この記事では、ビジネスシーンで役立つ「ロジカルシンキング」の意味とそのメリット、フレームワーク、鍛え方などを紹介します。思いつきや感覚ではなく、筋道を立てて物事を捉える「ロジカルシンキング」は、ビジネスに必要なスキルのひとつです。詳しく知り、習得を目指しましょう。
更新: この記事は、ロジカルシンキングのメリットに関するさらに詳しい記述を含めて 2022年 11月に改訂されました。
ビジネスシーンには、自分の考えを周囲に知らせ納得してもらわねばならない場面や、物事を説明し相手を説得しなければならない場面が多々あります。自分の企画が通るように、説得力のあるプレゼンをしたい。そう思うビジネスパーソンも多くいるでしょう。ビジネスでは自分や会社、組織の考えを利害関係者にわかりやすく伝えるコミュニケーション能力の重要性は計り知れません。そこで有効なのが「ロジカルシンキング」です。
何かを説明したり、誰かを説得することに苦手意識を持っているなら、この記事で解説するロジカルシンキングを実践してみましょう。フレームワークや手法だけでなく、ロジカルシンキングの鍛え方も紹介するので参考にしてみてください。
ロジカルシンキング (logical thinking) とは、物事を体系的に整理し、筋道を立てて考える思考法のことを言います。「論理的思考」とも呼ばれるこの考え方では、物事の根拠と結論をわけ、その論理的なつながりを理解することが重要です。つまり因果関係を明確にすることで、矛盾や破綻がないように物事を整然と捉え、結論を導き出す。これがロジカルシンキングの特徴です。
日本でこの考え方が広まったきっかけは、照屋華子氏と岡田恵子氏の共著『ロジカル・シンキング』(2001) だと言われます。ビジネスシーンにおける論理的思考の重要性を説いた本書は、実践するためのポイントにも触れており、後述する MECE など有効なフレームワークも紹介しています。
ビジネスシーンでよく聞かれる思考法のひとつに「クリティカルシンキング」という考え方があります。クリティカルシンキング (批判的思考) もロジカルシンキングと同様、問題解決能力や適切な解決策を導き出す力を高めるのに有効な手法です。ロジカルシンキングと異なる点は、クリティカルシンキングは物事を捉える際に「本当にこれでいいのか」など、客観的な視点を用いるところです。この 2 つの思考法は決して相反するものではなく、組み合わせて実践すればより効果的でしょう。
ラテラルシンキング (水平思考) とは、これまでの常識や既成概念にとらわれずに、新しい手法やユニークなアイデアを導き出す思考法のことを指します。物事を「論理的」に捉えるロジカルシンキングとは異なり、ラテラルシンキングでは「柔軟性」や「独創性」がその特徴として挙げられます。
実際のところ、論理的に物事を捉える「ロジカルシンキング」は何に役立つのでしょうか?現在多くの企業が従業員に求めると言われるロジカルシンキングスキルを身につけるメリットをご紹介します。
・コミュニケーション能力の向上
・提案力の向上
・分析力の向上
・問題解決能力の向上
まず一つ目に挙げられるのが、コミュニケーション能力の向上です。ロジカルシンキングを実践することができれば、ステークホルダーと情報を共有する際や、上司に進捗報告をしたり企画をプレゼンするときなど、相手に自分の考えがしっかり伝わります。コミュニケーション能力は組織やチームの一員として働くビジネスパーソンにとって不可欠なスキルです。チームワークを高めるためにも、ロジカルシンキングは効果的な思考法でしょう。
ビジネスシーンでは、感情的な説明よりも、筋道立った論理的な説明の方が効果的である場合が多いでしょう。そういった場面でも、ロジカルシンキングは大いに役立ちます。相手を納得させることができれば、おのずと提案力も向上します。
物事の因果関係を明確に捉えるロジカルシンキングでは、分析する能力の向上も期待できます。ロジカルシンキングの大きな特徴のひとつは、原因と結果もしくは根拠と結論を明確に、かつ客観的に捉えることです。そうすることで、トラブル時には原因を見極める分析力が高まります。
分析力がアップすることで、そこから有効な解決策を導き出すことができるようになります。思いつきではなく、ロジカルに考えて提案された解決策の方が説得力があるのは明らかでしょう。こういった考え方は、リスクヘッジなどリスク対策をとるときにも役立ちます。
リスク管理計画のテンプレートを作成ロジカルシンキングには代表的な手法が 2 つ存在します。それぞれを理解して、ケースバイケースで効果的なロジカルシンキングができるようにしましょう。
帰納法とは、複数の事例や事実から共通点や傾向を見出し、そこから結論を導き出す手法です。ビジネスシーンにおけるアンケート調査がまさにこの帰納法で、実例を挙げることで説得力が増します。導き出された結論は一般論となるのが基本ですが、別の結論が存在する可能性は否めないので、普遍的なものではないことを忘れないでおきましょう。
演繹法は「三段論法」とも呼ばれる手法で、一般的なルール (事実) と事象という 2 点から結論を導き出す手法です。たとえば、事実が「A は B」であり、事象が「B は C」であった場合、導き出される結論は「A は C」となるわけです。
ロジカルシンキングのやり方とは?ここでは、実践するときに使用される代表的なフレームワークをピックアップして紹介します。
1. MECE
2. ピラミッドストラクチャー
3. ロジックツリー
MECE は Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive の頭文字をとったビジネス用語で、「モレなく、ダブりなく」という意味を持っています。戦略やマーケティングでもよく使われるこの MECE は、重なりがなく漏れもない「部分」の集合体として物事を捉えます。つまり「全体」は複数の「部分」で構成されているという考え方で、こういった客観的な全体像を説得したい相手に明確に提示することで説得を促します。MECE は話の重複、ズレ、漏れを防ぐためのフレームワークです。
マーケティングプロジェクト計画用の無料テンプレートピラミッドストラクチャー (ピラミッド構造) もロジカルシンキングの代表的なフレームワークのひとつです。ピラミッドストラクチャーでは、まず話の論点となるメインメッセージ (結論) をピラミッドのトップに置き、それを支える根拠 (キーメッセージ) を追加していきます。アプローチには、頂点から下へと考える「トップダウン」と下から頂点へと向かう「ボトムアップ」があります。ピラミッドストラクチャーは、結論を頂点に置き、そこから根拠を展開することで、内容をわかりやすく整理することができ、その正当性を説明するのに役立ちます。
ロジックツリーは、物事を要素に分解して考えるフレームワークです。ロジックツリーには以下の 3 つの種類があります。
要素分解ツリー (What ツリー): 全体を複数の構成要素に分解して作るロジックツリー
原因追求ツリー (Why ツリー): 問題の原因を書き出して具体的にしていくロジックツリー
問題解決ツリー (How ツリー): 問題の解決策を書き出して具体的にしていくロジックツリー
ロジックツリーも、ロジカルシンキングのフレームワークとしてよく知られていますが、分解していくときには MECE を用いることを忘れないようにするのが大切です。
ロジカルシンキングがどのような思考法なのか理解したら、習得するために鍛える必要があります。突然「論理的に考えてみよう」と思ってもなかなかうまくいかないかもしれません。そのときは、以下に紹介するトレーニング方法を試してみてください。
・結論から話しはじめる
・相手の立場に立つ
・フェルミ推定の問題を解く
筋道の立った説明を心がけて根拠を連ねても、一番重要な結論までたどり着かなかったり、そこまでに時間がかかりすぎては相手を納得させることは難しいかもしれません。そこで効果的なのが、まず結論から話しはじめることです。まずはメインメッセージとなる結論を述べ、そのあとに根拠や説明を加えるようにしましょう。
聞き役の目線で考えてみるのも良いトレーニング方法です。客観的に捉えることで、改善点が見えてくるかもしれません。自分の意見や説明は相手を納得させられるのか、相手の立ち場に立って考えてみましょう。自分が納得できない内容であれば、聞き手を納得させることもできません。
フェルミ推定とは、正確な値や数量を実際に調査することが難しい場合、わずかな情報を元に論理的に推論をすすめ、短時間で概算値を求めることを言います。「ある都市にピアノ調律師が何人いるか」など、特定することが困難なテーマについて用いられますが、ビジネスシーンではマーケティングリサーチにも使われています。
フェルミ推定にはロジカルシンキングが試されます。はっきりとした数値を知ることが到底不可能と思われるようなテーマも、どこまで論理的に推論し概算できるか試してみましょう。
ロジカルシンキングの意味とメリット、手法、フレームワークを紹介しました。ロジカルシンキングは一朝一夕で習得できるビジネススキルではありませんが、日々意識して鍛えていけばいずれ身につく能力です。分析力や問題解決能力の向上だけでなく、コミュニケーション能力、提案力を高めることもできるので、ビジネスチャンスがさらに広がるきっかけにもなるでしょう。
物事を論理的に捉え考えるロジカルシンキングは、個人レベルで習得を目指してもいいですが、チームやグループ内で習得を促すこともおすすめです。フェルミ推定の問題を解くなど、ゲーム感覚でトレーニングできる方法もあるので、人材育成目的のためにも積極的に取り入れてみましょう。マネージャーやチームリーダーが率先して定期ミーティングのアイスブレイク活動などで導入してみたり、新入社員用の研修や OJT などで実践することをおすすめします。
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