カイゼンの土台には、より充実した生活を送り続けるには、人生を絶えず改善しなければならないという考え方があります。ビジネスの文脈に当てはめれば、小さな改善を長期にわたって積み重ねれば、長い目で見たときに大きな変化を生み出しうると解釈できます。
毎日の生活について考えてみましょう。仕事、学校、家庭、人付き合いといった生活のさまざまな要素のうちに、改善したいものはないでしょうか?たとえ現状に満足しているとしても、必ずどこかに改善の余地があるものです。
それがカイゼンの哲学の基本です。カイゼンの土台にあるのは、より充実した生活を送り続けるために、人生を絶えず改善し続けなければならないという考え方です。これをもとに、ビジネスにおける継続的改善という考え方が生まれました。
日本語の、よりよい状態を作り出すという意味の「改善」という言葉が、「カイゼン」として世界でも使われています。カイゼンは、戦略的な優先順位づけから日常業務に至るまで、ビジネスのあらゆる側面を継続的に改善していくプロセスを指します。継続的な改善プロセスとはつまり、時間をかけて小さな改善を積み重ねることで、長期的に見て大きな変化をもたらせることを意味しています。
カイゼンのプロセスは、第二次世界大戦後の 1950年代に、日本の製造業において盛んに実施されました。カイゼンの目標は、プロセスを継続的に改良して、無駄を排除することです。この場合の無駄とは、時間の非効率な使い方や、プロセスの重複を指します。
この継続的改善モデルの有名な例が、トヨタの生産モデルです。「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」作ることを重視したこのトヨタモデルを発祥とするカイゼンは、製造業だけでなく多くの業種で取り入れられてきました。
継続的改善プロセスの目標は、非効率を減らしながら、顧客にとっての価値を生み出す活動の最適化を図ることです。このプロセスによって減らそうとする無駄には 3 種類あり、これはリーン生産方式のプロセスに共通しています。
ここでの「ムダ」とは不経済なもの、無用なもの、という意味です。継続的改善プロセスに関していえば、仕事のプロセスを妨げ、業務効率を下げるものが「ムダ」に当たります。
ムダには 2 つのタイプがあります。
タイプ 1: 顧客にとって価値を生み出さなくても、必要なプロセス。わかりやすい例が安全検査です。製品に価値は付加されませんが、お客様に安全な製品を提供することは重要です。
タイプ 2: 顧客にとって価値を生み出さず、不必要なプロセス。多くの場合、文書による記録などの会社内部のプロセスです。カイゼン方式が減らそうとするプロセスはこのタイプ 2 のムダです。
タイプ 2 に当てはまるムダは、次の 7 つに分類できます。
運搬の無駄: 製品を必要以上に移動すること
在庫の無駄: モノや原材料の在庫を必要以上に持つこと
動作の無駄: 機械や人を不必要に動かすこと
待つことの無駄: あるステップから次のステップまでの手持ち無沙汰な時間
作りすぎの無駄: 製品を作りすぎること
加工の無駄: 価値につながらない必要以上の作業を製品に対して行うこと
不良の無駄: 使用できない製品を製造すること
「ムラ」とは一定でないこと、不ぞろいであることを意味し、ムダの発生につながります。ムラが起きないようにするには、ボトルネックになるステージが生まれないよう、バランスのとれた合理的なプロセスの確立を目指します。
ムラの簡単な例として、組み立てラインについて考えてみましょう。組み立てラインのあるセクションの作業が遅れれば、生産量が下がるか、あるいは渋滞しているセクションで使いきれないほど部品が作られてしまうかもしれません。
かんばん方式は、こうしたボトルネックの発生を最小限にする優れた手法です。あるステップから次のステップに「プル (pull)」するかんばん方式では、チームは無駄なく必要なものだけを使用できます。
Asana でかんばんボードを作る「ムリ」とは、過剰な負担がかかっていることや、能力を超えていることを意味します。仕事量に当てはめれば、負担が適正でないことがムリに当たります。機械にムリを強いれば、故障の原因となり、修理にコストがかかります。従業員にムリをさせれば、欠勤や病気、燃え尽き症候群の原因になるかもしれません。
継続的改善の文化を作るには、さまざまな戦略があります。ここでは、カイゼンプロセスを実践する、一般的な手法をいくつかご紹介します。
PDCA サイクルは、品質管理の父と呼ばれるウォルター・シューハートが考案し、W・エドワーズ・デミングがさらに発展させた仕組みです。
PDCA サイクルには 4 つの主要なステップがあります。
Plan (計画): プロジェクトの主要な目標と、成功の測定方法を特定します。
Do (実行): 計画を実地に行い、目標を達成します。
Check (評価): 実行のフェーズで行った内容を評価します。改善は見られたでしょうか?
Act (改善): 変更をプロジェクト全体に広げます。あるいは実行フェーズで改善しなかった検証結果については、改善に至るまで、細かい変更を行います。
このフレームワークは、プロジェクト管理やプロセスの改善に関する問題への取り組みや解消に応用されます。循環的な手法のため、変更を簡単に繰り返し実施できます。
記事: Plan (計画) - Do (実行) - Check (評価) - Act (改善) (PDCA) サイクルとは?シックスシグマとは、製造業で使われることの多いプロセス改善のメソッドです。製造工程におけるばらつきを最小限にすることがシックスシグマの考え方です。ばらつきを抑えるために、厳格な品質保証と品質管理評価を行います。
シックスシグマには、DMAIC と DMADV の 2 つの主要な手法があります。
DMAIC には次の 5 つのフェーズがあります。
Define (定義): システムを定義する
Measure (測定): 現在のプロセスの主要な要素を測定し、データを収集する
Analyze (分析): データを分析して、原因と結果を検証する
Improve (改善): データに基づき、現在のプロセスを改善し、最適化する
Control (管理): 今後のプロセスが逸脱しないように管理する
DMADV は、「Design for Six Sigma (DFSS)」としても知られています。この手法は、新製品開発のプロセスを立ち上げる際に使用します。DMADV を構成する 5 つのステージは次のとおりです。
Define (定義): 顧客のニーズに合わせて設計の目標を定義する
Measure (測定): 製品の機能と製造能力を測定し、判断する
Analyze (分析): 設計の代替案を開発するための分析を行う
Design (設計): 前のステップの分析に基づいて、改良を加えた代替案を設計する
Verify (検証): デザインを検証し、テスト用パイロットを設定する
アジャイルは、プロジェクトをより細かいフェーズに分解するプロジェクト管理のフレームワークです。アジャイルは反復的な形式をとる場合があり、継続的改善の文化を取り入れることができます。アジャイルでは、チームメンバーはスプリントサイクルのたびに振り返りを行い、次のスプリントで行うべき小さな変更を検討します。
記事: ビギナーズガイド: アジャイル手法継続的改善の枠組みを使うと、変更を容易に行えます。継続的改善では、小さな変更を行い、それらが有効かどうかを検証するため、うまくいかなくても、変更によってワークフローが滞ることがありません。
このわかりやすい例が、組み立てラインへの変更です。互いに関連していない 2 つのステップを入れ替えて、生産フローの速度が変化するかどうかを検証します。生産速度が落ちるなら、全体のプロセスに影響を与えず、簡単に元のプロセスに戻せます。
継続的改善を導入すると、各チームメンバーが「我がこと」として自分のプロセスに取り組めるようになります。カイゼンは、組織全体で導入し、企業文化に浸透させると特に効果を発揮します。うまく機能しないことがあれば、チームメンバーがそれぞれのワークフローを最適化するために必要な変更を率先して行えます。
あるプロセスがチームに有効だったとしても、そのチームに新たなメンバーが加わったらワークフローがうまく働かなくなるかもしれません。しかしそこでカイゼンを活用すれば、環境の変化に合わせたプロセスの調整が可能です。
たとえば、小規模なチームのワークフローを大規模なチームに合わせてスケールする場合を考えてみましょう。2、3 名のチームだった頃は、情報をスプレッドシートで追跡していたかもしれませんが、20 名に増えたチームがスプレッドシートで共同作業するのは困難です。カイゼンを導入すれば、チームは人数の増加に合わせて最適な情報管理のワークフローを探して、さまざまな方法を試せます。
チームメンバーが各々に合った形に業務プロセスを改善するよう奨励する社内文化があれば、会社全体で好奇心が育ち、発見が促されます。個人はプロセスを壊すことや、失敗を批判されることを恐れずに試行錯誤でき、うまくいかなければ、以前の方法に戻せばいいからです。
チームがまだ何らかの継続的改善モデルを使用していない場合、新しいプロセスの導入には少し時間がかかるかもしれません。この考え方を会社に導入するためのヒントをいくつかご紹介します。
カイゼンの目標そのものが、小規模な変更を段階的に行うことですから、最初はチームメンバーの数人と、何か変更を行ってうまくいくか様子を見ましょう。成功すれば、より多くのチームに広げることを試します。このような導入プロセスもカイゼンの実践といえます。
継続的改善は、リーダーが個々の社員を応援する場合に特に成功しやすくなります。特別なトレーニングを管理職向けに実施して、チームメンバーがワークフローを改善する際に、障害となる問題を取り除き、新しいアイデアを試すことを奨励するよう勧めてください。
継続的改善モデルに失敗する要因の一つが、完璧を求めることです。これを達成するのは不可能ですし、そもそも小さな変化を起こして昨日よりもよりよくするというのがカイゼンの考え方です。完璧に狙いを定めると、チームは実際には不要な変更を行うようになる可能性があります。
継続的改善は、かんばんやアジャイルなどの反復的なプロジェクト管理戦略と相性がよい手法です。仕事を 1 か所で整理できるワークマネジメントツールと組み合わせると、チームにとって成功のために必要なポジティブな変化を起こす後押しになるかもしれません。
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