共感マップは、顧客の思考や感情、行動を把握しやすくするツールです。製品チームでは、ユーザーエクスペリエンスを改善するために共感マップを使うことがよくあります。この記事では、共感マップを作成して、ビジネス戦略を強化する方法をご紹介します。
「相手の身になる」という言い回しはよく耳にしますが、これは共感の行動への表れです。共感力を育むと、他人の人生を自分のことのように思い描けるようになります。このソフトスキルは、世の中の人々の行動をよりよく理解するのに役立ちます。
共感マップを作ることは、顧客のニーズを突き止めるためにも有効です。詳細なユーザーペルソナを作成し、そのユーザーの身になって想像することで、カスタマーエクスペリエンスに関する貴重な識見が得られます。こうしたインサイトは、製品の向上や販売戦略の強化に活かすことができます。
共感マップは、ターゲットオーディエンスがどう考え、感じ、行動しているのかを発見し、彼らの希望やニーズをよりよく理解するためのツールです。マップは通常、「考えていること・感じていること」「言っていること・行動」「見ていること」「聞いていること」の 4 つの要素で構成されます。
このツールを使えるようになる前に、まず、ターゲットオーディエンスを代表するようなユーザーペルソナやシナリオを作る必要があります。ペルソナの作成には 2 つの「手法」があります。1 つがペルソナの描写です。たとえば、「自信のある買い物客」や「好奇心旺盛な買い手」といったものが考えられます。こうしたペルソナのタイプは、人を動機づけるものを大まかに示唆します。製品 (プロダクト) 、マーケティング、セールスの各チームが、オーディエンスの全体像を理解する上で有効です。
もう一つのペルソナのタイプが「個人」です。共感マップで使用するのはこちらのタイプです。このペルソナは、名前や顔、年齢、好きなものや嫌いなものがある人物として設定します。具体的な名前、顔、年齢をペルソナに与えることで、共感することが容易になります。
製品チーム向け無料テンプレート共感マップは、オーディエンスをよりよく知り、その人々の考え方を把握したいときに利用します。製品を計画する際には特に有効ですが、すでに出来上がった製品の改良にも活用できます。
共感マップは、マーケティングキャンペーンや販売戦略の振り返りのためのツールとしても利用できます。一から戦略を立てるにも、現在の戦略の穴を探すにも、共感マップは優れた手がかりや根拠になります。
エンドユーザー像を考慮に入れながらデザインプロセスを進めたい製品チーム。
顧客の悩みと要望を特定してビジネス戦略を改善したいマーケティングチーム。
ユーザーエクスペリエンス (UX) とユーザーインターフェイス (UI) についてのインサイトを得たいデザインチームや開発チーム。
共感マップの作成は、コラボレーションが必要なアクティビティです。チームメンバーのブレインストーミングでユーザーエクスペリエンスの想定事例を出し合い、アイデアをまとめて最も正確なユーザー像を導き出します。
共感マップは、4 つの要素が絡み合い、エンドユーザーの意識を把握できるようにします。この 4 つの要素のほかに、ペルソナにとってのペイン (解決したい悩み) と、ゲイン (手に入れたいもの)、つまりニーズと期待事項を想定します。このペインとゲインを道しるべに、ほかの 4 つの要素を検討して、顧客の視点からその人生を探っていきます。
ペイン: ユーザーの生活における悩みは何か?ユーザーのニーズは何か?
ゲイン: ユーザーのニーズを満たすための期待事項は何か?
考えていること・感じていること: ユーザーの主な不安や希望は何か?どんな価値観を持っているか?普段考えていることは?
聞いていること: 生活の中で最もユーザーに影響を与えているのは誰か?
見ていること: ユーザーが身の回りで目にし、影響を受けているものは何か?
言っていること・行動: ニーズを満たすために、ユーザーはどんな言動をしているか?
共感マップは、ユーザーペルソナと組み合わせると作成しやすくなります。この方法だと、ユーザー像を把握してから、その人の生活を分析できるためです。実際に役立つ共感マップを作るには、架空の個人のユーザーペルソナと組み合わせる必要があることを覚えておきましょう。まだ顧客ペルソナを想定していない場合は、共感マップの上にペルソナについて簡単に説明を付け加えます。
企業は普通、複数の顧客ペルソナを想定しています。そのすべてを理解するには、各ペルソナについて個別の共感マップを作成します。下のステップに従って共感マップを作成し、このプロセスをワークフローに組み込めば、チームメンバーが必要に応じて手順を繰り返せます。
共感マップの目標を明確に定義することで、各ペルソナをどこまで掘り下げるべきかがわかります。ビジネス戦略の改善や顧客ニーズを満たすことなど、全体的な目標があるとしても、作成したマップが有効かどうかの判断には、個別の目標が有効です。
たとえば、次のような目標が考えられます。
25 ~ 35 歳の年齢層のエンドユーザーに関するインサイトを得る。
現行製品がオーディエンスのニーズを満たしていない点の概要をつかむ。
該当のオーディエンスのニーズを満たすように、製品を改良する方法を判断する。
共感マップの目標を作成する一方、マップのスコープも定義しておきましょう。シナリオを中心にスコープの枠組みを決めるようにします。共感マップのスコープは、そのシナリオでユーザーがどんな体験をするかを探る際に役立ちます。
ユーザーの立場になって、観察可能な外的な要素から始めましょう。ユーザー行動についてあなたなりの考えがあったとしても、この段階の目標は、ユーザーがそのように行動する「理由」をより正確に捉えることです。
行動: ユーザーリサーチを行い、ユーザーの行動を明らかにしましょう。設定したペルソナに該当する顧客データを集めます。これらの顧客には一定の行動パターンがあるでしょうか?彼らが使用するテクノロジーは何か、他者との関わり方、問題が起きた場合の解決方法などについて考えます。
言っていること: ユーザーにインタビューし、アクティブリスニングの手法で耳を傾け、特定の状況でユーザーがどんなことを語っているかを詳しく知りましょう。カスタマーサービスの通話をモニタリングすることも有効です。
見ていること: 年齢、場所、性格は、何がユーザーに影響を与えるかを決定づける要素です。ユーザーの行動に基づいて、何がユーザーに影響を与えているのかを突き止めましょう。これには、オンライン広告、読んでいるニュース、視聴しているテレビ番組なども含まれます。
聞いていること: ユーザーの身の回りで、ユーザーに影響を与えているものを指します。たとえば、母親になったばかりで子どもといつも一緒にいるユーザーなら、製品の安全性を重視するでしょう。大学生なら、周囲から浮かないように、製品のデザインを優先する可能性があります。
観察可能なさまざまな要素を検討したら、次はユーザーの心の中を覗いてみましょう。他人の思考を知ることはできませんが、知識に基づく推測は可能です。
考えていること: 思考は感情を引き起こす根本原因であることを覚えておきましょう。たとえば、製品を選ぶときに迷って決められない「意思決定の麻痺状態」に陥っているユーザーは、「間違った選択をするのが怖い」と考えている可能性があります。
感じていること: 問題に対するユーザーの行動や態度についてわかっていることを基に、ユーザーが何を感じているかを推測しましょう。製品の購入に不安を抱き、「意思決定の麻痺状態」になるユーザーもいる一方、衝動的なユーザーは、検索直後に製品を選ぶかもしれません。
「考えていること」と「感じていること」の内容が、ユーザーの全員に当てはまらなくても構いません。同じターゲットオーディエンスのユーザーでも、考え方や行動は異なるものです。多くのユーザーに最も共通する感情を把握することを目指しましょう。
共感マップが完成したら、視点を広げましょう。マップとユーザーエクスペリエンスについて振り返り、チームメンバーに、マップ作成について考えたことや、今後の方針について、マップから新たな洞察やアイデアが得られたかを共有してもらいます。
たとえば、想定よりもユーザーが製品の安全性に関心を持っていることに気づいたら、これを基に、安全機能を前面に押し出したマーケティングを行うことができます。共感マップを共有フォルダーに入れておけば、チーム全体が今後のプロジェクトの際に参照できます。
記事: 成功する市場進出 (GTM) 戦略を立てる 9 ステップ下の画像は共感マップの例です。この例にあるステファニー・デイヴィスは、大都市に住み、リモートで働く 29 歳のライターです。コンピューターが壊れてしまったので、新しいコンピューターを買おうとしています。
共感マップの無料テンプレートペイン (悩み):
コンピューターが壊れた。
リモートでライターの仕事をするための新しいコンピューターが必要。
ゲイン (手に入れたいもの):
インターフェイスがシンプルなコンピューターが欲しい。
長く使えるコンピューターなら価格は高くても構わない。
考えていること & 感じていること:
今までのコンピューターが 3 年で壊れたので不満を感じている。
コンピューターの選択肢が多すぎて途方に暮れている。
「正しい選択をしたい」
聞いていること:
友人は「処理速度が速いコンピューターを選んだ」と言っている。
上司は「軽量のコンピューターを選んだ」と言っている。
レビューには「クリエイターには Mac が適している。ゲーマーなら PC だ」と書かれている。
見ていること:
Mac のカラフルでお洒落な広告をいろいろな場所で見かける。
街で見かける人はみんな Apple 製品を持っている。
Mac を勧める、クリエイター向けのブログを読んでいる。
言っていること & 行動:
「購入価値のある製品が欲しい」
「価格相応の製品が欲しい」
カスタマーレビューや製品レビューを熱心に検索している。
この共感マップの例から、ステファニーの行動に基づき、自分の製品をフレーミングします。たとえば、ステファニーのようなユーザーには、高品質な製品を提供すれば、少し高めの価格設定が可能であることがわかります。また、製品レビューとカスタマーレビューが、ステファニーのようなユーザーには非常に重要であることも判断できます。
下のボタンをクリックし、共感マップのテンプレートを使って、顧客行動をさらに深く掘り下げましょう。
共感マップの無料テンプレート共感マップの 4 つの要素のそれぞれを検討する際には、以下に紹介するベストプラクティスを活用しましょう。
無意識の偏見を避ける: 自覚はなくても、人は無意識の偏見を持っていることがあります。こうした偏見によって、ユーザーの細かい情報を見落とすかもしれません。偏見を克服するには、それがどんな偏見なのかを知り、意識することが有効です。主観的な結論を避けるには、常に事実に基づいて思考する必要があります。
データによる裏付けをとる: ユーザーデータを使って、共感マップを補強しましょう。ユーザーが特定の製品の広告を見ている、あるいは特定の資料を読んでいると書いたなら、そのことを統計によって確かめます。特定のユーザー層が最も頻繁に読んでいるものや、ネット上で見ているものはデータで確認できます。
ユーザーの隠れたニーズを見つける: 共感マップを作成したら、表面に表れないニーズを探しましょう。ユーザーはコンピューターが壊れたので、新しいものを欲しがっているのは確かですが、ソフトウェアを使って、新しいコンピューターを管理したい可能性はないでしょうか?
共感的になることは、必ずしも簡単ではありません。練習を重ね、誰かの立場になって考え、自分の視点を取り除くようにしましょう。共感マップを活用すれば、チームはユーザーの立場で、そのニーズにふさわしい製品を作り、市場にアピールできるはずです。
共感マップは、オーディエンスを理解するための強力なツールです。共感マップによってさまざまなインサイトを得たら、次にアクションプランを立てる必要があります。
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