編集者注: 本記事の執筆者は、KlientBoost オペレーション担当バイスプレジデント Richard Uruchurtu 氏です。
KlientBoost は、クリック課金型広告 (PPC)、コンバージョン率最適化 (CRO)、検索エンジン最適化 (SEO)、メールマーケティングを通じたダイレクトレスポンスマーケティングとボトムオブファネル (BOFU) マーケティングを主事業とするデジタルマーケティングエージェンシーです。当社は、可視性とコミュニケーションを重視しているため、顧客ごとに専用の Asana プロジェクトを作成し、各顧客向けの業務を管理しています。顧客は「ゲスト」として自社向けのプロジェクトにアクセスし、重要なコミュニケーションや最新情報を確認できます。
顧客のために広告キャンペーンを管理する目的で Asana の使用を開始した当初、Asana で管理していた顧客数は 110 社、プロジェクト数は 110 件でした。Asana のポートフォリオを使用したことにより、これらのプロジェクトをすべて俯瞰し、多数あるキャンペーンチェックリストのうち順調なもの、リスクがあるもの、要対応のものはどれかを一目で把握することができました。
非常に規模が大きいポートフォリオだったため、各プロジェクト内の詳細なタスクレベルにおける状況をすばやく判断する手段も必要でした。その詳細な全体像を得るために、Asana API を利用し、キャンペーンの進捗を視覚化し、結果分析のレポートを作成することにしました。今回は、Asana API を使用してレポートを 1 件のみならず 2 件作成した経験から、Asana API を効果的に活用するための最大の秘訣を 3 つ紹介します。
KlientBoost では、さまざまな事業部門で Asana API を使用してレポートを作成していますが、その最大の用途は、各顧客向けに遂行している各々のマーケティング戦略の追跡です。個々の API レポートは少しずつ内容が異なりますが、最も大規模なレポートについては、実際に作成する前に、レポートから得たいものは何であるのかを決定することが不可欠でした。
カスタマイズされたレポートを作成する上で最も重要なポイントは、API で作成を開始する前に、重視する詳細やプロセスはどれかを決定することです。どのプロセスを作成したいのかが明確でなければ、データ分析の方法をあとで何度も調整したり、変更を繰り返したりする作業に追われることになります。それを防ぐためには、最終的に目指す成果物をしっかり見据えた上で始動することが肝心です。そうすれば、何を入力データとすればよいのかもおのずと明らかになります。
最初に作成したレポートは、顧客向けにクリエイティブアセットを構築するデザイナー用のものでした。この最初のレポートの目的は、当社のすべての Asana プロジェクトからタスクデータを収集することにより、各デザイナーの担当作業の進捗状況を多数あるプロジェクト全体にわたって把握することでした。その後、タグを追加してレポートをさらに高度化したことにより、たとえば個別のクリエイティブテストが成功したかどうかといった詳細なデータも特定できるまでに至りました。そのデータを使用して、興味深い質問への回答や、変化に対するプロセスの適応を開始することができました。
デザイナーを対象にカスタマイズされた API レポートによるメリットを体験したことから、レポートの対象を KlientBoost のすべてのアカウントマネージャー、つまり当社の PPC 広告の最適化を実際に進めているチームに広げることを決定しました。最初に作成した API レポートから得た学びを生かし、第 2 のより強力なレポートシステムを作成することを決定し、そのレポートを BoostFlow と名付けました。これは会社名「KlientBoost」をもじった言葉で、当社がブランド化したワークフローの名称でもあります。
BoostFlow レポートの作成は、コーディング活動というよりは、思考活動だったと言った方がよいかもしれません。このレポートを完成させる前に、当社がレポートで閲覧したいさまざまなデータ要素に関する正確な判断を Asana 外で可能にするために、まずはそのためのデータを Asana に入力する方式を統一するシステムが必要でした。このデータ入力プロセスを明確にする上で、主要な要素が 2 つありました。
まず、各プロジェクトにおいて、情報を追跡するために、カスタムフィールド を作成しました。カスタムフィールドの例としては、アカウントマネージャーの戦略や、その戦略の効果を「採点」するための数値などがあります。具体的には、たとえばさまざまなプラットフォームで実行している広告テストの効果レベルを測定できれば、どのアカウントマネージャーが Google、Facebook、Bing に長けているのかが把握できます。
次に、カスタムフィールドの統一された適用と運用をアカウントマネージャーチーム全体を通じて徹底するための制度を開発しました。そのために、すべてのアカウントマネージャーを対象とするしっかりとした研修プログラムを開講しました。たとえば、Asana の各タスクには、-3 ~ +3 の効果スコアがついています。多くの研修では、そのスコアを決定する入力データの標準化を重点的に説明しました。また、チームメンバーが学んだ知識を他のメンバーに伝達し、チーム全体のレベルを向上するための場も設けました。
最初の API レポートではタグを使用しましたが、当社が今日も使用している BoostFlow API レポートでは、データの標準化と収集の観点からより優れた手段であるカスタムフィールドが不可欠な要素となりました。
カスタムフィールドを使用すれば、アカウントマネージャーは、すべてのプロジェクトを通じてデータを標準化できます (研修も併せて必要)。それにより、データを視覚化するプロセスに情報を取り込んだとき、アカウントマネージャーの活動を詳細なレベルまで把握することができ、同時に手作業を最小限に抑えることもできます。会社の総計から、チーム別、プラットフォーム別、広告別のデータまで、必要に応じてあらゆるデータを自在にグラフに描き出すことができます。カスタムフィールドにはこれだけの力があるのです。
以上のように、カスタムフィールドのデータは、レポートにおける視覚化を経て大活躍します。一方で、Asana におけるユーザー体験への影響を常に考慮する必要があります。カスタムフィールドが多すぎる場合、Asana におけるタスクの説明が隠されてしまいます。過剰に使用せず、シンプルに保つのがポイントです。
API を使用して Asana にアクセスすることは簡単です。一から始める必要はありません。Asana からのデータ収集が驚くほど楽になるツールは各種あります。スクリプト言語を書き始める前に、正しい API コールを実行できるように、チーム、ポートフォリオ、プロジェクト、タスクから成る Asana の構造を十分に理解することが大切です。
最初に作成した API レポートでは、情報を Amazon AWS に送信し、Google スプレッドシートに保管しました。次に作成した API レポートである BoostFlow は、Asana 用のコミュニティコネクタを備える StitchData というツールでスタートしました。コミュニティコネクタにより、Asana API にアクセスし、そのデータを BigQuery に送信することができました。BigQuery においては、必要とする特定のデータに対する適正な SQL クエリを実行することができました。それにより、そのデータソースを Google Data Studio に送り込み、BoostFlow ダッシュボードを作成することができたのです。
KlientBoost は、PPC およびコンバージョン率最適化 (CRO) に特化した企業として創設されたため、BoostFlow はその目的に合わせて最適化されています。一方、最近では SEO、メールマーケティング、クリエイティブの各分野に事業を拡大しています。BoostFlow はこういった種類のサービスに対応するために設計されたツールではないため、これらのサービス向けには限定的にしかデータを解釈できません。そのため現在、これら 3 種の比較的新しいサービスを有意義な形で BoostFlow に統合する方法を再度入念に検討しています。この課題についても、API という味方があるので、安心してソリューションに取り組んでいます。
Asana ブログ編集部は、Asana を活用してミッションを達成している KlientBoost のようなお客様に、刺激をいただいています。Asana を使う世界中のチームの取り組みをぜひご覧ください。