この記事では、アジャイル手法における「ベロシティ」の意味とその活用方法、注意点を解説します。ベロシティの意味を正しく理解して、より効率的にプロジェクトを進められるようにしましょう。
更新: この記事は、ベロシティの誤った使い方に関する記述を含めて 2024年 3月に改訂されました。
アジャイルについての詳細は『アジャイルとは?手法とメリットを解説』をご覧ください。
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ビジネスにおけるベロシティ (velocity) とは「作業が進む速度」または「作業量」のことを指します。
プロジェクトを進めるには、いくつかのフレームワークがありますが、その中でも人気のひとつなのが「スクラム」で、ベロシティはこのスクラム内で用いられます。スクラムは短いサイクルを迅速に繰り返すフレームワークで、以前はシステム開発やソフトウェア開発チームで主に使われていましたが、現在ではその他幅広いチームで採用されています。
もう少し詳しく見ていきましょう。ベロシティを理解するには、次の 2 つの用語を知っておく必要があります。
スプリント (イテレーション): スクラムでくり返し行われる作業セッションのこと。各スプリント後に成果物がリリースされる。
ストーリーポイント (SP): 作業を完了するのに必要な見積もりの測定単位。
アジャイル手法のひとつ「スクラム」におけるベロシティとは、各スプリントでチームが消化したストーリーポイントの合計となります。つまりベロシティを見れば、各スプリント (タスク) でどの程度の仕事ができたのかが数値として見えるわけです。
Asana でアジャイルチームを管理チームの作業速度や作業量が数値化される「ベロシティ」ですが、そもそもどのような目的があるのでしょうか。
ベロシティの目的は、各スプリントで行われる作業や業務のペースを安定させることです。数値として見えることで、作業スピードや作業量のバラつきを避けることができるのです。
さらに広い視点から考えると、ベロシティはプロジェクトの進捗管理やリソースの配分に役立ち、チームの生産性や効率アップにつなげるための情報を提供します。
前述のとおり、ベロシティはアジャイル手法で使われる指標ですが、どのように算出するのでしょうか?ベロシティの出し方を簡単に解説します。
各スプリントにあるそれぞれのタスク (業務) のストーリーポイントをつける: ストーリーポイントはあくまで相対値だということを忘れないでおきましょう。
前項で出した各タスクのストーリーポイントを合算する: 1 で出した各タスクのストーリーポイントを合わせたものが、そのスプリントのベロシティとなります。
1 と 2 の工程はくり返しおこない、ベロシティの平均値を出していきます。
アジャイルプロジェクト計画テンプレートを作成さて、アジャイル開発においてベロシティはどのような使われ方をされるのでしょうか。ベロシティの活用方法をまとめます。
ベロシティは、今後行うスプリントの参考値として活用できます。
次のスプリントの予定ストーリーポイントをチェックし、それが達成可能な値かどうかを過去のスプリントのベロシティと比較して考えます。ベロシティはスプリントプランを立てる時の指標として役に立ちます。
ベロシティは、プロジェクトの完了見込み時期の予測をするときにも活用できます。
たとえば、ひとつの開発プロジェクトの合計ストーリーポイントが 300 で、チームのベロシティが 30 であるとします。この場合、10回のスプリントでプロジェクトが完了すると予測することができます。また、1 回のスプリントに要する時間が 2 週間であれば、このプロジェクトは 20 週間で終了すると予想することも可能です。
各スプリントの作業速度または作業量をベロシティとして数値化することで、チームの成長が明確化します。たとえば、ベロシティが上昇傾向にあればチームが成長していると捉えることができるでしょう。また常に安定したベロシティを出していれば、ペースを乱さずにプロジェクトが進んでいると考えられます。一方、もしベロシティに大きなばらつきがあった場合は、作業工程やチームの見直しが必要なのかもしれません。ベロシティはチームの状態を可視化するのに適しています。
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ベロシティはアジャイルチームにとって重要な指標です。ただし、いくつか注意すべきポイントもあるので、ご紹介します。
先述したように、ベロシティは今後行われるスプリントの参考値として用いられます。ただし、直近のベロシティだけで判断してしまうのは禁物です。わかりやすい例を挙げると、もし直近のスプリントではチームメンバーが欠けていたとしたら、そのスプリントでのベロシティは不確実であると言えます。間違った判断をしないためにも、参考値としてのベロシティは、複数のスプリントにつけられたものの平均値を使います。
プロジェクトマネジメントにおいて、ベロシティは非常に役立つツールとなり得ます。ベロシティは 1 回 1 回つけたら終わりにせず、その推移を必ず監視しましょう。ベロシティの使い方でも述べたとおり、ベロシティではチームの成長度も測ることができます。ベロシティが安定しているのか、上昇しているのか、はたまた不安定なのか。数値は監視するようにします。
ベロシティの目的は、各スプリントでの作業を安定させることです。数値が上昇すればチームが成長していると判断できるので望ましいことですが、それを目的とするのは間違いであると言えます。ベロシティの上昇が目的となってしまうと、達成が極めて難しい数値をベロシティ目標として掲げてしまう可能性もあります。そういった状況を避けるためにも、今一度ベロシティの目的を見直しましょう。
ベロシティはあくまで指標であり、評価の基準にするのは避けるべきです。数値化することで、チーム間に競争意識が生まれることもあるでしょう。しかしベロシティは相対値であるため、競争の理由にはなりません。ベロシティの目的を正しく理解し、あくまで参考値として認識することが重要と言えます。
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ワークマネジメントツール Asana とは?では、ベロシティを実際に安定させるには、どうしたらいいのでしょうか?以下のポイントを参考にしてみてください。
スプリントに取り組むまえに、ストーリーを適切に文化し、可能な限り詳細化しましょう。タスクの見積もりがより正確になり、ベロシティの安定性が向上します。
スプリント中にタスクが追加されたり、変更されたりすることもあるでしょう。それをそのままに進めてしまうと、ベロシティは安定しません。そこで、定期的にリファインメント (見直し) を行いましょう。そうすることで、作業の見積もりがリアルタイムで調整され、ベロシティも安定します。
チームメンバーが担当するタスク量を常に把握することも大切です。誰かに過剰にタスクをふっていないか、過度に作業しているメンバーはいないかなど、チェックします。負荷が大きくなると作業スピードや質も落ちるため、ベロシティに影響を与える可能性があるからです。
スプリント後には必ず振り返り作業を実施しましょう。過去のベロシティと実績を分析し、将来への改善を継続的に行います。
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アジャイルで用いるベロシティの意味、見積もり方、使い方、注意点について解説しました。アジャイル手法を採用しているプロジェクトチームメンバーなら、ベロシティについて正しく理解し、参考値としてこれからのスプリントに役立てましょう。
スクラムをはじめとしたアジャイル手法を採用するときに重要なのは、チーム全員がアクセス可能な情報を一元管理することです。そのためには、Asana のようなワークマネジメントプラットフォームがおすすめです。スクラムのスプリントを管理できるだけでなく、チームメンバーのコラボレーションとコミュニケーションの改善もサポートします。