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三井住友信託銀行 資産管理企画部 DX推進チーム主任 井原 紀子 氏(左) 三井住友信託銀行 資産管理企画部 DX推進チーム 調査役 大澤 孝洋 氏(右)

三井住友信託銀行、Asana導入で組織文化を変革 属人化脱却とチーム協働の実現

三井住友信託銀行
地域日本
会社の規模エンタープライズ
業界金融サービス
主なワークフロー
仕事リクエスト
主な機能
check-circle iconタスク

ハイライト

  • 専門性が高く属人化しやすい資産管理の業務をナレッジ化: 専門性の高い業務であるがゆえに属人化していた資産管理の業務のスキルやノウハウをAsanaで可視化し、組織のナレッジに転換

  • タスク上でのコミュニケーションにより、新たな課題の発見や議論が活発に: 一方通行だった業務報告をAsanaに移行した結果、双方向の会話が生まれ、業務上の課題の共有、解決のための議論が活発化

  • 1ヶ月1人あたり約6時間の時間を削減し、専門性のある業務に集中できるように:  管理・報告プロセスをAsanaに移行したことで、無駄な時間を削減し、より専門性の高い価値ある仕事に集中できる時間が増加

労働市場の人手不足が深刻化する「2030年問題」を見据え、堅牢なセキュリティの維持が求められる銀行業界でも、DXによる業務改善の必要性が高まっています。

三井住友信託銀行は、三井住友トラストグループの中核を担う信託銀行で、個人事業、法人事業、投資家事業、不動産事業、マーケット事業と多岐に渡る事業を展開し、業界トップクラスのシェアを誇っています。投資家事業の一部である資産管理事業は、投資家や運用会社などお客様のパートナーとして、資産運用を支える幅広い資産管理サービスを提供し、社会課題解決に向けた資金好循環の創出に貢献しています。

伝統資産を中心としたアセットサービスに加え、IT・デジタル基盤を活用した高度なレポーティングサービスやミドル・バック業務のアウトソース受任サービスを提供しており、顧客ニーズに合わせた細やかなカスタマイズを強みとしています。一方で、そうした少量多品種のサービスを支える専門性の高い業務を維持するためには、継続的な業務プロセスの改善が不可欠です。

株高や金利、物価上昇といった社会変化と、政府の「資産運用立国」構想も追い風となり、多様な投資資産や投資機会の拡大に向けた資産管理サービスへのニーズや期待が高まっています。業務のデジタル化・効率化による生産性向上が急務となる中、事業独自の施策としてタスク管理のデジタル化を実現するAsanaの導入に踏み切り、抜本的なオペレーション改革に向けた取り組みを推進しています。

資産管理事業のデジタルトランスフォーメーション推進を担う資産管理企画部DX推進チームにおいて、Asana導入をリードする井原 紀子氏とAsana導入を企画した大澤 孝洋氏に、Asana導入の経緯やメリット、今後の展望などをお聞きしました。

専門性の高さゆえの属人化やタスク管理、ナレッジ共有に課題。将来の人材不足への不安も

三井住友信託銀行は資産管理業界のリーディングカンパニーとして、幅広い顧客ニーズに対応するための業務体制を備えています。これまでも業務プロセスの標準化や効率化には取り組んできましたが、昨今の資産運用・資産管理ニーズの拡大に伴い、サービスがさらに多様化していき、特定の商品や顧客に紐づく新たな業務プロセスが次々と生まれていきました。多種多様な業務プロセスを管理するために、各担当者が作成したExcelで管理せざるを得ない状況も発生し、時には業務に関連するナレッジが属人化してしまうこともありました。 

また、Asana導入以前はOutlookの受信トレイやExcelで作成した管理簿を利用してタスク管理やプロセス管理を実施しており、やるべき仕事の関連情報がメールやExcelに分散され、人が情報を整理取捨選択する「仕事のための仕事」が発生してしまうことが課題でした。

ナレッジとして蓄積されるべき過去のコミュニケーションや対応履歴も、個人のメールボックスに埋もれてしまい組織知化されません。

属人化を脱却して社員全体のスキルを底上げし、生産性を向上させるにはこうした様々な障壁を乗り越える必要がありました。

Asana導入のきっかけについて、井原氏はこう話します。

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各現場にも課題認識はありましたが、日々の業務に追われて業務改善に割く時間が捻出できない状態でした。

各部署が専門性の高い業務を行っており、スキルが属人化してしまっている点にも懸念がありました。コロナ禍を受けて在宅勤務が進み、新人教育を含めた組織内のコミュニケーションの面でもやりにくさが生じているだろうと考えていました。(井原氏)”

三井住友信託銀行 資産管理企画部 DX推進チーム主任 井原 紀子 氏

三井住友信託銀行 資産管理企画部 DX推進チーム主任 井原 紀子 氏

事業全体の業務プロセス改善に取り組んでいる大澤氏もまた、別の視点から改革の必要性を感じていました。

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2030年に向けて、自らのビジネスをどう広げていくかを考えていかなければいけません。

人口減少は止められない一方で、日本における資産運用、資産管理のニーズは増えており、海外から運用会社を日本に呼び込む動きも広がっています。運用会社が増えていけば、我々の業務のニーズも増えていきます。人ベースでやっていた業務が立ち行かなくなる危機感を抱える中で、仕事のやり方を変えていかなければならないと感じ、個人のタスクからプロジェクトや定例業務まで管理できるソリューションを探していました。(大澤氏)”

プロジェクト管理ツールを探すなかで、大澤氏は他の事業部との情報交換でAsanaの名前を知ります。さっそくGartner社が提供するGartner Peer InsightsでAsanaについて調べました。

タスク管理やプロジェクト管理のカテゴリーに掲載されていた複数のソリューションを試しに利用し、比較しました。Asanaを操作したとき、Asanaを使って業務を進めるイメージがハッキリと浮かびました。他のソリューションも同様の機能を持っていましたが、ユーザーのITリテラシーのレベルにかかわらず誰でも使えるUIを提供していると感じたのです。また、グローバル企業でありながら、日本のデータセンターを選択できた点も、Asanaを選定した理由の一つです」(大澤氏)

2022年11月から日本のデータセンターの提供を開始しているAsanaは、銀行などセキュリティを重視する企業や組織も受け入れやすい条件が整っていたのです。

IT統制のセキュリティ要件をクリア。チェンジマネジメントで社内浸透

2023年4 月、Asana導入を推進する事務局を設置します。はじめにクリアしなければならなかったのはセキュリティの壁でした。銀行が定めたハイレベルなセキュリティ規範に沿ってAsanaをどう運用するのか、Asanaの担当者の協力を得ながら検討を始めます。

社内情報の分別管理に加え、外部からの侵入と内部からの漏洩を防ぐ仕組みを担保する必要がありました。事業独自の導入であっても、認証やアクセス制御機能の構築には全社のIT基盤を運営する部署の協力が必要でした。ユーザー部門主導でのITツール導入の検討は前例のないチャレンジでしたが、関係者を巻き込み協働しながら必要なセキュリティを構築しました。

そして無事に2023年7月から一部のメンバーでトライアルを開始、2024年4月には本格導入をはじめ、現在は事業全体約500人規模の運用を行っています。

導入にあたり、事務局が参考にしたのは、Asanaが公開している「お役立ちリソース」の     「チェンジマネジメント」に関する記事でした。この手順に則り、新たなツールの導入に向けて課やチームごとに「Asanaリーダー」を置くことを決めました。業務のリソースを割くことから、事前に各部署の部長クラスに活動方針や目指すゴールを共有したうえで任命をお願いしました。

事務局とAsanaリーダーは週に1回30分のオンラインミーティングで、導入進捗の共有やAsanaの使い方に関するナレッジトランスファーを実施し、個別に課題を抱えている場合は事務局が出向いて、ハンズオンで課題解決に協力しています。

「それまでの業務プロセスをそのままAsanaに置き換えるだけではなく、何のための作業か、課題に感じていることはないかを丁寧にヒアリングし、本当に必要なタスクかどうかを検討することが大切です。各部署の担当者と一緒に話しながら、業務改善効果を出すための使い方を考えています」(井原氏)

さらに、Asana利用者全員に対してメールマガジンを2週間ごとに発行し、活用事例やタスク管理における考え方などについて周知しています。その他、おおよそ3カ月に一度、Asanaのフォーム機能を使ったアンケートを行って利用者全員から感想や要望を収集し、リーダー支援活動やメールマガジンのコンテンツに反映させるといったサイクルを作り上げました。

務局によるAsana推進活動
事務局によるAsana推進活動

事務局の活動を通じて、事業統括部としての「CoE」(Center of Excellence:組織を横断して組織強化の取り組みを行うための人材や研究拠点)活動に、Asanaが大いに貢献することに大澤氏は気づきます。

「現場の人に仕事で価値を出してもらうために、課題分析、対応策の設定、実現する力を我々が支援しています。オンラインミーティングで挙げられた課題や、他チームによるトライアルや課題解決をすべてAsana上に掲載し、リーダー全員が参考にできるように蓄積しています。情報をタスク化し、プロジェクトやポートフォリオを活用し、短い時間の中で試行錯誤を繰り返しながら適切な情報管理を実現できるAsanaの柔軟性は、CoE機能の強化に新たな示唆を与えてくれたと感じています」 (大澤氏)

三井住友信託銀行 資産管理企画部 DX推進チーム 調査役 大澤 孝洋 氏

三井住友信託銀行 資産管理企画部 DX推進チーム 調査役 大澤 孝洋 氏

自らの力で業務改革できることを実感。コミュニケーションの質も向上し、長期利用者では1月あたり6時間の削減も

こうした事務局の地盤づくりにより、井原氏はコミュニケーションの活発化とタスクの共有について、Asanaの効果を感じています。

「以前よりも柔軟な働き方が選択できるようになりましたが、金融機関特有の出社しなければできない業務もあります。Asanaを使ってその日の出社/在宅の状況をプロジェクト上で見える化し、出社シフトを手軽に調整できるようにしたり、各自のタスクがAsana上でチームに共有されており、お互いにタスクで依頼し合う習慣ができたため、休暇の引き継ぎや休暇明けのキャッチアップを短時間で行えるようになったという声も聞きます。

また当社では、社員間のコミュニケーションの活性化を目的として、業務日誌を通じた日々の報告を行っていますが、実施した作業を報告しているだけでは事務的なものになりがちでした。Asanaを使うことで、実施したことは完了タスクの一覧を見れば済むため、代わりに本来共有すべき業務推進中の考えやアイデア、悩みなどを報告するようになり、コミュニケーションの質が良くなったと感じています」(井原氏)

また、DX推進チームでは、タイムトラッキングとポートフォリオのダッシュボードを活用した業務状況の可視化にトライしています。完了タスクから作業にかかるパフォーマンス情報を作成し、チームの生産性向上に利用する予定です。

タイムトラッキングとダッシュボードを活用した業務状況の可視化
タイムトラッキングとダッシュボードを活用した業務状況の可視化

ナレッジマネジメントにもAsanaは利用されています。業務手順をプロジェクトやタスクにテンプレート化するほか、日々の業務で生まれる事例や知見をその場でタスク化し、組織知化する取り組みも行われています。加えて、業務に関する疑問を質問タスクとして投稿し、所属員同士で知識を書き込み共有できる場をAsana上に用意したことで、ナレッジマネジメント、属人化防止、コミュニケーションの活性化及び人材育成にも貢献しています。

外部環境の変化、顧客ニーズへの対応、これまで培ってきた幅広い商品プロダクトの管理や選択と集中を行いながらビジネスを推進するためには、予め設定された事業戦略・計画に対する進捗確認の高度化や、個人の業務との関連性の見える化も課題でした。そうした課題に対応するためにゴール機能の利用も始めています。

ゴール機能を使うことで、プロジェクトがDX推進チームの目標や事業計画などのゴールに繋がっていることが可視化されるため、自分と組織とのつながりを意識できる上、自分の成果が組織にどのように貢献するかを視覚的に把握でき、1人1人がやりがいを持って仕事を進めることができています。

利用者が増えると、チームリーダー以外にもAsanaに興味を持ち、一緒に率先して取り組んでくれる仲間も現れました。

利用方法に関する質問を受け付け管理する仕組みを、フォーム機能を活用して実現しています。直接ユーザーと話すと、担当する業務の課題を自ら解決しようとする意欲を持つ方が想定以上に多く、驚かされました 」(井原氏)

“利用者の隠れたニーズを掘り起こし改善活動を促進するソリューションであることも、Asanaの魅力の一つに感じています” (井原氏)

3カ月に一度実施しているアンケートでは、Asanaの定量的な効果も取得しています。導入初期から1年半ほど利用している長期利用者については、導入前と比べて1月当たり約6時間の削減ができている計算になります。さらに、利用期間が長くなるほど活用度が上がり、効果も比例することがアンケート結果から見えてきました。

大澤氏はこの数字だけでなく、ユーザーが業務改善を実感できることが重要と説明します。

「業務改善というと、OutlookやExcelなどのEUCを作成するか、ITサイドにシステム開発をまかせることが当たり前でした。Asanaは新たな業務改善の選択肢を提供してくれており、ユーザー自ら業務改善を進め成果を実感できるツールです。Asanaの導入・運営にかかるコスト以上に定量的なリターンを得られているうえ、定性的なプラスの効果もあると考えています”(大澤氏)

ユーザーと活用範囲を拡大し業務効率化のさらに一歩先。組織カルチャーの変革や事業価値向上を目指す

Asanaを導入したことにより、組織として潜在的な課題が浮き彫りになったと大澤氏は語ります。

「Asanaは、タスクを作成すると、自ずと実行責任が明確になるところが素晴らしいと思います。ただ、これまでユーザーの利用方法を見てきて、他者へのタスクのアサインを躊躇う場面に遭遇したり、タスクの担当者に複数人を割り当てられないかという質問を何度か受けたりすることがありました。個々人が支え合い、チームで成果を出す組織文化は素晴らしく、今後も大切にしていきたいと考えています。また、Asanaによって仕事が整理されると、所属員のコミュニケーションがタスクやコメントとなって受信トレイに届きます」(大澤氏)

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誰でも、誰に対しても、意見や気持ちを発信することができ、仲間と一緒に適切な打ち手を考え実践する風土創りに取り組む大変貴重な機会になりました(大澤氏)”

さらに、次はAsanaの利用を他部署にまで広げ、部門間が連携されることで事業の価値向上に役立てる意向です。また、三井住友トラストグループのTrust Base株式会社と定期的に情報交換し、ユースケースやプラクティスを参考に、情報管理やAI利用ポリシーの所管部署との調整を準備しています。

さらに大澤氏は、社内だけでなく、セキュアな環境を維持しつつ、Asanaを活用した外部企業との情報連携の実現を検討する意向を示しました。

「当事業では、運用会社のミドルバック業務を受任するBPOサービスを主要なサービスと位置付けています。サービス提供までに顧客と当社の間で発生するコミュニケーションやタスク管理に改善の余地が残っているので、Asanaのゲスト機能や組織管理機能などを利用して、適切に情報管理をしつつ顧客とのコラボレーションを深める方法を検討していきたいと思います」(大澤氏)

このように様々なステークホルダーとの連携により三井住友信託銀行の「社会インフラの結束点」としての価値を高めていくことを目指しているとのことです。

「当社は日本で唯一の専業信託銀行であり、『個人』『法人』『投資家』という経済主体の資金・資産・資本の好循環を促進し、社会的価値と経済的価値の両立を目指しています。社会や経済の結節点である我々が、社内外のステークホルダーと効率的なコラボレーションをできるようになれば、更なる価値創造に貢献できると考えています。Asanaを導入したことで、目標に向けてやるべきことがより明確になりました」(大澤氏)

Asanaの浸透とともに、三井住友信託銀行の業務効率化と、その一歩先への改革に向けた取り組みにもますます拍車がかかりそうです。

した三井住友信託銀行

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