ビジネスやプロジェクトを運営するにあたり、発生しうるトラブルやアクシデントを事前に想定し対策をとっておくことは、その成功を導くために必要不可欠です。そこでこの記事では、リスクを事前に予測し対応策を講じる「リスクヘッジ」について解説します。リスクヘッジの意味と進め方、リスクヘッジをとるときのポイントをチェックして、今後に役立てましょう。
更新: この記事は、企業が行っているリスクヘッジの例に関する記述を含めて 2024年 5月に改訂されました。
ビジネスにはリスクがつきものです。企業の事業活動から、プロジェクトレベル、日々の業務のひとつひとつまで、規模の違いはあれど常にリスクは伴います。一見順調に見える仕事でも、将来的に起こりうるリスクを事前に想定して、その影響をできるだけ抑えるための対策を考えておくこと、つまり「リスクヘッジ」はとても重要です。
この記事では、リスクヘッジとはどういう意味なのかを今一度確認し、どのような進め方をするべきなのか、リスクヘッジスキルを向上させるにはどうすればいいのかを具体的に紹介します。リスクヘッジは企業経営者やプロジェクトマネージャー、チームリーダーはもちろん、どのようなビジネスパーソンにも必要なスキルです。どんな状況に陥っても日々の業務を遂行できるよう、リスクヘッジについて詳しく知りましょう。
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Asana で日々の業務をすっきり整理リスクヘッジとは、危険を予測し、その防止策や予防策をとること、もしくはその影響をできるだけ抑える対策を講じることです。
このリスクヘッジという言葉は、もともと金融取引で用いられていました。たとえば、価格変動を伴う商品が投資対象の投資信託や、資産運用、為替変動に関連するシーンにおいて、損失を最小限にするために講じられる分散投資や先物取引を指していた言葉です。そこからさまざまなシーンでも使われるようになったリスクヘッジですが、身近なところでは生命保険や健康保険といった保険システムは代表的なリスクヘッジの例と言えます。
一方で、一般的なビジネスシーンにおける「リスクヘッジ」とは、プロジェクトなどを運営するときに発生しうる損害やトラブル (アクシデント) を事前に想定し、影響を軽減するための対策を立てることを言います。この記事では、この意味でのリスクヘッジについて解説します。
リスク管理計画のテンプレートを作成リスクヘッジと混同されやすい用語に、リスクマネジメント (危機管理) があります。リスクマネジメントとは、発生する可能性のあるリスクに対し、予防策を講じる一連のプロセスのことを指します。リスクマネジメントは予測されるリスクをすべて洗い出して備えるプロセス全体のことを言うので、リスクを軽減する方法論であるリスクヘッジとは異なります。リスクヘッジはリスクマネジメントの一部と考えれば分かりやすいかもしれません。リスクヘッジを的確に行うことで、リスクマネジメントも正しく遂行することができるようになります。
リスクマネジメントの詳しい解説は「リスクマネジメントの基本と 6 つのステップ」ページをご覧ください。
事業継続計画のテンプレートを試すリスクヘッジと対でよく聞かれるワードに「リスクテイク」があります。リスクテイクとは、危険を承知で行動することを言い、リスクに備える意味を持つリスクヘッジとは意味合いが異なります。投資の世界でこの「リスクテイク」は攻めの姿勢とその行動を指しており、リスクの可能性を知りながらも利益を狙い行動に移すこと、つまりハイリスクハイリターンを狙うという意味の使い方をされます。
リスクヘッジを適切に行うことで、次のようなメリットがもたらされます。
もしもの場合にも影響を最小限にとどめる
懸念事項を把握する
リスクが前もって特定されていると、実際に発生した際にも迅速に対応できる準備が整っているため、被害を最小限に抑えることができます。一方で、リスクヘッジはリスク回避やその影響をできるだけ小さくするだけではありません。ビジネスやプロジェクトを運営するにあたってどのような不安材料があるのかをまず洗い出すことで、トラブルとなりうるポイントをすべて洗い出し、把握することができるのです。
一般的に、リスクヘッジの使用例には以下のようなものがあります。
先方の出方がわからないので、念のため企画プランを 3 件以上用意しておく
イベント当日の天気が不安定なので、雨天の場合の移動手段を考えておく
仕事場でのハラスメントに対するマニュアルを用意しておく
また、「リマインダーメールを送ること」や「日報を作成し上司に提出すること」など、日常的なことがらである場合も多いのがリスクヘッジの活用方法の特徴です。ビジネスにおいてリスクヘッジを図るときには、不安材料や懸念事項となりうるすべての項目を考慮に入れるようにします。
それでは、ここからは具体的に企業が行っているリスクヘッジを 2 つご紹介します。
製造業では、原材料の供給不足や価格変動リスクを軽減するために、複数のサプライヤーと契約を結ぶことでリスクヘッジを行っています。
たとえば、自動車メーカーだと、半導体や鋼材などの重要な部品については、国内外の複数の供給元を確保し、ひとつのサプライヤーに依存しない体制を整えています。こうすることで、特定の供給元にトラブルや予測不能の事態 (災害やテロ、戦争など) による影響が出た場合でも、他の供給元からの調達で生産ラインを維持することができるのです。また、長期契約を結び価格の固定や、先物取引を利用して価格変動リスクを緩和することも多く行われています。こうした取り組みのおかげで、サプライチェーンの安定性を高め、予期せぬ供給の途絶やコスト上昇の影響も最小限に抑えることに成功しています。
「ものづくり」と「DX」のソリューションとは?建設業においては、プロジェクトの遅延やコスト超過のリスクを軽減するために、リスクヘッジ策を通常講じています。たとえば、大きな建設プロジェクトを進める際には、予期せぬ天候変動や資材不足、または人材不足といったリスクに対処するために、綿密なプロジェクトマネジメントと契約管理を行っています。
具体的には、必要な資材を安定的に調達できるよう、複数のサプライヤーとの契約体制を整えたり、天候リスクに備えるためには、プロジェクトスケジュールに余裕を持たせ、天候による作業中断の影響を最小限に抑える計画を立てたりします。労働力の確保に関しては通常、複数の人材派遣会社と提携し、必要な人員を柔軟に確保できるようにしています。こういったリスクヘッジを講じることで、建設業では実際にリスクが発生しても迅速に対応できる体制を整えています。
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実際にリスクヘッジはどのようなステップを踏んで進めていけばいいのでしょうか?簡単に以下の 3 つの段階に分けて実行することができます。
まずは起こりうるリスクを予測します。このとき、個人ひとりではなく複数人で行い、見落としのないよう心がけることが大切です。それぞれのリスクがいつどのような場面で発生する可能性があるのか、たとえば「生産工程で起こりうるリスク」「配送工程で起こりうるリスク」など、要素ごとに分けて考えると分かりやすいでしょう。
ステップ 1 で想定したリスクを分析します。洗い出したリスクが多いときは、優先順位を付けることも忘れないようにしましょう。そのときは発生する可能性とそのときの影響力を分析します。優先度の高いリスクから対策をとることで、より効率的にリスクヘッジをとることができるようになります。
実際にリスクヘッジを実行するステップです。想定するリスクに対し、どのような対応策が講じられるのかを考えます。このとき、実施するタイミングまで具体的に決めておくとより効果的でしょう。
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リスクヘッジが不十分だと、タスクやプロジェクト、ビジネスの順調な成長が妨げられてしまうかもしれません。ビジネスパーソンにとって、リスクヘッジスキルは習得すべきスキルと言えるでしょう。では、具体的にどのようなポイントを押さえておけばリスクヘッジ能力を高めることができるのでしょうか?以下の項目を参考に、リスクヘッジスキル向上を目指しましょう。
リスクヘッジの基本とも言えるのが、ロジカルシンキング (論理的思考) です。根拠と結論の関連性を正しく見極めることで、正確なリスクヘッジを図ることができます。たとえば「イベントスタッフが不足する」というリスクの対応策は複数ありますが、まず「どうして人員が不足するのか」について考えることでより適切な対策を講じることができるのです。常日頃から「どうしてそうなるのか?」と物事の因果関係を明確にするように心がけることで、リスクヘッジ能力も向上していきます。
固定観念や先入観など、凝り固まった考え方で物事に取り組んでしまうと、根本的なリスクを見逃してしまうことが多々あります。そういった状況に陥らないためにも、日頃から客観的な視点を持つことを心がけることがおすすめです。また、自分が関わるプロジェクトやタスクなどでは、主観的な立場からのリスクヘッジしかできないこともあります。すべてのリスクを想定するには、客観的な視点でリスクヘッジすることも重要なので、できるだけ中立の立ち位置から観察するようにしましょう。
前項を実行しようとしても、物事の全体像が見えていなければ正しいリスクヘッジは行えません。細分化している業務やプロジェクトでも、リスクヘッジのためには「全体」として捉えて考える必要があります。常に広い視野で物事を観察できるよう、日々のタスクをこなすときも、そのタスクがどのような業務の一環なのか、全体を意識しながら取り組むようにしましょう。
幅広いプロジェクトで使用される PDCA サイクルは、リスクヘッジをとるケースでも有効なフレームワークです。そもそも PDCA サイクルとは「計画」「実行」「評価」「改善」を繰り返すことで問題解決を目指すわけですが、反復的に行うことでより効果的な働きをします。このフレームワークで得られるフィードバックはリスクヘッジにとても有効で、過去の例からより有効な解決策を講じることが可能になります。日々の習慣として PDCA サイクルを行うことで、リスクヘッジスキル向上にもつながるでしょう。
リスクマネジメントの一部であるリスクヘッジは、マネジメントツールを通じて管理すると効率的です。前述したリスクヘッジプロセスも、ツールを通してチームメンバーで共有することでさらに効果的となります。プロジェクトやタスク管理の一工程としてのリスクヘッジは、Asana のようなワークマネジメントプラットフォームを使って行えば多くのメリットを得られます。
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リスクヘッジの意味と進め方、スキルを高めるヒントを解説しました。ビジネス活動という大きなスケールだけでなく、日々の業務の中にもリスクやトラブルは潜んでいます。しかし先を見越してリスクを見極め予防線を張れば、成功につながるでしょう。とくに企業トップ層やチームリーダー、プロジェクトマネージャーであるならば、リスクヘッジを従業員に周知させるようにしましょう。
リスクマネジメントの一部であるリスクヘッジは、ビジネスやプロジェクトを成功させるために不可欠な要素です。より効率的に行うためには、チーム内共通のマネジメントツール上で実行することがおすすめです。部署の垣根を越えたプロジェクトなどでは複数人でのコミュニケーションも重要となってくるので、コラボレーション面のサポートが優れたツールを選ぶようにしましょう。
Asana では、レピュテーションリスクについて解説している記事『レピュテーションリスクとは?影響と対処法を解説』もお読みいただけます。