてもよいでしょう。
また、チームメンバーがアイデンティティに関する体験や職場での問題を率直に話し合う特別なイベントがあれば、新入社員に伝えましょう。
フィードバックで信頼関係を築きましょう
効果的なフィードバックは社員の成長やモチベーションの向上につながるので、職場のコミュニケーションと従業員のエンゲージメントに欠かせません。新入社員からのフィードバックを求めれば、自身が必要とするものを伝えられますし、自分の出した意見が尊重されていると知ることができます。
逆に、新入社員にフィードバックを送ると、新しいチームメンバーがそこから学び、自分の役割を果たす上で安心感を持てるようになります。自分のやり方が正しくない場合には、担当者から助言してもらえるだろうと信用できるからです。
記事: チームの士気が社員のパフォーマンスに与える影響インポスター症候群とは、たとえば自分は与えられた仕事をするに値しない、または同僚が考えているほどの成果を上げていないと考えるなどといった、自分の能力に関する自己不信の感情です。これに対処することは難しく、燃え尽き症候群 (バーンアウト) や自己評価の低下、同僚との断絶につながることがあります。また、インポスター症候群は驚くほど新入社員に多いもので、当社の調査によると、2020年に、10 人の新入社員のうち約 8 人がインポスター症候群を体験しています。
マネージャーは、下記の構成要素をオンボーディングプログラムに組み込むことで、インポスター症候群の防止策をすぐに講じられます。
目標を使い、明確な期待値を設定しましょう
インポスター症候群では、事実を重視することが重要です。目標を設定することで、チームメンバーに成功の明確な定義と、進捗状況の測定基準がもたらされます。
たとえば、新入社員が最初の 30 日間、60 日間、90 日間以内に達成すべき事柄の目標を設定しましょう。トレーニングを最初の数週間以内に完了させるといった、小さな短期目標です。その後、新入社員と共に、測定可能な長期目標も設定できます。設定する目標はそれぞれ、SMART であるようにしましょう。つまり Specific (具体的)、Measurable (測定可能)、Attainable (達成可能)、Realistic (現実的)、Time-bound (期限がある) の条件を満たす目標を設定するのです。
記事: 30-60-90 日プラン: 新規採用者のオンボーディングを軽々とこなす方法新入社員にはメンターを付けましょう
通常はチームの同僚がメンターとなり、定期的に新入社員と会います。つまり、メンターとは新入社員がマネージャー以外に話をできる人であり、このためプレッシャーが低い環境で問題を報告する場が持てます。
オンボーディング期間中にメンターを付けると、チームにより長い期間定着することも促進されます。Deloitte の調査によると、組織に 5 年以上勤続しようとする従業員では、それよりも早い時期に退職を計画している従業員と比較して、メンターが付いている割合が 2 倍多くなっています。
チームのコミュニケーション方法を具体化しましょう
バーチャルチームの場合には、新入社員がオンサイト勤務をしていない場合、質問することがより難しくなるので、特に重要です。特定の問題について相談すべき人物、どのような場合にどのコミュニケーションツールを使用するか、チームメンバーがステータスの最新情報やプロジェクトの詳細についてどの程度の頻度で話すべきか、非同期コミュニケーションではなく、対面 (またはバーチャル) コミュニケーションが必要な場合はどのような場合かを説明するコミュニケーション計画を作成し、共有しましょう。
また、Slack などのインスタントメッセージングアプリに関する期待値を設定するのも有益です。たとえば、チームメンバーはメッセージにすぐに応答する必要はないと強調できます。
新しい仕事を始めるときは、膨大な物事を覚えることになります。新入社員は新しいスキルを習得し、会社のプロセスを詳しく見て、職務を理解し、部門外のパートナーとの協力方法を把握する必要があります。体系化されたオンボーディングを経験すると、これらすべての情報を吸収する時間が得られるので、仕事が本格始動したときに順調に対応できます。
オンボーディング期間中に学習機会を優先する方法を紹介します。
オンボーディングプロセスの期間は、3 か月以上になるようにしましょう
採用担当マネージャーや人事担当者が新入社員のオンボーディングに費やす期間は、1 か月未満であることが多いですが、これでは新入社員が自分の役割に自信を持つには不十分です。理想を言うと、新入社員が徐々に仕事を始められるようにするために必要となるオンボーディングの期間は 3 ~ 6 か月間です。
また、さらに延長が必要になることもあるでしょう。ある調査では、最初の 1 年間オンボーディングがある場合には、従業員の離職率が改善されることが示されています。この要因として、多くの新入社員が、勤務を続けるか退職するかを入社後 6 か月間以内に決めることが挙げられます。これは、その期間中は新入社員がチームに貢献をしないということではありません。新入社員が会社とチームへの理解を深められるよう、新入社員の学びの機会を探し、提供し続ける必要があるということです。
新入社員に、体系化されていない時間を持たせましょう
立て続けにトレーニングセッションを詰め込むのではなく、新しいチームメンバーが情報を一読して、自分自身で探っていくための時間をたっぷりと確保しましょう。これは、従業員が会社のプロセスに不慣れな最初の数週間には、特に重要です。このためには、新規採用者が配布された資料に目を通すための所要時間を推定しておきましょう。そして、新入社員が休憩をとり、情報を自分のものにできるよう、予備の時間を加えます。
情報に簡単にアクセスできるようにしましょう
新規採用者はオンボーディング期間中にプロジェクトの資料や文書に目を通すので、情報を簡単に見つけられるようにしましょう。ただし、チームメンバーが読めるように 1 件 1 件のファイルを共有するのは時間がかかりますし、すべてのリソースを網羅した一覧を作ることはほぼ不可能です。
ここで、Asana のようなプロジェクト管理プログラムが役立ちます。Asana でプロジェクトを共有すると、チームメンバーがすべての関連タスクや文書、データ、参加者を見ることができ、また他に興味のある関連プロジェクトがあればそれを見ることもできます。完全な一覧をまとめようと試みるのではなく、関連のプロジェクトに新入社員を加えて、自身のペースで探ってもらうようにしましょう。
Asana のプロジェクトマネジメント機能を試す優れたオンボーディングプロセスを生み出すことは、最初は大変な作業だと思えるかもしれません。幸い、一から始める必要はありません。今ある会社のプロセスから築く場合でも、従業員オンボーディングテンプレートを使いスピーディーにプロセスを開始する場合でも、チームメンバーを効果的にオンボードするための 4 つのステップをご紹介します。
オンボーディングの中心は、学ぶことです。つまり、新入社員が担当の役割を果たすために何を知る必要があるのかを判断し、彼らが必要な情報を得てトレーニングを受けられるようにすることが重要です。ハードスキルだけにとどまらず、会社の文化や価値観、チーム構成、従業員間のフィードバックのやりとりなど、細かい点についても説明が必要です。
重要な情報は、すべての新入社員が知っておかなければならない詳細情報と、新入社員の役割に特有の事柄という 2 つのコンテンツカテゴリに分類しましょう。たとえば、すべての新入社員は会社の文化について知る必要がありますが、会社の開発環境や技術スタックについて知る必要があるのはエンジニアのみです。
何から始めればよいかわからない場合は、こちらの例をご覧ください。
会社の文化と価値観: 新入社員が期待できる待遇や、全員が受け入れられていると感じるような、よい従業員体験を生み出すために組織が実施していることなどです。
企業のポリシーおよびプロセス: 年間のレビューサイクルの実行方法や、休暇取得の申請方法などです。
チームのプロセス: チームがお互いにコミュニケーションを取る方法や、さまざまなチームミーティングの目的などです。
チームの構造および職務: これを共有することで、新入社員が特定の問題や質問がある場合に誰に問い合わせればよいのかがわかります。
ジョブスキル。例: デザイナーは会社のウェブサイトのルックアンドフィールを理解する必要があるでしょう。
ツール。例: アカウントマネージャーは、Salesforce のリード管理方法を学ぶ必要があるでしょう。
職務特有のプロセス。例: IT マネージャーは、コンピューター交換の発注方法を学ぶ必要があります。
各自の役割と期待事項。例: チームリードの職務は、新人レベルのチームメンバーのものとは異なります。
次に、新入社員が就業する際に行う必要がある、事物に関するタスクを決定する必要があります。通常は新入社員とオンボーディング担当者、人事部門、IT 部門が行う以下のようなタスクの組み合わせとなります。
テクニカルセットアップ。たとえば、新入社員用のコンピューターの用意および設定が必要です。
オフィスへのアクセス。新入社員用の鍵やアクセスバッジの作成などです。
物理的なワークスペースの設定。オフィスやデスクのスペースの確保や、自宅にホームオフィス機器を購入するための手当の提供などです。
人事タスク。各種福利厚生および直接預金のセットアップなどです。
ツールへのアクセス。新入社員がオンラインツールやチームのソフトウェアを利用できるように、アカウントを作成する必要がある場合があります。
セキュリティやプライバシーに関して必要なトレーニング。
これらの要件には、会社ですでに実施しているプロセスがある可能性もあります。はじめのステップとして、新入社員に対して自動的に行われることと、オンボーディング担当者自身が行う必要があることを、IT 部門と人事部に確認します。
新入社員を対象としたオンボーディングプロセスの一環として、これから定期的に一緒に業務をすることになるチームメンバーや他部署のパートナーとの顔合わせを行います。マネージャーとして、オンボーディング中に新入社員が必要な人とつながれるようにしましょう。そうすると、どのプロジェクトで誰と一緒に仕事をすることになるのかが明確にわかります。就業後数週間内に会わせるべき全人物のリストを作成しましょう。それに基づいて顔合わせミーティングの予定を立てられます。
新入社員にメンターを付ける場合には、担当者を指定しましょう。新入社員が入社間もない時期に定期的に会う人物をメンターにします。また、メンターも、新入社員が入社後数週間内に会っておくべき人物を提案してくれる場合があります。
最も大切なのは、新入社員が同僚やチームメンバーと会うための時間を確保することです。たとえば、初日のチームランチなどのグループイベントをしたり、新しいチームメイトとの 1 対 1 での時間をとったりします。
記事: コミュニケーションを改善し仲間意識を高める 45 のチームビルディングゲームすべてをまとめて、オンボーディングタイムラインを作成しましょう。オンボーディングタイムラインは、新入社員のオンボーディングプロセスの各ステップが実行されるタイミングを説明する資料であり、勤務初日からの明確な道を用意するものです。タイムラインでは以下の情報を伝えるようにしましょう。
いつ、オンボーディングを開始するか: 社員が出勤を開始する前に、給与支払や税金に関する情報の取得、備品などのセットアップ、チームからの個別の歓迎メッセージの送信など、オンボーディングのロジスティクス面を開始することをおすすめします。
オンボーディングプロセスの期間: 新入社員に伝える必要があるすべての情報とスキルの段取りが決まっているので、仕事に慣れるまでの所要時間について大体の感覚をつかんでいることでしょう。予備の時間を必ず十分に取り、新入社員が休憩して新たに得た情報を処理できるようにします。また、オンボーディングプロセス全体にかかる期間を新入社員に伝えることも重要で、これで新入社員は各タスクにかけられる時間を把握できます。この時間は変えられないわけではありません。新入社員が習得をするスピードに応じて、オンボーディングのペースをいつでも調整できます。
重要な情報を伝えるためのトレーニングセッションをいつ予定すべきか: たとえば、第 1 週目に会社のプロセスについての概要レベルのセッションを、第 2 ~ 3 週目にスキルのトレーニングを予定することをおすすめします。
新入社員が、特定のスキルを学び、活用を始める必要があるときはいつか: スキルのトレーニングセッションは、そのスキルを実際に実践する予定の付近に実施しましょう。実践の中で、理解していたものが定着し、トレーニング中に説明されなかった部分について質問をすることができます。
新入社員は、誰と、いつ顔合わせをするべきか: 第 1 週目には毎日メンターに状況報告をして、第 2 週目または第 3 週目に他部署の関係者と顔合わせすることをおすすめします。
初日、1 週間後、1 か月後などに新入社員が達成するべき目標は何か: 新入社員が、いつまでに何を達成するかについての期待を明確に示しましょう。たとえば、人事部門の新しい採用担当者は、最初の 1 か月間、同僚が行う採用プロセスをシャドウイングすることを目標とします。最初に設定する目標は目安なので、必要に応じて、新入社員と共に調整できます。
新入社員とフィードバックをやりとりするミーティングをいつにするか: どのような具合に進んでいるか、もっとよくできる点は何かを伝えあう形式ばらない進捗確認や、1 か月終了時または 100 日目の体系化されたフィードバックセッションを行えます。
オンボーディングチェックリストは、オンボーディングプロセスに新入社員を成功に導くために必要な全ステップが確実に含まれるようにするために、便利なツールです。たとえば、新入社員の初日、第 1 週、最初の 1 か月などのセクションで個々のタスクをグループ分けして記載した、オンボーディングタイムラインのバージョンです。
Asana などのプロジェクト管理ソフトウェアを使えば、オンボーディングチェックリストを実際の行動につなげられます。たとえば、関連情報へのリンクや特定の期日が記載されたタスクを作成し、自分自身、IT チーム、人事チーム、または新入社員に割り当てます。これで、チェックリストは単なる静的な書類にとどまらず、オンボーディング担当者と新入社員がここから業務を行い共に完了できる、生きたリソースになります。
無料の入社準備テンプレートオンボーディングの意味とその重要性、メリットについて解説しました。効果的なプロセスを構築するためのステップもご紹介したので、参考にしてみてください。
オンボーディングプロセスは体系化することで、その効果を最大限発揮することができます。従業員が新しい職場で成功できるようになるだけではなく、優れた従業員が長く勤務したくなるような前向きな文化がある、内面から優れた会社になれます。