組織改革は、企業文化、インフラ、テクノロジー、社内プロセスなどに影響を与える、大きな転換期を迎えたときに起こります。新しい経営陣の就任、新しいツールの導入、企業目標の更新など、どんな組織変革も多くの社員に影響を及ぼします。この記事では、組織改革の種類と、大きな変化がチームに与える影響、さらに、変化をうまく取り扱うための重要な戦略をご紹介します。
"チェチェチェチェンジ〜ズ"
デヴィッド・ボウイの歌詞を借りれば、いやが応でも、変化は起こります。人生においても、ビジネスにおいても、人間は常に進化を続けているのです。そして時には、その余波が組織全体に及ぶような大きな変化が起こることもあります。
組織改革は、企業が従業員の全員または大部分に影響を与えるような大きな転換期を迎えるときに起こります。この種の変化は、企業文化、インフラ、テクノロジー、社内プロセスなどに影響を与え、広範囲に及ぶことがあります。言い換えれば、組織改革は、チームの日常の体験を変化させるものです。このような大きな変化は、慎重に計画されることもあれば、事前の通知なしに発生することもあります。
ここでは、組織改革の例をいくつかご紹介します。
新しい CEO や部長の就任など、経営陣の交代。
会社の合併や買収。
事業再編。
メールからプロジェクト管理ソフトウェアへの切り替えなど、新しいテクノロジーの導入。
リードジェネレーションからアップセルへの移行など、会社の成長に合わせた目標の変更。
組織の「改革」と「チェンジマネジメント」という言葉は、しばしばセットで使われます。大きな移行が起こるときはいつでも、新しい環境で成功するために、従業員をどのように導くかを計画することが重要になるからです。組織のチェンジマネジメントとは、新しい組織改革に備え、それをうまく管理していくことです。
一方、組織の改革とは、移行そのものを表すものであり、変更をスムーズに管理するために導入したプロセス (チェンジマネジメント) を表すものではありません。つまり、組織の変化が予想される場合、または組織改革が発生した場合は、合わせてチェンジマネジメントプロセスの準備を開始し、移行にどのように取り組むかを計画する必要があるのです。
組織改革は、大きなものから小さなものまで、さまざまな規模で起こります。そこで変化のペースの範囲 (スペクトラム) という概念が登場します。スペクトラムの一端は「漸進的変化」であり、企業が時間をかけて行う小さな変化を表します。もう一方の端は「変革的変化」で、これは企業が既存のプロセスやインフラを一新するなど、大きな変化を意味します。次に、漸進的変化と変革的変化の違いをご紹介します。ここで覚えておきたいのは、ある特定の状況が必ずしもどちらかに当てはまるわけではなく、その中間に位置する場合があるということです。
漸進的変化とは、企業が時間をかけて行う小さな変化のことです。漸進的変化は、多くの場合、着実な成長と継続的な改善と密接に関係しています。これは、組織が成長するにつれて、古いプロセス、戦略、リソースが以前ほどうまく機能しなくなる可能性があるからです。漸進的変化は、変革的変化ほど即効性はありませんが、時間をかけて積み上げていけます。つまり、漸進的な移行においてもチームを導き、全員に必要なサポートを提供し、明確性を確保することが重要なのです。
漸進的変化の例: あなたの会社は、ブランドの認知度を高めるために、さまざまなオンラインチャネルでコンテンツを作成しているとします。その結果、写真、デザイン、動画など、把握しきれないほどのブランドアセットが作成されました。そこで、あなたは、デジタルアセットマネジメントツール (DAM) を導入して、すべてを整理することにしました。これは企業が成長し、仕事を整理するために必要なことですが、関係者に新しいツールの使い方を教えたり、コンテンツを移行したり、コンテンツが DAM に正しく追加されるようにプロセスを作成したりと、企業の成長に伴う悩みの種になることもあります。
変革的変化とは、企業が既存のプロセスやインフラを完全に作り直さなければならないような大規模な移行を指します。時間をかけてゆっくりと適応していくのではなく、一度に大きな変化を起こすのです。変革的変化をうまく管理しないと、混乱や曖昧さが生じ、チームの士気やパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、組織とチームが大きな変化を実現するためには、チェンジマネジメントプランの作成が不可欠です。
変革的変化の例: 現在日本のみで事業を展開している会社が、海外に進出することになりました。その結果、今後の海外事業展開に向けて、新たな海外拠点やセールスチーム、インフラを構築する必要が出てきます。
組織改革には、大きく分けて「戦略の変更」「プロセスの変更」「構造の変更」の 3 つの形態があります。ここでは、それぞれのタイプを、事例を交えてご紹介します。
戦略の変更とは、企業の戦略計画やビジネス目標、ビジョンステートメントを変更することです。この種の組織の変化は、個々のチームの目標や、チームメンバーがどのように仕事の優先順位をつけるべきかに影響を与えます。
戦略の変更の例: 企業が成長するにつれ、新製品の開発から既存製品の改良に重点を置くようになる場合があります。ビジネス目標も、ブランドの認知度向上や在庫の管理から、顧客ロイヤリティや満足度の向上へと変化しなければなりません。これにより、個々の製品チームの視点では、機能開発よりもユーザーテストに重点を置くことになります。
プロセスの変更とは、従業員の仕事のやり方を変えることです。これには、既存のプロセスを変更することも、まったく新しいワークフローを導入することも含まれます。プロセスの変更は、しばしばチームの日常業務に大きな影響を及ぼします。
プロセスの変更の例: すべての社外コミュニケーションにおいて、新たにリーガルチェックプロセスを導入しました。この場合、コンテンツ制作のワークフローにリーガルチェックのステップが追加されるため、マーケティングチームに直接的な影響を与えます。
構造の変更 (構造改革) とは、組織やチームの編成方法を変更することです。構造改革を誤ると、誰が何を担当するのか、誰にいつ情報を共有すべきなのか、といった点で混乱が生じる可能性があります。
構造の変更の例: スタートアップ企業が、急増中の新入社員に対応するために、新しい人事チームを結成しました。その結果、個々の採用担当者が、オンボーディングプロセスを最初から最後まで担当することはなくなりました。この組織構造の変化に伴い、どのオンボーディング業務を人事の責任範囲とし、どの業務を採用担当者が行うかを決定する必要があります。
新入社員オンボーディング用の無料テンプレート組織改革は、勢いよくプールに飛び込むようなものです。水面に一度衝撃が加わると、波紋が形成され、幾重にも広がっていき、最終的にはプールの水面全体に影響を及ぼします。同様に、組織内の 1 つの変化が、従業員全員に影響を与える波紋を引き起こすこともあるのです。
しかし、ちょっとした工夫で、仕事環境の変化をスムーズに乗り切れます。ここでは、組織改革に伴う 3 つの主な落とし穴と、それを回避する方法をご紹介します。
特に、なぜその変化が起きているのか、今後どうなるのかがわからない場合、変化に対して抵抗を感じるのは当然です。つまり、効果的なコミュニケーションなくして、大きな変化は会社や従業員の士気の低下を招きかねないのです。
この影響は、特定するのが最も困難であることが多いのですが、最も重点的に対処する必要があります。組織文化は、仕事環境を形成し、定義します。よい文化がなければ、チームのモチベーションは上がらず、成功も望めません。
たとえば、従業員は、新しい人事管理ツールの導入に大いに抵抗感を感じる可能性があります。チームは現在のソフトウェアに慣れているため、たとえそれが理想的なものでなくても、時間とエネルギーを費やして新しいツールの使い方を覚えるよりも、自分たちが知っているものを使い続ける方が楽だと考えるかもしれません。適切な背景情報がなければ、この変更はチームにとって新たなハードルのように感じられ、チームの士気に悪影響を及ぼす可能性があります。
しかし、いつまでも変化を避け続けることは現実的ではありません。特に、新しいプロセスによって、チームが面倒な仕事のための仕事を回避し、コラボレーションを促進できるのであればなおさらです。組織の変化は、正しく行われなければ、士気を低下させるかもしれません。しかし、適切なプロセスがあれば、変化を活用してさらに強力な企業文化を築けるのです。
マネージャーは、変化の時期に組織文化を守り、さらに向上させることができます。その方法は次のとおりです。
チェンジマネジメントプロセスを使用する。なぜ変化が重要なのか、チームは何を期待できるのか、どうすれば今後成功できるのかを伝えるには、変更プロセスが不可欠です。たとえば、Asana は、チームが新しいツールやテクノロジーを組織レベルでうまく導入できるように、Asana Way of Change を開発しました。Asana Way of Change は、ジョン・コッター博士が考案したチェンジマネジメントモデルに基づき、理由を定義するステップ、成功の評価基準を設定するステップ、チームの最初の成功を祝うステップが含まれています。
共通の目標を設定する。明確な目標を作成し、伝えることで、チームはなぜ組織改革が重要なのかを理解できるようになります。目標は、内発的動機づけを促し、チームが将来に期待を持ち続けるのに役立ちます。たとえば、新しい人事管理ツールに移行する場合、「第 1 四半期末までに、休暇申請と承認、報酬管理、パフォーマンスレビューの提出など、人事業務に費やす時間を 50% 削減する」といった SMART なゴールを設定できます。
心の知能を高める。変化は難しいものです。そこで重要なのは、人によって変化への対処の仕方が異なることを認識することです。心の知能スキルを磨くと、自分の感情を理解し、他人の感情を正確に把握できるようになります。そうすれば、共感をもってコミュニケーションを図り、より強力な人間関係を築き、対立に効果的に対処できるようになるのです。変化の時期に、心の知能を活用すると、チームの状況を理解し、必要なサポートを提供できます。
フィードバックを求める。フィードバックを求めることは、2 つの点で役に立ちます。まず、フィードバックは、チームの懸念点を理解し、プロセスとチームのコミュニケーションを改善するのに役立ちます。第二に、フィードバックを求めることで、チームメンバー一人ひとりの意見を大切にしていることを示せます。中でも、チームの懸念点を解決するために具体的な対策をとる場合は、なおさらです。特に、組織が変化する時期には、通常よりも多くの障害や業務拡大に伴う問題に直面する可能性があるため、フィードバックは重要な役割を果たします。
大きな変化の時期には、大きな不確実性が伴います。明確なコミュニケーションがなければ、組織の変化により、何を優先すべきか、誰が何を担当するのかがわからなくなることがあります。そして、その曖昧さゆえに、チームは正しい判断を下すために必要なガイダンスや情報を得られないかもしれません。
たとえば、あなたは製品開発チームに所属しているとします。会社に新しくユーザーリサーチ (UXR) チームが結成され、入社したての研究員が 5 人、チームに配属されました。以前は、製品が正常に動作することを確認するためだけにテストを行っていました。しかし、今では、製品をテストし、改善するためのリソースが増えました。しかし、これらの新しいリソースは、曖昧さを伴います。テストの実行を担当するのはあなたか、UXR チームか。製品開発プロセスにおいて、どのようなタイミングで最新情報を共有すべきか。製品の機能が成功したかどうかは、誰が判断するのか。このような疑問が、意思決定を難しくしています。
不確実性を解決する方法は次のとおりです。
主要なプロジェクトのために RACI チャートを作成する。RACI チャートは、プロジェクト内の各タスク、マイルストーン、成果物について、実行責任者 (Responsible)、説明責任者 (Accountable)、協業先 (Consulted)、報告先 (Informed) の役割を担うチームメンバーをそれぞれ特定し、まとめたものです。RACI チャートを作成すると、役割と責任が明確になり、誰にいつ最新情報を共有すべきかに関する混乱が軽減されます。上記の例の場合、製品テストプロセスの関係者が担う役割をまとめた RACI チャートを作成するとよいでしょう。また、特に厄介な製品や複雑な製品で、少し異なるプロセスを必要とする場合にも、そのプロセスにあった合った個別の RACI チャートを作成できます。
目標を仕事につなげる。意思決定とは、ある選択肢が他の選択肢よりも重要かどうかを判断することであり、優先順位をつける行為です。そして、何が重要かを決める前に、日々の仕事がどのように全体の目標につながるかを知る必要があります。つまり、組織が変化していく中で、チームが的確な判断を下せる環境を作るには、明確な目標を設定し、それをチームの仕事と結びつけることが最も効果的な方法なのです。たとえば、製品開発チームが「今年のユーザー満足度を 30% 向上させる」という目標を掲げているとします。チーム全員がその目標を目指していれば、UXR チームと協力して、新しい製品を作るのではなく、既存の製品を最適化することを、簡単に決定できるのです。
コラボレーションを一元管理する。意思決定には、明確さが大切です。RACI チャートやプロジェクト目標がどこにあるのか、誰も知らないのでは意味がないので、チームメンバーや関係者全員が、各プロジェクトに関する最新の情報にアクセスできる仕事環境が必要です。プロジェクト管理ツールを活用してコラボレーションを一元管理すると、チームは必要なリソースと情報を確実に入手でき、変化の時期に適切な判断を下せるようになります。たとえば、Asana では、プロジェクトとタスクの情報を共有できるため、実際に仕事が行われる場所で重要な詳細情報を共有できます。また、作業を目標に直接つなげられるため、すべてのタスクが全体の目標にどのように貢献するかが明確になります。
組織の変化は、成長だけではなく、収益の減少、セキュリティ侵害、主要な従業員の離職など、予期せぬビジネス上の問題によって起こることがあります。特に、緊急事態に備えたコンティンジェンシープランを用意していない場合、このような急激な変化が起こると、業績が大幅に低下する危険性があります。
新型コロナウイルス (COVID-19) によるパンデミックでは、まさにそれを多くの人が経験しました。これまで直接訪問者に頼っていたビジネスが、オンラインでのビジネスを余儀なくされたのです。美術館はバーチャル展示会を開き、レストランはすぐに宅配に切り替え、ツアー会社はオンライン体験ツアーを企画しました。これらの企業はそれぞれ、対面販売からオンライン販売に移行するために会社全体の目標を変更し、今までとは違うタイプの製品を製造するために企業プロセスを調整したのです。さらに、リモートワークの環境下での仕事の進め方を学ばなければなりませんでした。このような状況の中、多くの企業が大きな組織変更によって不安定な業績を経験しているのは当然のことです。
だからといって、次に不測の事態が発生したときに絶望的な状況になるわけではありません。大切なのは、積極的に行動することです。今から少し準備をしておけば、予期せぬ組織改革に伴うリスクを管理する計画を立て、直ちに仕事に取りかかり、業績を可能な限り安定させることができるのです。ここでは、そのために必要なことをご紹介します。
ビジネスインパクト分析を行う。ビジネスインパクト分析を行うことで、ビジネスのプロセスに障害が発生した場合に起こりうる結果を予測でき、前もって復旧計画を準備するためのデータが手に入ります。この分析により、ビジネスを継続させるために最も重要なプロセスは何か、ビジネスを成功させるために必要なリソースは何か、障害発生後、各プロセスの復旧にはどれくらいの時間がかかるか、などが明らかになります。分析中に収集したデータは、不測の事態が発生したときにどのように対処するかを事前に計画するのに役立ちます。
コンティンジェンシープランを作成する。コンティンジェンシープランは、バックアップ戦略です。ビジネス目標を変更する必要がある場合、どのように方向転換するか、収入がなくなり、会社の再編成が必要な場合どうするかなど、予期せぬ出来事でビジネスの当初の計画が崩れた場合、どのように対応するのかを定めます。ビジネスインパクト分析で特定した重要なリスクごとに、コンティンジェンシープランを作成するとよいでしょう。そうすれば、予期せぬ組織改革が起こったときにも、すぐに行動を起こせます。
強固な土台を固める。強固な企業文化、明確なコミュニケーション、効果的なコラボレーションツールがあれば、どんな障害でも切り抜けられます。つまり、大切なのは、現状に固執するのではなく、時間をかけてプロセスを継続的に改善し、変化が起きたときに成功できるような体制を整えることなのです。たとえば、組織文化を強化するために業界最高のオンボーディングプロセスを構築したり、フィードバックを与えたり、受けたりするために定期的なサイクルを確立したり、チームが日々の仕事を調整するためにプロジェクト管理ツールに投資したりすることが挙げられます。
組織の変化は大変なことですが、成長のための手段でもあります。大きな変化の時期を効果的に乗り切ることができれば、変化し続ける世界の中でチームを成功に導けます。
この記事の要点は、組織が変化する時期には明瞭さとコミュニケーションが不可欠であるということです。Asana は目標と仕事を結びつけ、タスクで直接コラボレーションできるようにし、情報に簡単にアクセスできるようにすることで、チームが透明性を得られるようにサポートします。Asana の機能について詳しくは、下のボタンをクリックしてください。
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