アジャイルセレモニーとは、アジャイルプロセス中にチームが次のステップについて話し合う際に開くイベントのことです。この記事では、4 つの主なアジャイルセレモニーの詳細とスプリントサイクル中に各セレモニーを使ってプロジェクトに取り組む方法について説明します。
セレモニーとは、何かを祝う機会のことです。卒業式は、一定の学業を修了したことを祝う機会であり、結婚式は、愛と結び付きを祝う場のことを言います。またオリンピックでは、トップアスリート達の闘いを祝う開会式と閉会式が行われます。
そうしたセレモニーは、私たちが人生の重要なマイルストーンに到達するタイミングで決まって行われます。「アジャイルセレモニー」という用語は、重要なマイルストーンの達成を祝うというコンセプトから生まれたものです。しかし、何かを祝うというよりも、プロジェクトのライフサイクルにおいて、一貫したチェックポイントを確立することに重点が置かれています。
アジャイルセレモニーとは、アジャイルプロセス中にチームが次のステップについて話し合う際に開くイベントのことです。つまり、アジャイルプロセス中に行う通常のミーティングをオシャレに表現した言葉です。アジャイルセレモニーでは、アジャイルチームやスクラムチーム内のコミュニケーションを向上させ、メンバー全員に共通認識を持たせることが主眼となります。司会役は、通常プロダクトオーナーやスクラムマスターが務めます。
アジャイルセレモニーには、スプリント計画ミーティング、デイリースタンドアップミーティング、スプリントレビューミーティング、スプリントレトロスペクティブ (振り返り) ミーティングという 4 つの主なセレモニーがあります。各セレモニーを開始する前に、すべてのチームメンバーが以下の大切な情報を把握しておく必要があります。
このセレモニーに参加する開発チームのメンバーは誰か?
このセレモニーはいつ始まるのか?
このセレモニーの所要時間はどれくらいか?
このセレモニーでは何が行われるのか?
どのような結果が期待されているのか?
スプリントとは、チームが具体的な成果物に取り組む、決まった長さの期間のことです。各スプリントの長さは通常 2 週間で、アジャイルプロジェクト管理フレームワークの骨幹をなす要素として、一般的にプロダクトチーム、エンジニアチーム、ソフトウェア開発チームにより使用されています。スプリントの終了時にそこで得た教訓を記録し、次のスプリントに取り入れることができるため、スプリントで作業を行うチームは、各プロセスを繰り返し、継続的に改善していくことができます。
それでは、4 つの主なアジャイルセレモニーの詳細と上述した質問の答えを出す方法について説明していきます。
各スプリントサイクルでは、主に 4 種類のアジャイルセレモニーが行われます。セレモニーを始める前に、それぞれのミーティングの目的とスプリントに与えるインパクトについて、チームが理解しておく必要があります。
スプリント計画ミーティングでは、開発チームが次のスプリント中に完了させる作業について計画を立てます。
参加者は誰か: 開発チーム、スクラムマスター (チームがスクラムを使っている場合)、またはプロダクトオーナー。
このセレモニーはいつ行われるのか: 各スプリントを始めるとき。
このセレモニーの所要時間はどれくらいか: 1 週間あたりおよそ 1 時間。各スプリントの通常の期間が 2 週間であれば、スプリント計画はおよそ 2 時間程度で行えるでしょう。
このセレモニーがよく使われているフレームワーク: スプリント計画ミーティングは、スクラム手法とかんばん手法の両方で使用されます。特別なセレモニーがなくても、ほとんどのアジャイル手法では何らかの形でスプリント計画が盛り込まれています。
このミーティングでは何が行われるのか: プロダクトオーナーもしくはスクラムマスターが開発チームと協力し合い、チームが現在のスプリントの目標として注力する項目を決定します。従来的に、そうしたアイテムは、プロダクトバックログから選ばれます。スクラムでは、このタイミングでタスクにストーリーポイントの見積りを割り当て、各バックログアイテムの所要時間を判断します。
このセレモニーにはどのような結果が期待されているのか: スプリント計画ミーティングを終了するときには、開発チームのすべてのメンバーがスプリントの最終目標とスプリントバックログに取り込まれる項目を把握している必要があります。
デイリースタンドアップミーティングは、開発チームが自分たちの取り組みに関する最新情報をチームメンバーに伝えるためのミーティングです。
参加者は誰か: 開発チーム、スクラムマスター (該当する場合)、プロダクトオーナー。
このセレモニーはいつ行われるのか: 1 日に 1 回。通常は、1 日の初め、メンバー全員が作業を始める前に行う。
このセレモニーの所要時間はどれくらいか: およそ 15 分。デイリースタンドアップは、さっと行うもので、会議室を予約したり、画面を共有したりする必要はありません。
このセレモニーがよく使われているフレームワーク: ほとんどのアジャイルフレームワークには何らかの形でデイリースタンドアップミーティングが取り入れられており、チームメンバーが簡単にその日のお互いの作業を確認し合えるようになっています。
このミーティングでは何が行われるのか: プロダクトオーナーとスクラムマスターを含む、開発チームのメンバー全員が、主に、昨日は何を完了させたか、今日は何に取り組むか、また作業に支障を与える問題が発生していないかという 3 つのポイントについて話し合います。
このセレモニーにはどのような結果が期待されているのか: ここでは、開発チームのメンバー全員が連絡を取り合うことを目的としています。開発チームの中に問題に直面しているメンバーがいれば、スクラムマスターやプロダクトオーナーがそのメンバーと協力し合って解決を目指します。これは、デイリースタンドアップミーティングが長引くのを避けるために、ミーティングの後に行われます。
スプリントレビューミーティングは、開発チームがプロジェクトの主要な関係者からフィードバックを得る機会となります。調整が必要であれば、スクラムマスターやプロダクトオーナーが次のスプリントに備えてスプリントバックログを調整します。
参加者は誰か: このミーティングには、開発チーム、スクラムマスター、そしてプロダクトオーナーが揃って参加する必要があります。また、経営陣やエンドユーザーといった主要な関係者もフィードバックを提供するために参加します。
このセレモニーはいつ行われるのか: このセレモニーは、すべてのタスクが完了し、スプリントが終了してからスプリントレトロスペクティブ (振り返り) ミーティングが始まるまでの間に行われます。
このセレモニーの所要時間はどれくらいか: スプリント計画と同様に、このミーティングも 1 週間のスプリントにつき 1 時間程度かかると思われます。2 週間のスプリントであれば、ミーティングは 2 時間程度かかるでしょう。
このセレモニーがよく使われているフレームワーク: このフレームワークは、スクラム手法とかんばん手法の両方で使用されます。かんばんや他のアジャイル手法を使う場合、レビューはスプリントの終わりではなく、プロジェクトの終わりに行われる場合があります。
このミーティングでは何が行われるのか: このミーティングの目的は、開発チームがそのスプリント期間中に完了させた作業についてフィードバックを得ることです。スクラムマスターやプロダクトオーナーがミーティングを主催し、チームが完了させた仕事を披露し、開発チームのメンバーではない社外関係者からの質問を受け付けます。
このセレモニーにはどのような結果が期待されているのか: このセレモニーは、社内関係者や、必要であれば社外関係者がフィードバックを提供したり、最終成果物について質問したりする機会となります。クライアントのために何らかの製品を開発するエージェンシーの場合は、社外関係者と通話を行うのがおすすめです。また、スクラムマスターは、この機会に関係者と連携し、プロダクトバックログに調整が必要かどうかを確認するとよいでしょう。
スプリントレトロスペクティブ (振り返り) ミーティングは、チームメンバーが終わったスプリントについて振り返り、スムーズに運んだ作業や次のスプリントで改善できる事柄について考える機会となります。
参加者は誰か: 開発チーム、スクラムマスター、またはプロダクトオーナーが参加します。スプリントを通じてタスクに積極的に取り組んだすべてのメンバーの参加が推奨されます。
このセレモニーはいつ行われるのか: スプリントレビューミーティングが終わった後、スプリントの最後に行います。
このセレモニーの所要時間はどれくらいか: このミーティングは、1 週間のスプリントにつき、45 分程度かかると思われます。2 週間のスプリントの場合、スプリントレトロスペクティブ (振り返り) ミーティングは 1 時間 30 分程度かかるでしょう。
このセレモニーがよく使われているフレームワーク: 振り返りミーティングは、一般的にスクラム手法とかんばん手法で使用されます。かんばん手法を使用するチームは、振り返りミーティングを各スプリントの終わりにではなく、各プロジェクトの終わりに開く場合があります。
このミーティングでは何が行われるのか: 開発チームは、このタイミングでそのスプリント期間における進捗を振り返る時間を取ります。チームは、順調に運んだ作業について振り返り、今後のスプリントに向けて改善の余地がある作業等について考えます。
このセレモニーにはどのような結果が期待されているのか: このセレモニーの目的は、反復作業のキーポイントを見いだすことです。チームメンバーは、その後のスプリントに向けて変更、改善できるものを見つけたら、それをチーム全体と共有するべきです。アジャイル手法の中には、継続的改善に依拠するものがありますが、振り返りミーティングはそのプロセスに欠かせない要素となっています。
アジャイルセレモニーという用語は、ミーティングをオシャレに言い換えたものに過ぎません。以下に紹介するヒントを実践して、ミーティングをスムーズに進めましょう。
スプリントバックログのすべての項目にユーザーストーリーを記述し、そのバックログに取り組む開発者が適切にタスクを作成するのに必要な背景情報をすべて揃えておく必要があります。ユーザーストーリーとは、エンドユーザーの視点から書かれた、製品の機能に関する簡単な説明のことです。開発チームはユーザーストーリーによって、なぜその方法で製品を開発する必要があるのか理解できます。
スプリント計画ミーティングを始める前に、スクラムマスターもしくはプロダクトオーナーは、プロダクトバックログをすべて確認し、バックログの全アイテムに関連する十分な背景情報が各タスクに添付されていることを確認しておく必要があります。そうすると、チームメンバーはタスクに関する情報を追跡する手間がなくなり、依存関係さえ確認すればよいため、セレモニーを一層スムーズに進めることができます。
デイリースタンドアップミーティングのようなセレモニーは、毎日行うものなので、忘れることはあまりないでしょう。それと同じ観念を用いて、残りのアジャイルセレモニーも各スプリントの同じタイミングで行えば、チームはミーティングの頻度に慣れることができます。たとえば、スプリントレトロスペクティブ (振り返り) ミーティングを 2 週間ごとに木曜日の同じ時間に行います。チームがスプリントの数をこなしていけば、最終的にはセレモニーも習慣付いていくでしょう。
ミーティングの進み具合が良くないことに気付くことがあれば、参加者を見直してみましょう。現在の参加者は、本当に参加すべきメンバーでしょうか?ミーティングに参加する必要のないメンバーがいると、ミーティングの生産性が損なわれる場合があります。そのセレモニーに必要なチームメンバーだけを参加させるようにしましょう。
セレモニーとアジャイルチームは、Asana のようなワークマネジメントソフトウェアを使って整理しましょう。ワークマネジメントツールを使用すると、チームメンバーは、デイリースクラムミーティングのメモやバックログアイテム、次のスプリントに関する情報などを一か所で確認することができます。
Asana でアジャイルチームを管理