プロジェクトマネジメントにおいてしばしば聞かれる「CSF」というビジネス用語。この CSF とは何か、知っていますか?CSF はプロジェクトやビジネス目標を達成するための “ツール” として役立ちます。この記事では、CSF とは何か、その意味と重要性、設定するときのステップと役立つヒントをまとめます。
更新: この記事は、CSF をうまく設定するためのヒントに関する記述を含めて 2024年 7月に改訂されました。
目標と主な結果 (OKR) を導入して目標設定を改善するための無料ガイド。適切な目標を設定し、会社全体で導入する方法を解説します。
目標設定は、すべてが頑丈な土台によって決まるという点で、ピラミッドの建設によく似ています。安定した基盤がなければその上にブロックを積み上げていくことはできません。しかし、その基盤を一から作るのは、なかなか大変な作業です。
そこで活用したいのが CSF です。CSF とは、目標達成のカギとなる、つまりチームがクリアするべき成功要因を指します。この CSF (重要成功要因) を 3 年や 5 年のスパンの戦略プランと組み合わせることで、目標設定の強固な土台作りが可能になります。その安定した土台に、具体的なプロジェクトの成果物やプロジェクト目標を積み上げることによって、あらゆる目標を計画通りに達成できるようになるのです。
これまで重要成功要因を設定したことがない、あるいは戦略プランのどこから手をつけるべきかわからないという方に、初めに知っておくべき CSF の基礎知識をお伝えします。
無料の企業目標テンプレートCSF とは、組織の事業目標や経営目標の達成に影響を及ぼす戦略目標です。日本語では「重要成功要因」とも呼ばれます。プロジェクトやプログラム毎に CSF を導入することもできますが、CSF は組織の事業戦略に密接にかかわるため、多くの場合、部門全体や組織全体などで活用されます。CSF をクリアすると、通常は組織にとって有意義な価値や利益がもたらされるため、企業は CSF を洗い出し、そこへ積極的に資源投下をしていかなくてはなりません。
CSF は、Critical Success Factor の頭文字をとった略語です。それぞれの単語が「重要」「成功」「要因」と訳されるので、日本語では「重要成功要因」と呼ばれることも多いです。CSF の読み方はそのまま「シーエスエフ」です。
成功要因という概念は、1961 年にマッキンゼー・アンド・カンパニーの顧問だった D. Ronald Daniel が初めて提唱しました。その後、John F. Rockart がこの手法を体系化し、「重要成功要因 (Critical Success Factor)」と名付けて、「Harvard Business Review」に記事を寄稿しました。この 1979 年の記事で、Rockart は CSF を次のように定義しています。
CSF はこれと決まっているわけではなく、全体的な目標としてチームに進むべき方向性を示すものです。プロジェクトマネージャーは CSF を活用することで、各自のプロジェクトを成功に導くことができます。
設定する CSF は、組織全体の戦略目標によって決まります。ここでは、組織の 3 か年計画や 5 か年計画に合わせて作成される CSF の例をいくつかご紹介しましょう。
マーケティング戦略のアップデート
製品の新機能
業績管理のチェック
新規顧客を獲得するための強力なセールスチームの設置
毎日の仕事につながるチーム目標・企業目標は何かを明確にし、パフォーマンス向上を目指しましょう。Asana なら、各指標の達成度や達成状況を一目で把握し、チーム全体でシェアできます。ツールに関するお問い合わせはこちらから。
効果的な目標を設定する方法Asana については『1 分でわかる Asana』動画をご覧ください。
CSF と KPI は混同されやすいビジネス用語なので、その違いを確認しましょう。まず先述のとおり、CSF は全体的な戦略目標であり、CSF をクリアしていくことで、さらに大きなビジネス目標達成が近づきます。CSF は「目標」ですから、必ずしも実行に関する具体的内容が含まれているとは限りません。一方の KPI (重要業績評価指標) は、目標達成までのプロセスに設けられた “中間目標数値” です。定量的指標なので、KPI は具体的かつ測定可能な要件である必要があります。この点が CSF と KPI の違いです。
たとえば、ブランド認知度を高めるという CSF を想定してみましょう。これは、組織に重要な価値とマーケットシェアをもたらす、非常に大きな目標です。この CSF を実現するには、専門のプロジェクトやチームがさまざまなイニシアチブに取り組み、定量的な重要業績評価指標 (KPI) を設定して、チームがいつまでに何を達成するべきなのか、明確に把握する必要があるわけです。
Asana で目標を設定し、達成する目標設定では、多くの略語を使いこなし、その内容を把握しなければなりません。どの目標設定の手法も少しずつ異なりますが、まずは略語に慌てないようにしましょう。それぞれが何を表し、どこが違うのかを理解するために、典型的な戦略プランのプロセスを解説します。
戦略プランを立てることは、あらゆる目標設定プロセスの前提です。目標を設定する前に、まず戦略を立てる必要があります。戦略プランを立てれば、組織がどこへ向かい、目標を達成するためにどんなアクションが必要かを定義づけすることができます。
記事: 戦略プランニングは初めてですか?ここから始めましょう。KPA (重要業績分野) とは、組織の成功を左右する、事業にとって重要な分野を指します。たとえば、ソフトウェア会社であれば、オンラインソフトウェアでバグが発生しないことが重要業績分野の 1 つになります。あるいは製造業なら、工場が順調に稼働していることが KPA になるでしょう。
目標設定の際に、注目すべき分野を特定するには、重要業績分野を理解することが重要です。先ほどのソフトウェア会社の例で、もしソフトウェアでバグやダウンタイムが頻繁に発生しているなら、そうしたダウンタイムを短縮、解消することが適切な目標となります。
一方の KRA とは Key Result Areas (重要結果領域) の略で、戦略プランで特定した重要ポイントがこれに当たります。KRA の範囲は目標よりも大きく、たとえば、「生産性」や「効率」などが KRA に設定されます。その上で、目標を設定し、これらの領域を改善していくには具体的に何が必要かを細かく決めていきます。
戦略プランを立てたら、目標設定の手法を実践に移します。目標設定手法としては、主に OKR と CSF (+ KPI) の 2 つがあります。この 2 つの手法は非常に似ているため、実際に計画する際は、いずれか一方だけを使用しましょう。
OKR は Objective and Key Results (目標と主要な結果) の略です。初めて目標を設定するなら、次のようなシンプルな構成の OKR で始めるのがおすすめです。
私は [目標] を、[主要な結果] によって測定する。
目標は、達成したいゴールです。ブランドの認知度を上げる、業界最大の二酸化炭素排出量削減を達成する、といったことがこれに相当します。
主要な結果は、目標達成への進捗を測定する指標です。たとえば、ウェブサイトの閲覧数 100 万回を達成する、製品の材料の 4 分の 1 を堆肥として利用できる有機素材にする、といったことです。
CSF は、OKR の O (目標) と同じ働きをします。これらは組織が 3 年や 5 年のスパンで立てている戦略プランを実現するために取り組む主要な目標です。CSF を具体的なアクションに結びつけるには、KPI と組み合わせます。KPI が適切であれば、重要成功要因の達成、そしてその結果として戦略目標の達成へ向けて組織が順調に進んでいるかを把握できます。
従来より、CSF は 5 つのタイプに分類されます。それぞれのタイプを理解することで、CSF を見落とさずに、次の目標期間のプランを立てることができます。ここでは、CSF の種類を例を見ながらひとつひとつ確認していきましょう。
競争力を維持するために、組織が特定の CSF をクリアし続けなければならない場合があります。業界関連の CSF を把握するには、積極的に業界の動向を追跡し、予測する必要があります。
イノベーションによって競合他社の機先を制し続ける
持続可能なパッケージングや製造によって、顧客の期待に応える
業界水準を上回るカスタマーサービスを提供する
競合に関する重要成功要因とは、競合他社の動向によって左右される要因を指します。つまり他社の成功や失敗によって自社が影響を受けるのです。これらの CSF は競合他社の業績と自社の業績を 1 対 1 で比較するのではなく、顧客が競合他社と比べて自社の事業をどう捉えるかが重要なポイントになります。
「ラグジュアリー」なブランドとして認識される
特定の顧客層の関心を集める
その名前の通り、一時的な要因は会社に恒久的に影響するものではありません。これらの CSF は、ビジネスにプラスやマイナスの影響を与える、時限的かつ偶然的なものです。こうした要因を特定し、場合によっては克服することで、今後の事業の成長を後押しできます。
ビジネスモデルに対する、予定外の一時的な変更
特定の一時的な事象による人員のキャパシティ低下
新オフィスの開設や新市場進出に伴う人材の雇用
環境的な CSF は、組織の直接的な力が及ばない事象を指します。かといって、重要度が下がるわけではありません。環境的な要因を積極的に特定、追跡すれば、将来起こりうる問題に先手を打ち、不要なリスクを避けられるためです。
経済不況
事業に影響を与える政策変更
業界への法規制
他の 4 つの CSF のタイプとは異なり、管理職もしくはマネジメントクラスに関わる重要成功要因は、組織全体ではなく、人物や職位に限定的なものです。これを読んでいる管理職の方は、ご自身のマネジメントやリーダーシップスキルに磨きをかけるため、CSF を設定してみましょう。
チーム全体にプロジェクトのリスク管理プロセスを導入する
チームの仕事量を 1 か所で調整・管理すれば、仕事の生産性を上げ、適切な人材を適切なタスクに割り当てることができます。Asana で「仕事量の見える化」を実現しましょう。
効率的に工数管理をする方法CSF は、成功の基準を設定、管理する優れた方法です。次の 5 つのステップで成功をつかみましょう。
CSF は、組織の 3 か年、あるいは 5 か年の戦略プランに基づくため、まずは戦略プランを作成しましょう。戦略プランは数年にわたる全体的な目標を決めるものであり、この後、CSF を決定する重要な土台となります。
戦略プランを立てるときは、戦略計画テンプレートを使い、効率的に立案しましょう。
戦略プランを作成したら、戦略管理プロジェクトチームを結成します。このチームが、CSF を設定する主要な関係者です。戦略プランを確認し、ビジネスプロセスと組織にとって事業の成功を左右する重要結果領域 (KRA) を特定します。たとえば、次の目標期間の KRA を「顧客満足度」に設定すると仮定しましょう。
KRA を特定したら、これらの目標の達成に役立つ CSF を追加していきます。たとえば、KRA が顧客満足度であれば、専門のカスタマーサービスチームによって、顧客との関係性を改善することが関連の CSF になります。CSF を特定したら、チーム全体と共有し、フィードバックを求めます。このステップを効率的に行うには、コラボレーションツールを活用しましょう。スムーズなファイルの共有や手軽なコミュニケーション機能などを使えば、チームの仕事管理も効率化します。
くり返し作業を自動化し、コミュニケーションの円滑化とコラボレーションの向上にも役立つ Asana は、30 日間無料ですべての機能をお試しいただけます。
仕事を楽にする「コラボレーションツール」とは?円滑な共同作業のための戦略、テクニック、インサイトなど、世界トップレベルの効果的なコラボレーションを支えるすべてをご紹介します。
CSF をアクションに変えるために、KPI を設定します。たとえば、CSF が「専門カスタマーサービスチームによって顧客との関係性を改善すること」なら、四半期末までに 10 名以上のメンバーから成るカスタマーサクセスチームを立ち上げることを KPI とし、次に、年度末までにカスタマーサービスの対応までの時間を 12 時間以内にすることを第 2 の KPI とします。
CSF と KPI を作成したら、それらをモニタリングして成功に導くだけです。この際、組織の全体目標を追跡、管理する目標管理システムをセットアップするのがおすすめです。このシステムは目標に関連するプロジェクトやイニシアチブの管理にも役立ちます。
CSF は企業の全体目標と深く絡む、非常に重要な管理項目です。CSF を適切に設定し、追跡および管理することで、大きな目標達成へと近づくことができます。
CSF を特定するために企業の現状を把握するには、SWOT 分析やファイブフォース分析、PEST 分析といったフレームワークを用いることがおすすめです。ただし、いくらこういった有効なフレームワークを用いて CSF を設定しても、正しく追跡および管理されなければ、意味がありません。効率的かつ効果的に CSF を管理するには、クラウド型ワークマネジメントツールなどで行うようにします。こういったデジタルツールなら、ステークホルダー全員がいつでもアクセスできるだけでなく、リアルタイムの進捗管理も効率的に行えます。こういったツールで CSF を正しく管理し、必要な場合は調整や見直しも迅速に実施できるような体制を整えておくのが重要です。
CSF とは何か、その意味と種類、特定するステップを解説しました。CSF と KPI の違いも紹介したので、適切に両者を設定し、戦略目標を立てましょう。
適切な CSF は、戦略プランの最重要ポイントにチームの目を引きつけ、目標達成を助けます。初めて CSF を管理するなら、ぜひ Asana の「ゴール」のような、目標管理ツールを使用しましょう。そうすることで、チームメンバー全員が、正確に CSF とそれを達成するための KPI、そして各プロジェクトの進捗を明確に把握できます。
組織におけるミッション、目標、仕事をスムーズにつなげ、可視化する方法を解説します。