パレートの法則 (80 対 20 の法則) とは、20% の要因からおよそ 80% の結果が生まれるという現象を表す用語です。この記事では、タスクやビジネスの取り組みに優先順位をつけるために、パレートの法則をどのように利用できるかをご紹介します。
更新: この記事は、パレートの法則の注意点に関するさらに詳しい記述を含めて 2024年 4月に改訂されました。
朝、オフィスに着いたら、まず何をしますか?コーヒーを片手にメールをチェックし、その日のタスクに優先順位をつける人が多いのではないでしょうか。作業優先順位をつけるために、あなたはどのようなテクニックを使っていますか?
仕事の優先順位を見極めるために使われる一般的な手法として、パレートの法則 (80 対 20 の法則、2: 8 の法則) というものがあります。この手法を使えば、重要なタスクを見極め、自分が抱えるタスクに優先順位をつけることができます。
Asana で仕事の生産性を向上させる方法この記事では、タスクの優先順位を決めるツールとしておすすめしたい「パレートの法則」について徹底解説します。パレートの法則とは何かを理解し、1 日の生産性を高めるために役立てましょう。
パレートの法則とは、特定の要素 20% が、全体の 80% の成果を生み出していると考える経験則を指します。言い換えれば、ごく一部の要因が大きな影響を生み出しているということを意味しています。この概念をよく理解し応用することで、どの取り組みを優先させれば最も大きな効果が得られるかを判断することができるようになります。
パレートの法則は、1896年にイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート (Vilfredo Pareto) が提唱しました。彼は、イタリアの土地 80% を所有しているのが人口のわずか 20% を占める富裕層だったという状況から、80 と 20 という数字に着目。庭の植物でも、20% の植物が全体の 80% の実をつけている事実を発見しました。この関係は、数学的には 2 つの量の間のべき分布として記述するのが最も適切であり、一方の量が変わると他方の量が大きく変化します。
この 80:20 の現象は、さまざまな呼ばれ方をされています。パレートの法則の別名は、たとえば以下が挙げられます。
パレートの法則
80 対 20 の法則 (最も一般的)
20 対 80 の法則
2: 8 の法則
少数の重要項目の法則
因子スパース性の原理
他にも日本語では 2 と 8 というキーワードに由来した「ニハチの法則」という名称も使用されています。
パレートの法則は正式な数式ではありません。経済やビジネス、デジタルマーケティング、時間管理、さらにはスポーツなどに見られる一般的な現象を指す考え方です。
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パレートの法則から派生したと言われる法則に、2 対 6 対 2 の法則があります。80 と 20 という数字を使うパレートの法則と異なり、こちらは 2、6、2 という 3 つの数字を使って、全体を上位 20%、中間 60%、下位 20% に分ける考え方です。
これは「働きアリの法則」とも呼ばれ、働きアリはその 20% はよく働き、60% は普通に働き、20% はさぼっていることを表しています。この 2 対 6 対 2 の法則をパレートの法則と合わせて考えれば、よく働く 20% のアリが全体の 80% の食料集めに貢献していることになるわけです。
パレートの法則を活用する最大のメリットは、最小の作業量で最大の効果を生み出すことができる点です。つまり特定の作業に集中することで、仕事全体の効率化につながり、生産性が向上します。たとえば、適切な順序でタスクに優先順位をつけるだけで、より短時間で評価指標を向上させることができるわけです。
パレートの法則を使うことによるメリットをまとめると、以下のようなポイントが挙げられます。
個人もしくはチームが抱えるタスクの明確な優先順位付けができる
日々の仕事の生産性を向上できる
自分の仕事をよりシンプルにセグメント分割するスキルがつく
より焦点を絞った戦略を立てることができる
80 対 20 の法則はほとんどすべての業界で応用できる可能性を秘めていますが、ビジネスや経済の分野で特によく応用されている考え方です。これはこのパレートの法則が、アウトプットを最大化するためにどこに力を注ぐべきかを判断するのに役立つためです。
そういった意味で、パレートの法則は普段の仕事でも応用が利きます。パレートの法則の基本は、20% の要素から 80% の成果が得られるということですが、これは「仕事の成果の 80% は 費やした時間の 20% でもたらされる」と考えることもできるでしょう。細分化できる仕事の場合、パレートの法則を使って、どの部分が最も影響力があるのかも特定できます。
ここでは、パレートの法則を実際に使用してどのような成果が得られるのか、具体的な使い方の例を紹介します。
パレートの法則を使って、1 日のうちに終わらせるべきタスクの優先順位を決めることができます。 80:20 の法則に基づけば、タスクリスト全体のうち、20% のタスクを完了すれば、その日に生み出される成果の 80% を達成できると考えることができます。つまり、最大の効果を得るためには、チームにとって最も影響を与えるタスクを特定し、その日はそのタスクに集中することが重要になるわけです。
そのためには、その日にやらなければならないことをすべてリストアップし、To-Do リストを作成しましょう。そして、その中で最も影響を与えるタスクを特定します。特定するときは、以下のポイントを考慮してみてください。
他のチームメイトとの共同作業が必要なタスクはあるか
プロジェクトの進行を妨げているタスクはあるか
実行するのは簡単なタスクかもしれません。しかし、チームメンバーへの影響が大きいこのような作業は、プロセスを円滑に進めるために優先すべきタスクなのです。
記事: 生産性向上のためにできること: 職場で実施できる取り組みとヒントを紹介【タスクを整理して仕事を効率化】オンライン To-Do リストとは問題解決に迫られたとき、判断を下す一助となるのがパレートの法則です。1 つの問題に多くの異なる原因がある場合、2 対 8 の法則を使って解決策の優先順位を決定しましょう。
問題解決のための意思決定プロセスにおいて、パレートの法則をどのように応用するのか、ステップを追って見てみます。
【問題の特定】まず、チームが直面している問題を特定します。この意思決定プロセスの中で、どの問題の解決策を見出そうとしているのか、見極めます。
【原因の明確化】特定した問題の原因を明らかにします。5 つの Why (なぜ) のプロセスのようなツールを使って、問題の原因をすべてリストアップしましょう。
【問題点の分類】ピックアップした原因を類似グループに分類します。これを機会に、同じような原因をグループ化するわけです。1 つの解決策で複数の問題を解決できるかどうかを判断するのに役立ちます。
【問題点を数値で表す】それぞれの問題に値を割り当てます。この値は、ビジネスへの影響に基づいて 1 ~ 10 の数字で表したり、具体的な金額で表したりすることができます。
【優先度の高い問題点を特定】ビジネスへの影響が大きいもののうち、上位 20% に焦点を当ててみましょう。それぞれの問題に割り当てた値に基づいて、どの問題点が上位 20% に入っているかを計算します。主要な問題を特定したあと、問題解決戦略を使って、80% の結果を出せる解決策プランを立てます。
あなたはとある e コマース企業で働いています。直近のカスタマーサービスに対するクレーム 100 件の内容を見てみると、クレームの大半は、破損した製品を受け取ったことに起因していることがわかりました。そこで、破損した製品に対する返金額を計算したところ、全体の返金額の約 80% を占めていることが判明。破損した製品の返金処理は避けたいので、この問題を優先的に解決することにしました。
あなたのチームは、出荷時に製品を保護するパッケージを刷新することを決定し、お客様が破損した製品を受け取るという問題を解決しました。
パレートの法則と関連するツールに、パレート分析とパレート図があります。これらは、シックスシグマの品質管理手法で使用されるツールです。
シックスシグマの手法では、パレート図を使用することでデータを視覚化し、アクションの優先順位を特定できます。シックスシグマの主な目標は、生産量の増加を目的として、プロセスの変動量を減らすことです。パレート図を用いれば、プロセス内の変動の大部分が何であるかをすぐに特定できるため、シックスシグマの方法論では一般的に使用されます。
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もともとは所得分布の経験則として、2 割の高額所得者が社会全体の約 8 割の所得を占めているという社会現象から生まれたパレートの法則は、現在マーケティング分野をはじめとするビジネスシーンで広く応用されています。
では具体的に、ビジネスで使用される 80/20 ルールの例はどのようなものがあるのでしょうか?
企業利益の 80% は全顧客の上位 20% がもたらしている
全商品の売上の 80% は上位 20% の商品がもたらしている
ウェブサイトの PV 数において、全体の 80% を占めているのは上位 20% である
上位 20% の顧客 (優良顧客) に対して優遇施策を集中的に行うといったマーケティング施策がありますが、これはパレートの法則に則った戦略と言えます。
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マーケティング戦略の無料テンプレートパレートの法則にはメリットもあればデメリットも存在します。
パレートの法則の最大の注意点は、20% の努力で 80% の結果が得られるという誤った解釈が行われることです。80 と 20 という数字は努力量のことではなく、結果 (成果) と要因を指しています。労力を最小限にするのではなく、特定の部分に努力を集中させることで、より大きな効果を生み出すことが目的です。80% の結果を出すためには、その集中する 20% の部分に対して 100% の努力が必要であることを忘れないでおきましょう。
パレートの法則の欠点は、チームメンバーが特定の作業に集中しすぎて、他のタスクを見落としてしまうことがある点です。20 の部分にばかり焦点を当て、残りの 80 にまで手が回らない状況は避けるべきと言えます。
重要なタスクのみに集中して、メールのやり取りのような重要ではないタスクをないがしろにしてしまうと、物事が見えなくなってしまいます。パレートの法則を使い重要タスクを見極めることは大切ですが、80% の成果にはつながらない残りのタスクもやり遂げることも忘れないでおきましょう。
この問題に対処するには、タイムボクシングや、Getting Things Done (GTD) などの手法が効果的です。
パレートの法則は、あくまで経験則であり、絶対的なルールとして扱うべきではありません。実際に、まったく逆の概念を表す「ロングテールの法則 (ロングテールビジネス)」という考え方も存在します。
ロングテールの法則とは、短期的に見る限りは成果に対する貢献度は低い商品やサービスも、長期的な視点で見れば大きな成果を生み出す可能性があるとする考え方です。こういった概念も存在するので、施策や戦略を策定するときには注意しましょう。
パレートの法則 (80 対 20 の法則、2: 8 の法則) についてまとめました。パレートの法則を用いて「重要な 2 割」を発見すれば、さまざまなケースにおいて重要なタスクは何かを素早く見極めることができます。マーケティング戦略などに使えるだけでなく、従業員の仕事効率化や、ウェブページのコンテンツ最適化、コストやリソースの有効活用など、多くのシーンで応用することも可能です。2 対 6 対 2 の法則とも合わせて利用し、さらに有効活用してみましょう。
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