スクラムマスター (Scrum master) はスクラムチームを率いてスクラムの原則を徹底させます。また、プロダクトオーナーをサポートし、スクラムやアジャイルのプロセスを他部門とも共有することで、組織に貢献します。このガイド記事では、スクラムマスターとその役割について解説します。
更新: この記事は、スクラムマスターの役割や注意点に関する情報をさらにわかりやすくまとめて、2023年 2月に改訂されました。
スクラムの手法について深く理解しておくと、チームのワークフローの改善に役立ちます。スクラムの手法は、製品の開発と納品に関わるものですが、多くの場合、ソフトウェア開発で使用されます。スクラムの柱となるのが、透明性、適応力、調査力です。
このガイド記事では、スクラムマスターとは何か、またスクラムマスターがチームや会社に対して担う責任とは何かについて見ていきます。あなた自身がスクラムマスターであったり、スクラムマスターをチームに迎えようと考えたりしているなら、このガイド記事をもとに、チームにさらなるメリットをもたらしましょう。
スクラムマスターをサポートする適切なツールがあれば、スクラムチームの運営はより円滑になります。アジャイル管理ソフトウェアを使って、スプリント計画を立て、製品リリースを管理し、チームとのコラボレーションを促進しましょう。
Asana でアジャイルチームを管理スクラムマスターはスクラムチームのリーダーです。スクラム手法の確立と、チームメンバーにスクラムの原則と実践を徹底させることがその仕事内容です。スクラムマスターは人間志向タイプの人が多く、チームメンバーの成長や向上をアシストすることを好みます。
スクラムマスターは、製品の作成、販売、リサーチ、マーケティング、開発などのステージにおいて開発チームを主導しながら、さまざまな責任を果たします。チームを管理し、プロジェクトを順調に進めることを目指す従来のプロジェクトマネージャーとは異なり、スクラムマスターの目標には、スクラムモデルに沿ってチームを運営することも含まれます。
スプリント計画会議には、スクラムマスター、プロダクトマネージャー、開発チームが出席します。こうした会議では、次のスプリントで優先的に取り組む、プロダクトバックログのアイテムを決定します。この会議は協働的に進め、開発チームのメンバーにも積極的に意見を求めましょう。
典型的なスプリント計画会議では、スクラムチームは次のことを行います。
次のスプリントプロジェクトに必要なデータや見積もりを準備して会議に出席する。
スプリントのプロダクトバックログアイテムについて見積もりを確認する。
次のスプリントのプロダクトバックログアイテムについて合意する。
次のスプリントに必要なチームの余力を検討する。
Q&A セッションで会議を締めくくる。
こうした会議では、コラボレーションが重要です。開発チームのメンバーは、どのタスクに注力すべきだと考えているか、意見を求めましょう。
スプリント計画用テンプレートを無料で作成する毎日のスクラムスタンドアップミーティングは、スクラムのフレームワークに欠かせません。これを開催することは、スクラムマスターの責任でもあります。スクラムマスターは、こうしたスタンドアップミーティングの進行役となり、スプリントの目標達成への進捗を評価する機会として利用しましょう。
スタンドアップミーティングでの主な質問には、次のようなものがあります。
昨日したことは何か?
今日することは何か?
進行を妨害している問題はないか?
こうしたデイリースタンドアップミーティングを円滑に行い、進行を容易にするには、Asana の無料スプリント会議テンプレートをお試しください。
問題解決力は、優れたスクラムマスターに求められる重要な資質です。アジャイルチームのリーダーであるスクラムマスターは、プロジェクトを可能な限りスピーディに進行させ、チームメンバーにとって仕事を完了しやすくすることを目指します。解消が必要なチーム内外の障害ポイントに気づいたら、スクラムマスターは、そういった問題を解決するか、解決できるメンバーを探す必要があります。
たとえば、潜在的な障害ポイントとして、アジャイルチームと関係者とのあいだの理解不足が考えられます。スクラムマスターが数回の計画会議に関係者を招待し、アジャイル開発について認識を深めてもらうことで、この問題を解決できます。
記事: チームを問題解決の達人に変える問題解決戦略とはスクラムマスターは、リーダーであり、チームメンバーでもあります。時間に余裕があれば、プロダクトバックログに取り組む開発チームを自らアシストすることもできます。
プロダクトバックログには、機能やタスク、バグ修正、技術的負債、知識獲得といったものが含まれる可能性があります。スクラムマスターにはスクラムとプロダクト開発の豊富な知識があるので、即座にチームメンバーのサポートに回れます。
振り返りとは、各スプリントの後、成功したことや改善が必要なことを評価するために開催するスプリントレビューミーティングです。これらのミーティングは、スクラムチームメンバーにとって、今後のスプリントで改善すべき点を特定する機会になります。
振り返りでの主な質問には、次のようなものがあります。
このスプリントをどのように実施したか?
このスプリントで失敗だったのは、いつ、どの部分か?
どのツールや手法が有効だったか?
1 つ変えたいことがあるとすれば、それは何か?
Asana の無料アジャイル振り返りテンプレートを使用すれば、こうしたプロセスを合理化できます。
Asana のプロジェクトマネジメント機能を試すスクラムマスターにはさまざまな役割があります。情報を経営上層部に伝えたり、外部の関係者のニーズに応えたり、スクラムチームの進捗をモニタリングしたりといったことがこれに当たります。
スクラムマスターのさまざまな役割のうち、代表的なものは次のとおりです。
アジャイルコーチになる
プロダクトオーナーとコラボレーションする
組織と知識を共有する
それぞれの役割について、詳しく見てみましょう。
スクラムマスターの主な仕事は、アジャイルコーチとしてチームを支えることです。アジャイルでは、チームメンバーはタイムブロックを設定し、集中的にタスクに取り組んで、それを完了します。これらのスプリント中に、開発チームは適宜、製品を構築し、改良を加えていきます。このような反復的プロセスを行うチームをスクラムマスターがコーチングする際には、柔軟性を持ち、さまざまなアイデアを受け入れる必要があります。
スクラムマスターは、プロダクトバックログの管理方法を考えることでプロダクトオーナーをサポートします。プロダクトバックログは複雑で、常時変化する場合もあるため、スプリント計画のプロセス中に、プロダクトバックログのアイテムを絞り込む方法をチームが理解できるよう、支援する必要があります。
スクラム手法についての指導やトレーニングを行うことで、組織に貢献します。スクラムマスターの知識と経験は、貴重なリソースと見なされるため、スクラムの実施を計画している他部門向けにスクラムトレーニングセッションの開催を申し出てもいいでしょう。チームメンバーとチーム外の関係者に複雑なスクラムガイドを理解させることができれば、すでに確立しているスクラムチームと、それ以外の従業員のあいだの壁を取り払うことができます。
記事: スクラムは初めてですか?ここから始めましょうスクラムマスターは、組織のさまざまな面に注意を向ける努力をしなくてはならず、それは必ずしも簡単ではありません。スクラムマスターがリーダーとしてスクラムフレームワークを実践する際に、起こりがちな間違いをいくつか挙げてみましょう。
スクラムコーチではなくスクラム警察になる
チームのアシスタントになる
組織全体に目を配らず、チームだけに意識を集中する
進行役ではなく管理者になる
では、それぞれの注意点を詳しく見ていきます。
スクラムマスターは、チームにスクラム手法を徹底させる必要があります。しかし、ここで起こりがちな間違いが、スクラム手法の実施にとらわれすぎ、チームのコーチングがおろそかになることです。よきリーダーであることと、チームにスクラムの原則を守らせることの間でバランスをとることが重要です。
プロダクトバックログに関してチームを補佐したり、スクラムプロセスに無関係なその他のタスクを引き受けたりしているなら、スクラムマスターのリーダーとしての役割が手薄になっているかもしれません。スクラムマスターはチームメンバーをサポートするべきですが、目指すべきは、ワークフローの改善、スクラムチームメンバーのコーチング、スプリントの進行です。
スクラムマスターにとってスクラムチームは最優先の存在ですが、チームメンバーのニーズだけに集中すると、見落としが生じます。必ずチーム、プロダクトオーナー、会社全体とコラボレーションしましょう。スクラムマスターには、スクラムの知識を広める力があります。組織全体がアジャイルになれるよう、その能力を生かしてください。
スクラムマスターはリーダーですが、プロジェクトマネージャーではなく、進行役です。毎日のスタンドアップミーティングや他のスクラムミーティングでは、トピックについて自由に発言するようチームメンバーを促しましょう。
こうした落とし穴は、スクラムマスターが自分の役割を理解し、自分の立場が組織の他の役職とどう関係するのかを把握していれば、回避しやすくなります。時折、スクラムマスターの役割がプロダクトマネージャーやプロジェクトマネージャーと混同されることがありますが、これらの 3 つの役割には明確な違いがあります。
スクラムマスターとプロダクトマネージャーは、スクラムチームにおいてそれぞれ固有の役割を果たしています。以下に、2 つの役割の主な違いをいくつかまとめました。
プロダクトマネージャーのチームでの役割は、プロダクトオーナーの場合と同様で、製品の作成と顧客のニーズに関連しています。プロダクトマネージャーは、製品の「目的」と「内容」を担当します。意見を述べたり、優先度に基づき、プロダクトバックログの順番を変更したりすることもあります。
スクラムマスターが力を入れるのは、スクラム手法によってチームを主導し、向上させることです。スクラムマスターは「方法」を担当し、プロダクトマネージャーがプロダクトバックログを把握するサポートをします。また、スクラムについてチームにコーチングを行い、バックログが円滑に流れるようにします。
スクラムマスターもプロダクトマネージャーも、それぞれの立場でチームをアシストしますが、両者の役割がどう関連し合い、重なり合っているかを知ることが重要です。
プロジェクトマネージャーは、テクニカル面以外で、スクラムマスターと同じ役割を果たします。どちらも問題解決を担いますが、プロジェクトマネージャーはチームの仕事にはあまり関与しません。一方、スクラムマスターは、スクラムイベントに積極的に参加して、コーチングを通じてチームを成功へ導きます。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの成功を統括します。プロジェクトタイムラインの管理やプロジェクトスコープの定義を行い、適切なチームメンバーにタスクを割り当てます。さらに、進捗をモニタリングして障害となる問題を見つけ、必要に応じてタイムラインを調整します。
一方、スクラムマスターは、アジャイルチームのメンバーかつ進行役としてスクラムチームのコーチングを行います。スクラムマスターが率いるのはより小規模なスクラムチームですが、プロジェクトマネージャーと同様、障害となる問題の特定と解消をサポートします。
プロジェクト管理とスクラムマスターの役割の大きな違いは、プロジェクトマネージャーはプロジェクトそのものに意識を向け、スクラムマスターは、チームとその成功に注力するという点です。
チームが抱える問題を検討することで、スクラムマスターの必要性を判断できます。
【例 1】開発チームが、プロダクトバックログのアイテムの優先度設定に苦労している: 開発チームがプロダクトバックログのアイテムへの取り組みや、その優先度設定で苦労しているなら、スクラムの原則を深く理解しているスクラムマスターをチームに加えるメリットがあるかもしれません。
【例 2】組織のヒエラルキーに沿ったリーダーよりもコーチの指導の下でチームが生き生きする: チームメンバーによっては、厳格なリーダーの下では実力を発揮できないことがあります。スクラムマスターの場合、リーダーシップのスタイルはコーチングに近く、重箱の隅をつつくようなマイクロマネジメントのように感じません。
【例 3】チームが進捗会議の進行役を必要としている: スクラムチームの主導、問題の特定、定期的なミーティングの進行を担う人材が必要なら、スクラムマスターの出番です。
スクラムマスターは、スクラムの価値基準を念頭に、ワークフローとチームメンバーの働き方を改善します。
記事: 反復的なプロセスを理解する (実例付)スクラムマスターとは何か、その役割や注意点をご紹介しました。スクラムマスターは、チームを成功へ導き、組織の他のメンバーにもアジャイル的な姿勢を持つように働きかけるという意味で非常に重要です。スクラムマスターがチーム内で上手くその役割を果たしていれば、アジャイルプロジェクトも円滑に進むでしょう。