決定木分析は、難しい決断の後に考えられる結果やコスト、影響の概要を視覚的にまとめます。決定木分析は定量化されたデータの分析と、数値に基づいて決定をする場合に特に有益なものです。この記事では、決定木を使い、それぞれの結果の期待値を計算し、最善策を取る方法をご説明します。また、完成した決定木の例もご紹介します。
自分の選択が重大な結果を招くことを知りながら、意思決定をしたことがあるでしょうか。経験のある方なら、どのような結果になるかわからないまま最善策を考えることは特に難しいことであることをご存知のことでしょう。
決定木分析を使えば、意思決定の影響を見える化し、最善策を見出すことができます。この記事では、プロジェクトマネジメントプロセス全体で活用できる決定木の作成方法をご紹介します。
決定木とは、主な 1 つのアイデアを起点とするフローチャートで、決定の結果に基づき枝分かれするものです。通常、形が枝のついた木に似ているため「決定木」と呼ばれています。
この決定木を使った決定木分析では、難しい決断がもたらす可能性のある結果、コスト、影響の概要を視覚的にまとめます。決定木を使い、決定やその影響が導く一つ一つの結果の期待値を計算できます。そして、結果をほかの結果と比較して、最適な選択肢をすばやく判断できます。また、決定木を使い、問題解決やコスト管理、機会の可視化をすることもできます。
決定木には以下のシンボルが用いられます:
ブランチ (分岐): ブランチは、決定木の 1 つの決定から分岐する複数の線です。これらは、木の最初の決定から分岐した複数の結果または決定を示します。
決定ノード: 決定ノードは正方形で描かれ、決定木上で行われる決定を表します。決定木は必ずこの決定ノードから始まります。
チャンスノード: チャンスノードは円形で描かれ、考えられる複数の結果を示します。
エンドノード: エンドノードは三角形で描かれ、最終結果を示します。
決定木分析はこれらの記号に、決定や影響、そのほかの関連する値を組み合わせて、メリットとデメリットを示します。決定木は手書きで作成することも、フローチャートツールを使ってデジタルで作成することもできます。
Asana と Lucidchart の連携機能を試す業務運営、予算計画、プロジェクトマネジメントなど多数の分野における意思決定をするために、決定木分析を活用できます。できるだけ量的なデータや数字を入れて、効果的な決定木を作成しましょう。持っているデータの量が多いほど、期待値の判断や数値に基づいたソリューションの分析がしやすくなります。
たとえば、最もコスト効率が良いプロジェクトはどれかを判断しようとしている場合、決定木を使い、各プロジェクトで考えられる結果を分析して、最も大きい結果が得られる可能性が高いプロジェクトを選ぶことができます。
5 つのステップに従って決定木を作成し、不明確な結果を分析して、最も論理的な解決策に到達しましょう。
メインとなるアイデア、または決定から決定木の作成を始めましょう。まずは決定ノードから始まり、その後で考えられる選択肢へのブランチを追加します。
たとえばアプリを作成しようとしていて、新規作成するか、または既存のアプリをアップグレードするかを決めかねているような場合には、それぞれの決定がもたらす可能性のある結果を評価するために決定木を利用してみましょう。
この場合、最初の決定ノードは
アプリを作成する
となり、考えられる選択肢 (ブランチ) は以下の 3 つとなります。
新しいスケジューリングアプリを開発する
既存のスケジューリングアプリをアップグレードする
チーム生産性アプリを開発する
メインとなるアイデアを決定木に追加したら、各決定にチャンスノードまたは決定ノードを引き続き加えて、決定木をさらに広げます。1 つの決定から複数の結果が考えられる場合があるため、チャンスノードからは複数のブランチが発生することがあります。
たとえば、新しいスケジューリングアプリを開発することにした場合に、そのアプリがお客様から好評を得て成功した場合には、高い収益が得られるかもしれません。一方アプリが失敗に終わる可能性もあり、その場合の収益は低くなるでしょう。考えられる両方の結果を決定木に加えることが重要です。
決定木をそれ以上展開させられないところまで、チャンスノードと決定ノードを追加していきます。エンドポイントに到達したら、決定木の作成プロセス終了を示すために決定木にエンドノードを加えます。
決定木が完成したら、各決定事項の分析を開始できます。
決定木には、関連のある定量的なデータがあると理想的です。決定木に最もよく使われるデータは、金銭的な価値です。
たとえば、アプリの開発またはアップグレードをするにあたり、会社には特定の費用がかかります。また、どのアプリを作成するかによって費用も異なります。決定木の決定の下にこういった数値を書くと、意思決定のプロセスの一助となります。
また、それぞれの決定の大なり小なりの期待値の推定をしてみるのもよいでしょう。それぞれの結果のコストと、発生すると考えられる収益が判明したら、以下の計算式を使って各結果の期待値を計算できます。
期待値 (EV)= (最初に考えられる結果 x 結果の可能性) + (2 番目に考えられる結果 x 結果の可能性) - コスト
考えられる両方の結果をそれぞれの結果が発生する可能性と掛けてから、それぞれの値を足して計算します。また、合計金額から初期費用を引く必要があります。
各決定事項について考えられる結果を書き出したら、許容できるリスクの大きさに基づいて、どちらの決定事項がよいかを判断します。最も期待値の高いものが、必ずしも選択したいものであるとは限りません。これは、見返りが大きいものは、プロジェクトリスクも大きい場合があるためです。
決定木分析の期待値は、確率のアルゴリズムから求められていることに留意しましょう。決定木の結果をどのように評価するかは、あなたやチーム次第です。
記事: リスクマネジメントの基本と 6 つのステップを徹底解説決定木分析を適切に使うと、よい決定をすることができますが、デメリットもあります。決定木に関連した問題点を理解していれば、この意思決定ツールのメリットを享受できます。
難しい決断に悩み、たくさんのデータがある場合には、それぞれの選択を行った場合に考えられる結果または利益を決定木で視覚化できます。
透明性: 決定木の優れた部分は、あなたやチームが意思決定をするために、その点に注力したアプローチを提供することです。決断を解析し、期待値をそれぞれ計算すると、前進するためにはどちらが合理的な決断であるかについての明確なアイデアが得られることでしょう。
効率的: 決定木は、作成に要する時間やリソースが少ないため効率的です。調査、ユーザーテスト、プロトタイプ作成などの意思決定ツールの場合は終了するまでに数か月かかったり、多大な費用が掛かったりすることがあります。決定木は何をするかを決定するためのシンプルかつ効率的な手段です。
フレキシブル: 決定木を作成した後に新しいアイデアを思い付いた場合には、少しの作業でその決定を木に追加できます。また、分析中に情報を得た場合には考えられる結果のブランチを追加することもできます。
決定木にもデメリットがあり、完璧な意思決定ツールではありません。これらのデメリットを理解すると、予測プロセスの一部として決定木を活用できるようになります。
複雑: 決定木は、ほとんどの場合にはっきりしたエンドポイントが出ますが、決定木に決定を多数加えすぎると複雑になってしまいます。決定木のブランチが多方向に向かっている場合には、決定木の秘密保持や期待値の計算が大変になることがあります。決定木の最も良い使い方は、シンプルに保つことです。これで混乱を招いたり、メリットを失ったりすることもありません。選択肢を絞るために他の意思決定ツールを使い、選択肢が少なくなってから決定木を使うといった手法も有効です。
不安定: 計算式の正確性を維持するためには、決定木の中にある値の安定性を保つことが重要です。データのほんの一部だけを変更した場合でも、大きなデータが崩れてしまうことがあります。
リスキー: 決定木は確率的アルゴリズムを使うため、計算する期待値は推定であり、各結果の正確な予測ではありません。つまり、これらの推定内容は割り引いて考えなければなりません。確率と結果を十分考慮しなければ、選んだ決定で多大なリスクを負うことになるかもしれません。
以下の決定木分析の例では、新しいソフトウェアアプリを開発するか、アップグレードするかのどちらかを選択する場合の決定木の作成方法をご紹介します。
決定木がブランチで枝分かれするにつれ、結果として大小の収益が入り、プロジェクトのコストが期待値から差し引かれます。
この例の決定ノード:
新しいスケジューリングアプリの開発: 500 万円
既存のスケジューリングアプリのアップグレード: 250 万円
チーム生産性アプリの開発: 750 万円
この例のチャンスノード:
決定 1 の収益 (大と小): 40% と 55%
決定 2 の収益 (大と小): 60% と 38%
決定 3 の収益 (大と小): 55%と 45%
この例のエンドノード
決定 1 から予想される収益: 2000 万円または 1500 万円
決定 2 から予想される収益: 1000 万円または 800 万円
決定 3 から予想される収益: 2500 万円または 2000 万円
新しいチーム生産性アプリの開発はチームにかかるコストが最も高いものの、決定木分析によると、会社へもたらす価値の期待値が最も高くなるという結果が示されています。
決定木は手書きでも作成できますが、決定木が作成できるソフトウェアを使い、考えられる解決策を図示すると、フローチャートへのさまざまな要素の追加、必要に応じた変更の追加、木の価値の計算がさらに簡単になります。Asana を Lucidchart と連携すれば、詳細な図を作成して、一元化されたプロジェクト管理ツールで作成した図をチームと共有できます。
決定木作成ソフトウェアを使って意思決定のスキルに自信を持つことで、うまくチームをリードして、プロジェクトを管理できます。
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